アイドルの戦い

第19話 聖戦


エレメンタル・ツリーのメンバーは全部で5人居る。

その5人の名前は1人目が佐久間陽菜(メンバー、センター)

2人目が柳素子(メンバー、副センター)

3人目が酒場時子(さかばときこ)(メンバー)

4人目が佐藤綺羅(さとうきら)(メンバー)

5人目が佐久間夕日(さくまゆうひ)(メンバー)

となっている。


これで分かるかもしれないが佐久間は姉妹だ。

だからこそ協力し合っているのだろう。

私は...その中で...一郎くんに会わない事を決断した。

何故なら見ず知らずの人が芸能界の波乱に巻き込まれる必要は無いから。


とにかく今は報道されてしまったこの事をどうにかしなければ。

そう思って私と友香。

それからきいちゃん、紀子さんと社長は輝プロダクションに集まっていた。

困った事になった。

テレビ番組などが出演を辞退してくれないかと申し出ている。

少なからず影響が出始めている。


「...という事で如何なさいます?社長」

「とにかく今は彼女達の身の安全の確保だ。...それを最優先事項とする。...とにかく先ずはこのニュースが落ち着くまでは控えめでいこう」

「そうですね」


そして私達は顔を見合わせる。

それから頷き合ってからまた相談し合った。

その結果だが私達は暫く危険が去るまで仕事の量を減らす事。

メディアへの露出を減らす事にした。

因みに社長は名誉棄損の疑いで警察への刑事告訴も検討し始めた。



私は彼に当面の間、会えなくなってしまった。

だけどこれで良かったんだ。

そう思いながら私はゆっくり家に帰る。

それから「ただいま」と言う。

久しぶりの家だ。


「お母さん」


そう呟きながら私は仏壇に飾られている笑顔の母親の写真に手を合わせる。

それから私はお供え物を持ってきてからお供えした。

因みにだが私が生活している環境。

今はマンションに暮らしている。

父親は多忙な為、家をよく留守にする。


「...私ね。大好きな人が出来たんだよ。...凄いよね」


私は母親にそう説明する。

母親は熱心に聞いてくれている気がする。

私はその事が嬉しくてついつい話し掛けてしまう。

そして虚しくなって止めた。

それから私は涙を浮かべながら「お母さん。何で死んじゃったんだろうね」と呟く。


「...逢いたいなぁ。お母さんならこういう時、どうするの?」


そう聞いてから私は涙を流す。

逢いたい。

本当に会いたい。

お母さんの胸で泣きたかった。


だけど。


「私があくまでユニットのリーダーなんだからね。しっかりしないと!」


そう言いながら私は拳を握り締めてから踏ん張る。

それから鼻息を荒くした。

そしてそのまままた手を合わせてその場を後にする。

そうしてから料理を作ってお父さんが食べるか分からないけど作り置きをしてから。

私は仮眠をとる事にした。



私は...上条さんに会えない。

それはそこそこに寂しい気持ちだった。

そう思いながらスーパーを歩いていると「あれ。日向さん」と声がした。

まさかの言葉に私は凍り付く。


「こんにちは。こんな場所で会うなんて奇遇だな」

「...上条さん。私に会って平気なの?」

「え?どういう意味だ」

「あ、いや。こっちの話だよ。ゴメンなさい」


大慌てで私は上条さんから離れようとする。

すると「なあ」と声がした。

そこには上条さんが「...何かあったのか」と聞きたそうに立っていた。

私の心臓が高鳴る。

ドクンと脈打つ。


「...ニュースで観た。もしかしてその問題も?」

「...それって...」

「そうだ。...恋愛のアイドルのニュース。何かあったのか」

「...実は私達、暫く貴方に会わないという前提の下で動く事にしたんです」

「それはつまり...」

「はい。幸奈もそうですが、きい、もです」

「...そうだったんだな。だから最近、冷たいんだ。みんな」


「私はそんな事がしたくてしている訳じゃ無いです。それだけはご理解下さい」と上条さんに説明する。

すると上条さんは頷いてから何かを取り出す。

「これ。家で焼いたクッキー。アイツ達に持って行ってくれるか。本来の目的はそれで持っていた様なもんだし」

「...え?い、良いんですか?」

「良いから。持って行って。大変な中だろうけど頑張ってな」

「...」


ああ。

そうか。

私は上条さんのこういう優しい所に惹かれている。

そう思いながら私は上条さんを見る。


すると上条さんは「...?...どうした?」と慌てて言ってくる。

私は涙を拭く。

それから「何でもないです」と笑顔になった。


「本当に大丈夫なのか。友香」

「...貴方の顔を見て平気になりました。...本当に不思議な人ですね。貴方は」

「ああ。...そうなんだな」

「...上条さん。私、貴方に出会えて良かった。本当に」

「そう思ってもらえるだけ光栄だよ」


上条さんは笑顔で私を見る。

そしてハッとした。

「そういや、俺に会わない、だったな。だったら俺が近付くのはおかしいな」と手をワタワタさせてから「じゃあまた」と言いながら去って行った。

私はその姿についつい手を振ってしまう。


会ってしまった。


馬鹿じゃ無いのか、と思ってしまうが。

彼は本当に魅力的な男だ。

心臓がバクバクしている感じだ。

困ったな...暫く収まりそうにないや。


「...だけど」


良かった。

少しだけでも上条さんと話せて良かった。

本当に、だ。

元気そうだったし...よし。

私も頑張ろう、と。

そう思えた気がした。


一刻も早く帰ってからこのクッキーをみんなに。

特に幸奈に届けたい。


そんな気持ちが芽生えていた。

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