第15話 告白
☆
結がアイドルになった。
俺は陰ながら応援して支えていくつもりで彼女を見守る。
頑張ってほしいものだ。
そう思いながら俺はスマホで結のレッスン動画を観る。
夢が無いとか言っていたアイツがここまで来るなんて正直、思わなかった。
「...はは。俺はもう用済みか」
そう呟きながら苦笑いを浮かべる。
するとスマホが鳴った。
そして電話が掛かってくる。
俺はビックリしながらスマホを観る。
そこには見知らぬ番号が刻まれている...ただ。
所謂、非通知では無い。
「もしもし」
『この携帯番号は上条一郎さんのものですか』
「...ああ。...誰だ」
『私、佐久間陽菜(さくまひな)と言います』
「...佐久間陽菜?」
『はい。私はエレメンタル・ツリーのメンバーです』
エレメンタル・ツリー...って何?!
俺は唖然としながら「まさか!?」と愕然とする。
すると佐久間陽菜は『上条一郎さんは有名ですよ。私達の間で』と言い始めた。
驚愕しながら「は?」となる。
そして俺は「電話番号は何処で入手したんだ」と聞いてみる。
佐久間陽菜は何のためらいもなく答えた。
『はい。大変申し訳有りません。記者の後藤から聞きました。電話番号。今解雇されたみたいですけど』
「もはやプライバシーもあったもんじゃない。...で?用件は。何の用事だ」
『本日の用事。...私と付き合いませんか。...私、こう見えても可愛いですよ』
「知ってる。...それにライトニング・スターのライバルだって事も。...お前は確かセンターだよな」
『そうです。覚えてくれて有難う御座います』
俺は佐久間陽菜の嬉しそうな言葉に「...」となる。
そして「俺は誰とも付き合う気は無いよ」と答えた。
佐久間陽菜は『何故ですか?』と聞いてくる。
「理由は簡単だよ。俺は魅力が無いし君達と付き合うぐらいのレベルでは...」とそこまで言った途端に佐久間陽菜が『いえ。魅力があります』と言葉を発した。
『私、貴方は凄い人だと思います。だからこそ惚れた。だからこそこうして電話しています。アイドルからの電話とか貴重ですよ』
「それは分かる。だけど...俺はそう言われても付き合う気は無いよ」
『そうですか?もしかして霧島幸奈に、彼女に惚れているんですか?』
「ちが、違うよ!?何を言っているんだ!」
『じゃあ構いませんよね。私とお付き合い』
そう言いながらニコニコしている様な佐久間陽菜。
嬉しそうに話してくる。
俺はその言葉に「...」となって苦笑いを浮かべる。
そして佐久間陽菜は『デートしましょう』と言ってきた。
「人の話聞いているかお前は」
『聞いてます。勿論です。でも私、日本中のアイドルから貴方が惚れられるぐらいなら...』
「...なら?」
『私にしときませんか』
「...」
俺は考え込んだ。
それから「やっぱり良い。俺はもうライトニング・スターだけで腹が一杯だ」と答えながらスマホを観る。
そして切ろうとした時だった。
『待って下さい。だろうと思いました。...私、今、貴方の家の前に居ます』
「は?」
『やっぱり来て良かった。私、貴方の家の前に居ます』
「...!?」
愕然としてから俺は表を見る。
そこに聖母の様な顔付きの女子が居た。
たれ目だがあくまで柔和な母性を放っている女子。
変装している。
手を振っている。
「...お前という奴は」
『私は一度気にしたものは離さないタイプなので』
「...」
俺はドアをゆっくり開ける。
すると佐久間陽菜はサングラスを外した。
それから髪の毛を解く。
そして俺を見てから礼儀正しく頭を下げる。
「初めまして」
「...ああ」
「改めて自己紹介します。佐久間陽菜です」
「...」
俺は佐久間陽菜の全身を見る。
そして「...本当に俺目的なのか」と聞いてみた。
すると佐久間陽菜は「恐らく日本中のアイドルの女子が一部、狙っています」と笑顔になる。
俺はその言葉に「!」となった。
「...私は貴方を好いています」
「...」
そんな言葉に俺は「...」となった。
そして見ているとインターフォンが鳴った。
「来客が多い日だな」と思いドアを開けようとすると佐久間陽菜に止められた。
「まあまあ」と言いながら、だ。
それから俺の首の後ろに手を回される。
「...キスしませんか」
「な、何だ。お前...」
そう言うと佐久間陽菜は「...私は貴方が好き。それで良いですよね」と笑顔になる。
俺は真っ赤になる。
するとドアノブがいきなりガチャッガチャッと反応し。
そのままドアが開いた。
「やっぱり」
「...幸奈!?」
「...佐久間。貴方ね」
そう呼び捨てにしながら佐久間陽菜を見る幸奈。
それから静かに怒る。
佐久間陽菜は「バレていたんだね」と俺の背後に隠れる。
幸奈は直ぐに佐久間陽菜と俺を引き剥がした。
「...貴方...どこまで汚い手段を使うつもり」
「汚い手段って?」
「私の幸せを根こそぎ奪うつもりでしょう」
「...私は本気で彼が好き」
「貴方の噂はバレバレ。...貴方は汚い手段を使うって噂」
「...」
「自分が人気になりたいからその為に全てを根こそぎ奪うつもりだよね」と言うと佐久間陽菜は真顔になった。
それからまた笑みを浮かべる。
だが今度は冷徹な笑みであり...俺はゾッとした。
「貴方が邪魔だしね」
「...」
「...貴方はアイドルじゃない」
「...」
「貴方はアイドルというものを分かってないし邪魔。私はデビューまで5年もかかったのに。貴方は1年でアイドル?馬鹿なの?」
佐久間陽菜はそう言いながら苦笑する。
俺はそんな顔を見ながら幸奈を見る。
すると幸奈は「...私は貴方をライバルと思っているけど。こんな汚いのはアイドルのやり方じゃない」と言う。
すると佐久間陽菜は「...じゃあ本物のアイドルっていうのは?」と聞いてくる。
「というかそれ以前に彼を好きでも無い癖に助けるなんて」
「わ、私は...」
「何?貴方のエゴ?」
「...違う。...私は彼を好いている」
そうハッキリ答えた...は!!!!?
俺は真っ赤になる。
そして佐久間陽菜と幸奈を見る。
幸奈はやけくそ気味に「私は彼を好いている。悪いの?」と言う。
佐久間陽菜は「...」となってから「あっそ」と冷たくあしらう。
それから玄関のドアに手をかけてから「今日は帰るね♪」と言ってから佐久間陽菜は俺に手を振って去って行った。
ドアが閉まる。
残された俺と幸奈は...というか幸奈を俺は見る。
「...お前俺が好きなの?」
「...ちが...」
「...マジか...」
意外な展開だった。
俺はまさかの展開に心臓がバクバクする。
それから俺は玄関のドアを見据えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます