第24話:祐の過去。

「・・・・・・・・・」


「何かあったんだね・・・」


「もう沙都希に話してもいいかな」


「うん、うん、話して・・・私、知りたい」


「あのね・・・俺は高校のときバイク集団のグルー プに入っててさ」

「分かるだろ、夜中にハエみたいにプンプン音出して走ってるやつら」


「よく知ってる・・・・」


「俺はある晩、同級生の女をバイクの後ろに乗せて走ってて警察に追われててね・・・スピードを出したままカーブを曲がろうとしたんだ」

「そしたらバイクがハイサイドを起こし て・・・ あ〜ハイサイドなんて言っても分かんないよな・・・」


「とにかく前のタイヤがロックして横倒しになったままバイクごとガードレールに突っ込んだんだ・・・」

「気がついたら救急車が来てて俺は左足の足首の骨折だけで済んだけど俺の後ろに乗せてた女の子はその事故で亡くなったんだ」


「最初は彼女が亡くなったって信じられなくてね・・・」

「何度も自分の中で否定したけど現実は残酷なもんだったよ」


「俺は自分のせいで人ひとり死なせたことにずいぶん苦しんだ」

「でも彼女は二度と帰ってこない・・・」


「で、その子の告別式の日、亡くなった女の子の父親に言われた」


「君は娘のぶんまで生きる義務がある・・・生きて一生苦しめ、死ぬまで

生きて責任をとれって・・・万が一にも死ぬことは許さん・・・ってね」


「だから俺はこうして未だに生きてる」

「自分も死んで責任を取ろうとしたけどでも、おふくろをひとり残しては

死ねないと思った」

「子供が親より先にあの世に行くなんて一番やっちゃいけない親不孝だからな」

「俺は死ねば楽になるけど、これ以上誰かを悲しませるようなことは、しちゃ

いけないって思った」


「それ以来バイクには一度も乗ってない・・・て言うか、もう乗れないかな」

「つう訳で俺は亡くなった女の子のぶんまで生きなきゃ許されないんだよ」


「ってそんな話さ」


「それってマジな話」


「マジな話・・・作り話したってしょうがないだろ」


「あ〜俺って普段、ふざけてばっかだもんな・・・」

「俺だってシリアスなエピソードも持ってるんだぜ・・・」


沙都希の瞳から涙がこぼれ落ちた。


「悲しいね・・・苦しかったよね」


沙都希はおもわず祐に抱きついた。


「私が祐の心を癒してあげる・・・ どれだけ私の愛を捧げることができるか

分からないけど精一杯支える」


「ありがと、その気持ちだけで嬉しいよ」

「だから最初から言ってるだろ、俺の彼女になれって」


「もうなってるよ・・・彼女に・・・恋人以上・・・気持ちはマックスだよ」


その夜は沙都希は眠れなかった。

はじめて女の喜びを知ったことと、祐の意外な過去を知ったこと。

今夜の出来事の余韻がまだ残っていたし、気持ちは複雑だった。


自分のこと・・・過去にあった出来 事・・・いろんな思いが 頭を駆け巡った。


つづく。

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