第11話 3つの絆

私は彼女、友香さんを追いかけた。

そうして行き着いた先が事務所から近所の公園だった。

私はブランコを漕ぎながら友香さんを見る。

友香さんは私をチラチラ見てくる。

ブランコをゆっくり止めた。


「ねぇ。友香さん。覚えてる?」

「...何を?」

「私と友香さんが出会った時の事」

「...うん。覚えているけど。何故それを」


「出会った場所がここだからよく覚えている。

私がなかなか成績が上がらずに悩んでいたから」と友香さんは話す。

その言葉に私は「...友香さんに出会えたのは運命だって思う。私、貴方に出会えた事で学んだ事が沢山ある」と言う。

友香さんはかなりビックリしていた。

私は彼女を見据える。


「友香さん。私の視野はかなり狭かった。貴女の様な大切な人がこうして必死にもがいている事に気が付かなかった。そういうのに気が付かない愚か者だよ。だけど私、視野が狭まっていた時に彼に出会ったの。上条一郎くんに。それから貴女が告白してくれたからようやっと気が付いたよ」


私はそう言いながら涙を浮かべる。

それから彼女を抱きしめた。

すると彼女は私の腕の中で啜り泣き始める。

私は強く固く抱きしめた。


すると人の気配がした。

それはきいちゃんだった。

私を見て彼女を見る。


衣装では無いが可愛い服を着ている。

折角の可愛い服なのに砂が付きそうなのにその場にスカートを翻して構わず跪いたきいちゃん。

友香さんを見つめる。


「ねえ。友香」

「な、何。きい」

「貴方は...その。私...誤解していた」

「?」

「貴女が苦しい事に。何も気が付かなかったよ」


そう言いながらしゃがんだままきいちゃんは友香さんを抱き締める。

そして頭を撫でながら「苦しいのは私達だけじゃなかった」と言いながら手を握る。

友香さんは「...」となりながら涙を拭う。

私はそんな姿を見ながら笑みを浮かべながら友香さんを見る。


「私。...貴方を友香と呼びたい」

「え?...でも私は...」

「呼んでも良いかな。友香って」

「...良いけど...でも私、友香って呼ばれる程じゃない」

「謙遜する必要は無い。...私だって友香って呼んでいる」

「まあ、木島さんは...私の事を昔からそう呼んでいるから。でも...」


私はその言葉に「私、もっと貴女を知りたいしね」と笑みを浮かべる。

すると彼女は「!」となりながら私を見る。

そして友香は「...分かった」と言いながら私ときいちゃんを見る。

それから涙を拭う。


「...そう呼んで」

「うん。...有難う。友香さん」

「...結成3年目。ようやっと先が見えそうだね」

「そうだね。きいちゃん」

「...」


友香は私を見る。

そして涙を浮かべた。

私達は同じ苦しみを...抱えながら生きている、か。

そう思いながらいるとスマホが鳴った。

紀子さんだった。


「もしもし...」

『何処に居るの!?何で3人共居ないのかしら!』

「...すぐ戻ります」


電話を切ってから青ざめる私達。

それから私達はダッシュで各々の持ち場に戻る。

その間も何だか私達は幸せな気持ちだった。

正直、しこりが消えた様な。

そんな感じの、だ。



私は正直、友香を嫌っていた。

心底嫌いだった。

だけど...彼女に改めて接して彼女は。

苦しんでいる事に気が付いた。

それを知ってからというもの...私は自分の人生を見つめなおした。


「ありがとうございましたー!!!!!」


番組の歌唱大会の番組の収録が終わってから私達は挨拶をしてから友香とゆっちゃんを見てみる。

やり遂げた様な感じを見せている。

私達はニコッとしながら手を添えあった。

それから私達は抱き締め合う。


「上手く終われたね」

「そうだね」

「私も...何だか今日はスッキリしている」


それから私達は笑み合いながらそのままスタジオから廊下に出る。

そして歩いてから私はゆっちゃんと友香と別れて関係者用入り口を歩いていると「おうおう」と声がした。

嫌味な声だった。


スキャンダル好きの記者の後藤がうざったくグラサンをかけて絡んでいる。

ゆっちゃんに、だ。

嫌味な感じだ。


「聞いたよぉ?幸奈ちゃーん。...何だか君は一般男性の男の子と恋をしているんだってぇ?」

「...違います。...何ですか。後藤さん」

「違わないでしょー。俺、ずっと追いかけていたから」

「...それはその男の子の家に?」

「そうだよー。だってこんなスキャンダルはまさに宝の宝庫!すんばらしいからね。日本中の宝の君がね!まさに大大大スクープだよ」

「...」


ゆっちゃんは逃げる。

ずっと付いて来る後藤を見ながら嫌気を感じている様だ。

ずっとメモしながらカメラを持っている。

ゆっちゃんは「付いて来ないで下さい」と言う。

私は怒りながら後藤に一言文句をと思っていると友香が私を制止した。


「おうおう。んで?真相は?ゆきなちゃ...」

「オイ」

「...うぇあ!?」


後藤はマズい物でも見た様な感じで小さく悲鳴を上げる。

猛烈に厳つい。

男勝りな男性じみた不良の様な顔で後藤の腕を思いきり握り締める。

そしてそのまま「幸奈に汚い手で触るな」と眉を顰めて怒る友香。


「ゆ、友香ちゃんじゃないの。あ、あの。滅茶苦茶、痛いよ?...あ、はは」

「そうね。腕を折ろうと思って。記者には痛手でだよね。あまりふざけた事をするとマジに腕折るぞ」

「ま、待って。そんな事をしたら俺がスキャンダルとして...」

「いや。私は別に報道されても良いし。私、アンタみたいなのが一番嫌いだから。この場で締め上げても良いけど?新聞に載るぐらい痛みじゃ無いし。折る位の腕力ならある」


その言葉に「冗談だよ!あ、あっはは...ごめんなさい~!!!!!」と後藤はぴゅーと音でも鳴らして良いものと思うがそんな感じで慌てて去って行った。

私は驚きながら友香を見る。

友香は「ったく」と言いながらゆっちゃんに向いた。


「...格好良いじゃない。友香」

「...そんな事は無いけど」

「私、貴女が仲間で良かった」

「...」


友香は恥じらう。

そこは乙女だった。

私はその姿に笑みを浮かべながら2人に近付く。

そして私達は歩いて控え室に行った。

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