第2話 事態急転
☆
私、霧島幸奈はとある男の子を必死に探していた。
地元アイドル兼人気アイドルの私は、だ。
ワイドショーもそうだけどテレビ番組を終えて発声練習、ダンスのレッスン。
それから私はそれらの合間の限られた時間だが。
私は必死にその人物を探していた。
私が痴漢されていてそれを助けた男の子を。
一瞬だけ見た容姿的に私は彼が同じぐらいの年齢と思っている。
私は自慢じゃ無いが目で見たりする記憶だけは凄いのだ。
私はネットを見たりする。
エゴサーチに近いがそんなものではない。
ニュースを観たりして、彼に接触するきっかけ、を探している。
私が今回、有名ワイドショーに出ようと思ったのはその人を探す為であり他意は無いのである。
そして私は控室でネットを観ていると横から声がした。
その人物はライトニング・スターの3人メンバーの1人。
木島きい(このしまきい)だった。
同級生のツインテールの女の子。
笑みを浮かべたまま私を見てから私の横にゆっくり腰掛ける。
「まだ探しているの?その彼氏」
「...もー。彼氏じゃないよ。...でも、きい、もお礼を言わない?普通。そんな怖い目に遭って...唯一その人だけが助けてくれたなら」
「確かにね」
背中の後ろに手を添えて天井を見上げる、きい。
きい、とは幼馴染だ。
大の仲良し、と言えるだろう。
正直私はこの世界に好きで入ったわけじゃない。
陰ながら、きい、を支えられればと思ったのだがマネージャーの目に留まってしまいそのまま私は社長とマネージャーに気に入られ私はこの世界に入った。
で。
地元アイドルだったのだが人気が思った以上に出てしまい。
そのまま私はセンターに抜擢されて今に至っている。
日本中で知られたアイドルになってしまった。
私はそんな気は無かったのだがそうなってしまった。
「...誇らしく思ったら良いと思うけど幸奈はそういうタイプじゃないもんねぇ。律儀だもん」
「私はそんな律儀かな?」
「そりゃそうでしょ。だってロケに向かう為に乗った電車で痴漢されて...お礼を言いそびれただけでその男の子を探しているなんてあり得ないよ普通は。もう良いじゃん」
「良くないよ。しっかりお礼はしないと」
そう言いながら私はニュース記事にまた視線を戻す。
コメントを見ていると(そういや似た様な男を見たな)とか言って話題になっているスレッドがあった。
私は無我夢中で見てみる。
するとそこに(それな。確かに)とか。
(県立海原高校生徒じゃ無かったか?)とか書いてあった。
「県立...海原高校」
「あれ?その高校って確か海原町だよね?ここから少し先の...」
「マネージャーに言って。私、早退する」
「は!?」
「え!?嘘でしょ!?」と目をパチクリした、きい。
嘘じゃない。
私はその姿を一瞥してバタバタと準備をする。
変装準備をしてそのまま控室を後にする。
きい、は「待って!幸奈!この後...まだラジオとかの出演が!」と言うがそんな事をしていたら忘れてしまう可能性がある。
「きい。腹痛。腸チフスになったって言っておいて」
「無理でしょ!待ってぇ!」
そして私はバタバタとその場を後にする。
それから私は電車に乗って海原駅に直ぐに向かう。
サングラスに変装マスクで、だ。
私はそのまま駅を降りる。
「...」
私は周りを見渡してみる。
海が見えるとても穏やかな町だった。
生まれた場所でも無いにも関わらず故郷に感じる。
だけどそんなのはどうでも良い。
今は探したい人が居る。
「...えっと...」
県立海原高校。
私はそこを目指して看板を見て歩き出す。
そして海原高校の通学路に来た。
通学路を見ながら私は看板、ミラー、消火栓、住宅街と目に入れる。
それから私は探したがヒントが無い。
流石にこれだけじゃ情報がおおざっぱだ。
困ったものだな。
そう思いながら私はコンビニに行き着く。
駅から300メートルぐらい離れた場所の、だ。
そこで...くるくる髪の毛をした少年と。
八重歯が素敵な感じの可愛い女の子が会話をしている。
ガラス越しでも分かる。
結構素敵な人達だ。
丁度良いかもしれない。
あの様な性格なら地元に関して聞ける可能性がある。
私はそう思いそのままコンビニに入ってから。
「あの」
と声を発する。
するとその少年と少女が話を止めて「?」を浮かべて私を見る。
私は見つめられても慣れているのでそのまま「ここら辺...の事に関して教えてほしいです。私、引っ越して来たばかりの都会民で慣れてなくて」と聞いてみる。
すると少女が「あ。そうなんだね!じゃあお父さん呼んで来るから。詳しく教えてもらえたら」と笑顔になる。
そして少年も「俺も」と笑みを浮かべた。
間違いなく良い人達だ。
よし...って、あれ?今の声聞いた事がある様な?
「...?」
私は少年を構わずまじまじと見つめる。
少年は見た感じだがあまり人懐っこいタイプではない。
所謂...あまり友人が居ない感じだ。
少年は私の姿か何かでドギマギしていた。
「あ、あの?」
そう少年が私に尋ねる。
私はハッとしてから「あ。ごめんなさい」と離れた。
それから私は少年を訝しげに見る。
すると少女と父親らしき人が「お待たせー」と言ってやって来た。
そして私は地図を見ながらあれこれ教えてもらう。
手取り足取り。
私は「ふんふん」と言いながら全てを聞いてから頭を下げる。
すると少年が時計を見てから「あ。マズい。そろそろ塾に行かないと」と腕時計から目を離して言葉を発した。
それから私に頭を下げて少女達には「じゃあ。成美。またね」と言ってから去って行ってしまう。
表に出て自転車に乗って、だ。
「いやー。美人が来たもんだから逃げたね」
そう成美?の父親と思しき男の人が話す。
私はその言葉にクスッとなりながら成美という人を見る。
するとその成美という人が私を見てから「彼ね。この前貴方みたいな人を痴漢から救ったんだ」と重要な証言をした。
私はまさかの言葉にショックを受けて「!!!!!」となりながら「それは何時ですか!?」と慌てて聞いた。
「え?そうだね。先だってかな。この場所から10駅先ぐらいの」
「え?...あ、す、すいません。か、彼のお名前は。教えていただけませんか!」
「え、はい?あ、彼?彼は上条一郎っていう人だよ」
半分だけ聞いてから私は大慌てで彼を追う様にしてコンビニの外に飛び出る。
だが既に遅かった。
時すでに遅し。
自転車に乗って去ってから2分も経てば遅いか。
そう思いながら私は落胆しコンビニに入ってから「あの」とまた声を発する。
嘘を吐かないと教えてもらえない可能性がある。
「わ、私。その痴漢に遭った人の知り合いなんです。彼を探しています」
「...え?!」
「そ、その。良ければ彼の家の住所を教えて下さい」
父親と顔を見合わせる成美さん。
「ずっと探しているの?」と聞いてきた。
私は強く頷く。
その姿を見ながらそのまま住所を教えてもらった。
雑紙の裏にわざわざ住所を書いてくれた。
これはまさかの展開だ。
こんなに早く行きつくとは思わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます