第18話:初デート。

「あ、そうだ、街にでるんだよね・・・」


「ひとつ言っとくけどさ、街で私に声かける男がいても気にしないでね」

「世間は狭いから、たま〜にだけど、そういうのと出くわすこともあるかな〜

って思って」

「ま、そういうのがいるところにはなるべく行かないようにすればいいか」


「なんだよそれ・・・」


「あとで文句言われても困るから先に言っといただけ・・・過去に、男がいた

のはたしかだし・・・」


「そんなの昔の話だろ」


「今、俺以外で付き合ってる男がいなきゃいいよ」


「俺以外って・・・私まだ祐に心を許した訳じゃないからね」


「なに、女子高生みたいなこと言ってんの」

「もう何週間も俺といたんだし、俺を見てきただろ?」

「俺たち、もう友達卒業、恋人以上だろ」


「それに沙都希の過去に何かあったんだなってことくらいは想像つくし・・・」


「じゃなきゃ、有名美容室からうちみたいな小さな店に来る訳ないもんな」

「でも、沙都希の過去になにがあっても俺はそんなことちっとも気にして

ないからな・・・俺、嫌いなんだ人のこといろいろ詮索するの」


「人のことより自分はどうなの?」


「まあ俺にだって人には話したくない過去はあるよ」

「かっこ悪い話だけど、警察のやっかいに もなったことだってあるし・・・ 」

「だから少々のことじゃ驚かないから」


「へ〜前科持ちなんだ・・・」


「まあ、中身も外見も硬派って感じはして たけど・・・なんかやらかしたんだね」

「ってか、店で話してる時間あったら、行こうよ・・・早く」

「もうお腹ペコペコ」


「沙都希が先にしゃべり出したんだろ?」


「そうだっけ・・・」


「いいから・・・」

「着替えてこいよ、俺はエプロンとったら いいだけだから・・・」

「待ってるからさ・・・」


「すぐ着替えてくるからね、待っててね、 先に行っちゃ嫌だよ」


沙都希はさっさと私服に着替えて二階から降りてきた。


フリルがついた薄紫のブラウスに白のタイトスカートから長い足が

覗いていた。

私服に着替えた沙都希を見て、改めて祐は思った。


(カッコ可愛すぎだろ・・・惚れないわけないわな・・・)


これから祐とデート。

男と出歩くなんて、そんなこと久しぶりだった。

そんな細やかなことに沙都希はときめいた。


この何週間か反町家のふたりといて、沙都希はここの人たちは自分を

裏切らないと思いたかった。

沙都希には他人に対して疑心悪鬼になってるところがある。

裏切らないと言う確信はなかったが、信じてみたかった。


そのせいか生活の中で沙都希の身についてた威圧感みたいなものが少しづつ

消えかけていた。

そして祐にも心を許しはじめていた。


沙都希は、さりげなく祐の腕にすがって彼の顔を覗いた。

沙都希を見て微笑んだ祐はイヤがりもせず沙都希の思うままに任せた。


補足だが、実は祐には沙都希にもまだ言えない過去を持っていた。

沙都希どころか誰にも言えない祐の深い傷だった。

そのことは喜代さんと一部の人間だけしか知らない。


高校生の時、祐は自分の不注意で同級生の女子を死なせてしまった過去があった。

祐は、その女子の死をずっと背負って生きてきてるのだった。


つづく。

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