第9話:新たな旅立ち。

偶然、颯太と再開してからさらに2年が経ち沙都希は今は郊外の小さな美容室で

働いていた。


以前いた銀座美容室は大きな店で従業員もたくさん抱えていた。

もちろん街では一番予約が取れない店として有名な超一流の美容室だった。

そこで働けるのはごく一部の人だけで、いわゆるカリスマと呼ばれる人たち。

その中で沙都希も働いていた。


でもいつも感じていた・・・再開した颯太と別れてから、なにひとつ

変わってない自分・・・毎日それが当たり前のように働いて寝るだけ。

仲のよかった美紀とも遠ざかっていた。


颯太と再開したときは前向きだった。

でも、なにも変わらないつまらない日々に沙都希は自ら心を閉じた。

沙都希は生きる目標を見失っていたのだ。


銀座美容室も自分はこの美容室の空気に馴染めないって思っていた。

給料もそこらのサラリーマンよりよかったがお金の問題じゃなかった。

だから病んでしまう前に思い切って辞めようと思っていた。


沙都希は心が疲れていたのかもしれない。

もっと静かな場所で、のんびり仕事がしたかった。

とにかく心を休めたい、そう思った。

でも、なかなか踏ん切りがつかず悶々とした日々・・・憂鬱でしかなかった。


颯太と再開してまた別れてから沙都希は誰とも関わらず、ずっとひとりで

暮らしていた。

女友達も作らずに・・・。


孤独ではなかったが、いつもひとりぼっちだった。

だからこのままじゃダメだって思った。

環境をかえなきゃって、ずっと思っていた。

できれば有名美容室よりも、一般の小さなお店で働こうと・・・。


ある日、美容室が休みの時、気晴らしに街へ出た。


買い物はしなかったがアパレル系のショップのショウウインドウを覗いたり、

カフェで紅茶とデザートを食べたりして時間を過ごした。


そしてたまたま通りかかった美容室のドアに「美容師さん募集」の張り紙を

見つけた。


店の名前は「美容室・反町そりまち


なんとなく心にひっかかるものがあった。

ひらめきとでも言うんだろうか・・・。

沙都希はその店のドアを開いた。


つづく。

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