第14話:沙都希から伝わる緊張感。

「いちいちめんどくさ・・・ん〜〜〜〜じゃ〜・・・普通にゆうでいいよ」

「親も親戚もダチもみんな、そう呼んでるし・・・」


「じゃ〜ゆうで・・・」

「祐って呼ぶのも君って呼ぶのもたいして変わんないじゃん・・・どっちも

ふた文字だし・・・君って呼んでたほうが間違って他の男の名前呼ばなくて

いいでしょ?」


祐はクスッと笑った。


「あ、笑った・・・あはは、笑えるんだ」


「笑いもするし、泣きもするし、怒りもするよ・・・それがなにか?」


「ねえ、そんなにそっちに傾かないで? 汚いものからさけるみたいに」


「あんたの近くにいると近寄りがたい雰囲気って言うか緊張感が伝わって

来るって言うか、落ちつかないんだよ」


「なんでだよ、落ち着かないって・・・そんなに私が怖い?」


「そうじゃなくて・・・」


すこしだけ間が空いた。


「妙な緊張感っつうか・・・悪く言ったら威圧感つう か・・・?」

「緊張感?・・・威圧感ってなに?」


「あんた、自分で気づいてないだけだろ?」


「・・・・・・・」


「そういうのって人に伝わるんだぜ」

「あんたさ、長い間、人に心許したことないだろ」


「な、なに言ってんの・・・なに?どうしたっての・・・ 人のこと分かった

ふうに・・・」

「それに、私もあんたなんて呼んでほしくないし・・・」

「ちゃんと沙都希って名前があるんだから」

「そんなこと言って、やっぱり私のこと嫌ってるんだ・・・」


「嫌ってなんかないって言ってるだろ」

「ただもうちょっと、隙って言うか・・ゆとりって言うか、なんていうか」


「何、言ってんの・・・分かんない・・・」


「だから、もっと力抜いたほうが・・・いいって言ってんだよ・・・」

「もっと、ソフトにって言うか優しいって言うかさ・・・」


「ん?何?優しくしてほしいの?」


「そういう意味じゃなくて・・・」

「その威圧感みたいのがなかったら、あんた・・・沙都希さんは、めっちゃ

イケてると思うよ、俺は・・・」


「威圧感って・・・なに?」


沙都希はなんとなく裕に本質を突かれた気がしてちょっと戸惑った。


「悪い・・・気にしないでよ」


「私ってそんなにダメかな・・・」


「ダメとかじゃなくて・・・そのバリアって言うか、壁みたいの取り去ったら

もっと誰とでも仲良くなれると思うぜ・・・」

「そんな壁作ってたら沙都希さんのこと好きになってもつまんないだろ」


「なに、ぼそぼそ言ってんの・・・聞こえない」


「いいから・・・」


「もしかして今、私のこと好きになったって言ったか?」

「そう聞こえたぞ」


「言うか、そんなこと・・・」


「正直に言いなさいよ?・・・」


「そんなこと、どうでもいいだろ?」


「って言うかさ、さんはいらない、沙都希でいいから」

「男からさんづけなんかで呼ばれたら寒イボでるわ・・・」


「ん〜じゃ〜遠慮なく沙都希さつき・・・で・・・」


「そか、私のことが好きなんだ・・・どうりで、下心見え見えの目してる」


「どんな目だよ、それ」

「俺は、そんな飢えた目、してないぞ」


「それっていつから?」


「そりゃ・・・そのはじめて会った時から・・・」


「白状したじゃん・・・うん、いいよ・・・」


「なにが、いいいんだよ」


「私のこと好きなら付き合ったげてもいいけどお〜って言ってるの」


「はあ?」

「俺はひとことも付き合ってくれなんて言ってねえだろ?」

「なに、一人で納得して、前に進めようとしてんだよ」

「バッカじゃねえの・・・」


つづく。

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