第3話 再会


塾に行ってから俺は塾で勉強した。

それから15時になって俺は帰宅する。

そういえば今日は時間帯が早い気がする。

それはそうか。

今日は教師達が会議の日だったから。


「帰ったのが12時ぐらいだったな。...そういや」


思い出しながら俺は苦笑しつつ帰って来る。

それにしても...チェック柄の帽子を被っている男性。

まさか俺じゃないよな?

絶対に俺じゃないと思うけどあの日。

外出用の帽子を被っていた。

だ、だけど。


「...ま、まあ。まさかな」


俺は肩をすくめながら自転車を漕ぐ。

それから俺は自分を嘲る様に笑いながら自宅に帰って来る。

で、見ると。


俺の家の前で誰かがうろうろしていた。

ふ、不審者?!...と思ったが。

先程の女性だった。


「あの?」

「...あ...」


その女性は俺を見るなり顔を上げて笑顔になる。

俺は「???」と思いながら彼女を見た。

っていうかまさかと思うが。

この場所で...1時間ぐらい待って居たのか?

塾に行っていたのがそれぐらいだから。


「あ、あの。お初にお目にかかります」

「は、はい?」

「...私...その。えっと。えっと...」

「...?」

「あの時、私はお礼を言い損ねていました」

「あの時...お礼を言い損ねた...って...ま、まさか...」


それからサングラスを外した彼女。

髪の毛のゴムを外した。

マスクも取る。

目が...薄化粧すらしてない様な目なのに大きい。

顔立ちが整っている可愛い女の子。


「...き、霧島...幸奈!!!!?」

「はい。...私、ずっとお礼が言いたくて貴方を探していました」

「そ、そんな...俺じゃないですよ」

「いや。それは無いです。...私、貴方の目を見て思います。貴方は私を助けてくれた。間違いない。私、そういう記憶だけは良いんです」

「...そ、そんな馬鹿な...」


俺は真っ赤になる。

そうして霧島幸奈を見る。

これは夢か!?

そんな馬鹿な事があるか!?

思いながら俺はロボットみたいに「いえのなかにはいります?」と尋ねてしまった。

何を言っているんだ俺は!?


「え?良いんですか?」

「は、はい...」


赤くなったまま俺の家にトップアイドル。

それどころか日本中のアイドルの頂点を招き入れた。

オフとはいえあ、ありえないのだが。

それから律儀に靴を揃えたりして霧島幸奈さんは笑みを浮かべる。


「素敵なお家ですね」

「飼っている、か、カメが居るだけで古民家です」

「そんな事は無いです。...私、古民家大好きなので...この香りが良いんです」

「ほ、ほう?」


何を言っているんだ。

俺はずっとツッコミを入れながら家に招き入れた。

くびれも細い。

そしてマジに可愛い子を何でこんな場所に!?


「上条くん」

「...はぁい!?」


俺は変な返事をしながら霧島幸奈さんに向く。

霧島幸奈さんは複雑な顔をする。

そして「私は...あの時。本当に怖かったんです」と告白してきた。

俺は「!」となって彼女を見る。


「貴方だけでした。私に声を掛けてくれたヒーローは」

「ひ、ヒーローってもんでもないです」

「...いえ。私にとってはヒーローです。私は貴方の事、尊敬します」


胸の前で指を揃える。

俺はその姿にしどろもどろしながら「と、とにかく。おちゃ、お茶淹れます!」と大慌てになる。


そして台所に駆け出して行った。

彼女を見ていると心臓がバクバクなり過ぎ...というか。

俺自身があまり耐性が無いから!


「手伝いますよ」

「いや!?お、俺がします!」


俺は彼女に椅子に腰掛ける様に促す。

その言葉に霧島幸奈さんは目をパチクリした。

それから「お優しい人ですね」とニコッと笑みを浮かべた。

ありえないぐらい可愛い。

可愛すぎる。


「そ、それでお茶菓子食べますか!?」

「あ...お構いなくですよ」

「分かりました!」


お茶菓子が丁度あった。

クッキーだけど。

だけどこれで彼女が満足するなら。

そう思いながら俺はクッキーを出した。


それから数分経って俺はお茶を持って行く。

そして俺はあまり良い感じではないのだが霧島幸奈さんの前に腰掛けた。

距離を置かないとマズい。

彼女はトップアイドルだから、だ。


「お茶。美味しいです」

「そ、それは何よりです」

「上条くん。私に対して気楽で良いですよ?いつも通りというか」

「し、しかし。あ、貴方は日本のトップアイドルですから」

「...ですか」


そう言って言葉が途切れ少しだけ悲しそうな切なそうな顔をする霧島幸奈さん。

俺はその姿に慌てる。

そしてゴクリと喉を鳴らしてから頬を掻いてから絞り出す。


「...じゃあ幸奈、さん」

「幸奈で良いですよ」

「それは...」

「良いですよ。貴方だけ特別です」


ウインクする霧島幸奈さん。

俺は頬をボリボリ掻く。

それから「じゃあ幸奈」と呼んでみる。

すると幸奈は「はい」とニコッとしてえくぼを見せ笑顔になる。

俺は心臓が口から飛び出そうになった。


「私も敬語は止めます。...ね?上条一郎...いや。一郎くん」

「...」

「え?どうかしたの?」

「...いや。...ゴメン。芸能人の人を...今まで蔑視していた」

「え?」


そうつい言葉を発した。

それから幸奈を見る。

幸奈は特別って言っているけど。

こんなに良い人も居るんだな。


「...俺、芸能人って偉そうにしている様なあまり綺麗じゃないイメージが有った」

「...!」

「良いイメージが持てなかった。...でも君を見てから変わった。貴方の様な心が綺麗で素敵な人が居るんだって」


俺は幸奈にそう言いながら紅茶を飲む。

そして笑みを浮かべた。

何というか...馬鹿だな俺も。

そう思って顔を上げると幸奈は呆然となって真っ赤になっていた。


「素敵?え?私が?」

「...そうだよ?え?」

「...そんな気持ちの籠った返事は初めて...」

「え」

「...」


幸奈は汗をかきながら「ちょ、ちょっとお手洗いを借りても良いかな」と言い出す。

それから俺の案内に直ぐに頷いてから慌てる様に去って行った。

○レレのおじさんとかじゃないが凄い速度だった。

俺は目をパチクリしながら考え、頬に手を添えながら思う。

しかし緊張する...どうしたものか、と。

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