本当にたまたま痴漢から助けた女子が有名アイドルでした。俺を探している様ですが勘弁してほしいです

アキノリ@pokkey11.1

第一章 女神

痴漢に遭ったアイドル

第1話 探しているんです

家に帰って来てお気に入りのワイドショー番組を観るのが俺、上条一郎(かみじょういちろう)の趣味である。

それは高校2年生になっても変わらなかった。

中学3年生の時から始まったワイドショーの番組。


何でそんなのが趣味かというとあまり俺は人から好きって言われてない。

簡単に言えばコミュニケーションが苦手なボッチである。

だからこそ俺はワイドショー番組を観て気分を切り替えているのだ。

これなら人とも会わなくても...話を聞くなどの練習になるしな。

そして俺は今日もお気に入りのそのワイドショー番組を観ていた。


アナウンサーと有名芸人が司会をしている番組である。

名前はキングという。

共同で司会進行をしておりコメンテーターも交えて世間のニュースにツッコミを入れるという感じの番組だ。

上条一郎のお気に入りである。


そんなキングの今日の話題はセンターアイドルの霧島幸奈(きりしまゆきな)が電車の中で痴漢にあったという話題だった。

霧島幸奈は日本一有名なアイドルのセンターであるアイドル。

ライトニング・スターのセンターだ。


知らない人は居ないだろう。

昔で言うならアイドル全員がクソ人気だったモー○の様な感じだ。

というかそれは良い。

うん?痴漢?


俺は疑問に思いながらもそのままワイドショーを観てみる。

すると霧島幸奈の手前の並びに居る眼鏡を掛けた若いコメンテーターが「気持ち悪いですねぇ」と言いながら画面に映っているタイトルを訝しげに見る。

その様子に芸人の司会者が「そうやなぁ。何だかそういうのが増えているから」と首を横に振る。

それから幸奈さんに話題が振られる。


「そいで。幸奈さん。どうなったんや?」

「私、怖かったです。それも滅茶苦茶に怖かった。ですが...」


幸奈さんをこうしてまじまじと観る事は今まで無かったな。

ワイドショーが無かったら観る事も控えていただろう。

噂の超絶美少女とはされていたけど「ふーん」程度にしか思って無かった。

だって俺の次元じゃない。

俺とは一生関わり合いの無い人間だ。


黒の長髪に片方だけ結んだ髪の毛にはうさぎが乗っている。

肩を少しだけ出した様な感じの服装。

座っていても分かる。

スタイル抜群だ。

そして顔立ちはめちゃ可愛い。

完全なアイドルの為に生まれた様なもの。


俺にとっては天地の差がある。

それに興味は無かった。

ボッチでオタクな俺とは関わっては良くない。

そう思いながら俺は幸奈さんの話を聞く。


「...誰も助けてくれない中で...実は私を助けてくれた人が居ました」

「それは運命やなぁ」

「はい。とても運命です。でも彼は名前を名乗っていません」


静かに幸奈さんの話を聞いて「ん?」と俺は思った。

実は1週間前に用事があったので10駅先ぐらいの駅に行ってからたまたま彼女の様な黒の長髪の子を痴漢から救った。

駅員に捕えたハゲ親父を引き渡して通報したのだ。

だけど俺はそのまま恥ずかしいから去った。

その事を考えながら居ると幸奈さんが指をクロスしてから胸の前に添えて少しだけ赤くなる。


それから顔を上げてから必死に視聴者に訴える様な顔をした。

誰が見ても女神の様な感じであり。

その顔を見ていた全員が彼女に注目した。

これだけで宣伝効果がマジにありそうな感じだ。

そして彼女は涙目で訴える。


「その。私はお礼を言いたい。その彼に。...彼は...恥ずかしがり屋の様な感じだった。...チェックの帽子を被っていた。そして服装はTシャツに上着、ベージュの短パンをしていた。...私は彼にお礼が言いたいんです」


そう言ってから赤くなっていた芸人は「ま、まあ、や、優しい子やなぁ!」と気を取り戻した様に声を発した。

赤くなっていたコメンテーターも「そ、そうですね」と慌ててコメントする。

サポートする筈のアナウンサーですらその女神の様な存在に見惚れていた様だった。


その中で幸奈さんは「その為に今日はテレビに出ました。それ以外には何も要らないつもりです」と訴える。

視聴者も有名人もみんな笑顔で「見つかると良いですね」とか。

「そうなんですねぇ」とか言っている。

そして幸奈さんは聞いてから笑顔になる。


その中で。


俺だけが現実に戻って来てない。

何というか幸奈さんの声を頭で復唱していた。

それからボッと赤面する。


チェック柄の...帽子。

そして肌色のズボン...って。

俺のお気に入りだけど...そ、そんな馬鹿な事ってあるか?

え?え?


「...い、いや。まさかな」


俺は赤くなったまま首を振りながらその日のワイドショーは観るのをエンディングを観ずに打ち切った。

テレビを消した。

それから俺は心臓をバクバクさせる。


まあでも。

そう思ってももう関わりは無い筈だ。

考えながら俺は何とか胸の鼓動を落ち着かせてから起き上がった。

取り敢えず落ち着かせる為にコンビニでも行ってみるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る