第23話:喜びの夜。

その夜、沙都希さつきゆうは結ばれた。

酔った勢いもあったが、どう見てもそうなるシュチュエーションだった

わけで・・・自然の成り行き?


ふたりは見つめ合っていた。

どちらからともなく着てる服を脱がしあった。

走り出した感情は誰にも止められない。


ふたりは激しく唇を求め合った。


「昔のイヤなこと、全部忘れさせて・・・・」


「俺との新しい思い出を沙都希にあげるよ・・・」


祐と沙都希は店の二階の部屋で結ばれた。

喜代さんは別宅から通っていたので 夜は そこなら誰にも気兼ねすることは

なかった。

沙都希が過去に経験したことは、あまりに無知な行為でしかなかった

ことが祐とのセックスで分かった。


颯太以外、沙都希が心も体も許したのは祐だけだった。


この夜、沙都希は祐に抱かれてはじめて幸せを感じた。


祐は髪を撫でたりキスをしたり・・・・祐の舌が沙都希の秘部に絡みついてきた時、

沙都希は押し寄せる快感に思わず声を漏らした。

ほとんどの男は自分の欲求だけを満たしたが、祐の愛撫、それだけで沙都希は、

はじめての快感を味わった。


まだ体の震えが治りきらないうちに祐が沙都希の中に入ってきた。

満たされていく高揚感。

沙都希はもうどうなってもかまわないと思った。


(私を壊して・・・)


そして沙都希はこれまで経験したことのないようなエクスタシーに何度も震えた。

何度も深い海に沈んだ。

何も聞こえない・・・意識が混濁した世界。

自分ではどうしようもない、とめどなく激しく痙攣する体に気持ちがついていけ

なかった。

半ば放心状態で、ただ喘ぐばかりだった。


こんなセックスははじめて・・・沙都希はそう思った。


祐は余韻が冷めるまでずっと愛撫し続けてくれた。

それだけで、夢のようだった。


沙都希は泣いていた。

喜びに泣いていた。


沙都希は、震えるため息をひとつついた。


「私・・・もう、死んじゃうかと思った」

「すっごく、よかったし嬉しかった」


「そう・・・俺たち、心も体も気が合うみたいだな」


「そうだね・・・でも・・・」

「でも」・・・ちょっと不安」


「なにが?・・・」


「何日かしたら、あれは遊びだったから・・・って言われて」

「別の彼女連れて来たりして・・・私は捨てられるかもって・・・」


「あはは、想像力豊かだな・・・俺さ、そこまで最低男じゃないからね」


「なら、いいけど・・・」

「幸せが大きいほど、なくした時のショックって大きいでしょ」


「大丈夫だよ、俺は沙都希を裏切ったりしない」


「うん、信じてる・・・」

「あ〜あ・・・私、今まで何してたんだろ」


「昔の沙都希があるから今の沙都希があるんだろ」

「どんな経験も沙都希の一部だし、たしかに後悔や反省はあるかもしれないけど

自分を否定しては生きられないだろ?、過去も、今も、未来も全部自分のもの」

「無駄なことなんて、ひとつもないんだよ」


「なんか哲学者みたいなこと言うね」


「祐・・・昔、何があったの?」


つづく。

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