第14話 家族

それから1週間が経った。

後藤とカメラマンは私達以外にも色々と芸能人に対する問題を起こしておりスクープ記者をそのまま解雇された。

私は安堵の気持ちで仕事にのぞんでいた。

そして私は...また問題というか。


大切なライバルに直面していた。

それは彼女。

つまり上条結さんの事だ。

私達の事務所に配属が決まった。

勿論、練習生として、だが。


その結さんのキラキラした感じに私と友香ときいちゃんも息を飲んでいた。

結さんはニコォッとしている。

こめかみに血管を浮かばせて、だ。


「兄!がお世話になっております。宜しくお願い致します」

「う、うん。お世話になっています」

「...だ、だね」


この表情は分かる。

彼女は恋敵が出来たと認識している。

それで私達を見ている。

私は苦笑いで彼女を見ていた。

それから結さんはジト目で私達を見る。


「渡しません」

「な、何をかな?」

「何を、と言われたら勿論。私のおにいちゃんを、です。私は絶対に渡しません」

「...そうだね。いや。私も負けないよ。結さん。私達。友香もだけど」

「え!?わ、私は...」


「友香。素直になって」と私は声を掛ける。

すると友香は「...」となって考え込んだ。

それから顔を上げる。

そして一歩を踏み出した。


「私も負けません」

「その意気ですね。日向さん。私も負けません」

「いい戦いが出来そうだね」

「ですね。確かに」


するときいちゃんが盛大に溜息を吐いた。

それから「全く。彼はモテモテだね」と額に手を添える。

そして苦笑した。

私はその姿を見ながら「だね」と2人見合ってから苦笑いを浮かべた。


「まあ私はみんなを応援する側につくよ」

「そう?」

「だって誰か応援したらそれって何だか嫌だしね。悪い事をしているみたいな感じだし」

「...うん」


私達は顔を見合わせながら笑い合う。

すると奥から紀子さんが「はいはい。そろそろ良いかしら?」と顔を見せた。

それから「この先の話よ。取り敢えず聞いてちょうだい」と話を始めた。

それから私達は真剣な顔で耳を傾ける。



「終わったー」


そう疲れた様に結さんは話す。

私はその言葉に私は「だねー」と汗を拭いた。

それから結さんを見る。

結さんは私を見る。

そして「幸奈さんはおにいちゃんの何処を好きになったんですか?」と聞いてくる。

私は「へ!?」と慌てた。


「わ、私は...彼の優しさかなぁ...」


私は言いながら赤面する。

何だか恥ずかしくなってきた。

そう言うと「私は昔から彼が好きなんです」と紅潮した感じを見せた結さん。

え?昔から...?


「私、昔からおにいちゃんを知っています」

「...羨ましいなぁ。それ」

「え?」

「幼い頃からの一郎くんをずっと知っているんだよね?私、羨ましいな。正直言って」

「私は...そんな風には考えた事無かったです」


驚く結さん。

私はその言葉に微笑みを浮かべる。

「だって幼い頃から知っている。好きな相手を知っている。そんなの幸せ以外の何物でもないよ」と話した。

それから結さんを見る。

天井を見上げながら、だ。


「私、貴方に出会ってから色々と知った。本当に色々とね。それは本当に幸せな事だって思うけどそれ以上に羨ましいな」

「...そんな考えは浮かばなかったです。流石は幸奈さんですね」

「誰でも分かるよ。...だけどそれがどうしたって感じだね」


私は言いながら胸を張る。

「私、結さんには負けない。絶対に勝ってみせるよ。この戦い」と話した。

それから結さんを見る。

結さんは「私も幸奈さんに会えて良かったです。何も知れなかった可能性がありましたから」と笑顔になる。

咄嗟に抱きしめてしまった。


「そうだね。結」

「え?今、結って...」

「...私は貴方を妹の様に思えた。こうして出逢えたのは奇跡だと思う。私、貴方を今日から結って呼んで良いかな」

「...声が震えてますよ。幸奈さん。あは、あはは」


私は彼女を見る。

そして「色々と経験しているから。ゴメン。家族というものに憧れているの。私。だから...その。ゴメンなさい。貴方を私...」と戸惑う。

すると結は「私もお姉ちゃんって呼んで良いですか」と話してきた。


「お姉ちゃん...?」

「はい。私も...幸奈さんをお姉ちゃんって呼びたいです」

「...私はお姉ちゃんって呼ばれる資格は無いよ。私は親しみを込めたけど」

「いや。それでも私は呼びたい。私は大切な人だって思う。ね?お姉ちゃん」


その言葉に私は涙が浮かんだ。

それから涙を拭いてから「自由に呼んで」とついツンデレの様な対応をとる。

すると彼女はニコッとしてから「了解。お姉ちゃん」と言った。


「...私ね」

「うん」

「家族に憧れるって言葉が身に染みたよ」

「...」

「私もそうだから」


そう言いながら結は苦笑する。

私は悲しげな顔になりながら「...だね」と返事をした。

そして彼女を強くまた抱きしめる。

私は泣かないと。

そう決めた筈だったのだが涙がボロボロ出た。

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