第12話:感じワル・・・肉食系根暗男子。
沙都希は丁寧に挨拶したが、沙都希を見た祐は固まったままそこにつっ立っていた。
見かねた喜代さんが
「祐、挨拶くらいしなさい、子供じゃないんだから」
そう促されて我に返ったように
「あ、そ・反町 祐です・・・はじめまして、よろしく」
祐の挨拶が遅れたのには理由があった。
それは祐は、はじめて見た
単純バカというわけじゃないが、沙都希は祐にとってどストライクな女だった
からだ。
沙都希の容姿を見て何も感じない男は、まずいないだろうが、祐には特別な
存在感に思えた。
昔からずっと想像の中にいた女性が現実に目の前に現れた、祐にはまさにそういう
状況だった。
だから、挨拶が遅れて・・・我を忘れて沙都希に見とれていたのだ。
沙都希は自分自身が思うより、誰よりひときわ 際立っていて、どこか日本人
離れした容貌、ハーフだと言うことも彼女の魅力を引き立てていた。
祐は、沙都希のことが気にはなったが、それから率先して自分からしゃべろう
とはしなかった。
下心は見せたくなったし、なにかキッカケがあったら、そのままダチになれそうな
気がしたが、そのキッカケが見つけられずにいた。
沙都希はどこか人を寄せ付けないバリアと言うか緊張感を放っていたのも
祐が沙都希に近寄らなかった原因になっていたかもしれない。
近寄り難いって印象・・・沙都希はまるで自分から心を閉ざしてるかのように
見えた。
そう言うことは自分では、なかなか気付かないものだ。
お店のお客が途絶えたので沙都希は自分の方から祐に話しかけてみた。
祐は沙都希を避けるようにカウンターの上や椅子を拭いたり並べてある化粧品
なんかをきちんと整理整頓したりしていた。
「ね、君・・・このお店継ぐんでし ょ・・・偉いね」
「お母さん喜んだでしょ」
祐はただ、ちらっと沙都希を見て、ぶっきらぼうにうなずいただけだった。
(感じワル・・・肉食系根暗男?なの?)
沙都希はそう思った。
「ねえ、君、いつもそんなにぶっきらぼうなの?」
「そんなことはないすけど・・・」
「特にしゃべるようなこともないし・・・」
「それに最初っからヘラヘラしてたらバカでしょ」
「まあね・・・あんまし軽い男もどうかと思うけど・・・」
「でも同じお店で働いてるんだからコミュニケーション大事だよね」
「ですね・・・ 」
祐は、それだけ言った。
祐に対する印象は沙都希にとってあまりいいものとは言えなかった。
だが本当は祐が感じがワルい根暗男だった訳ではなく、近寄りがたい原因が
自分にあることに沙都希はまだ気づかずにいた。
本来の沙都希の性格は、育った不幸な感情にも関わらず明るく天真爛漫、
誰でも楽しくさせる幸せオーラをちゃんと持っていたのだが・・・。
つづく。
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