第34話 生物学的翼の意味について

 さてさて、レベルが100になった私ことアヤの目の前にはウィンドウが浮かんでいた。


 『条件を達成しました【真竜人】に進化しますか?』


 真竜人、とな?まあとりあえずYESを選択して、と。 


 「うわっ」


 YESを選択した瞬間、体が微かに光だしそれと同時に体がいくらか軽くなる。ステータス画面を見るかぎりどうやらステータスが軒並みいくらか上昇しているようだった。そして新しく増えたスキルが二つほど。


 「ふむ、「竜の息吹ブレス」と「竜化」、ね」



 ブレスとやらは恐らくドーラと初めて会ったときに彼女が使っていた口からビームを出すあれだろう。しかし、「竜化」か、竜に化けると書いて竜化なわけだから、竜になれるのかな?いやまあ試してみればわかるんだけど。

 というか、真竜人といえばあれだ。ドーラと同じ種族で竜人の上位種であろうと考えていた種族だが、やはりというべきか竜人から進化できたらしい。そして気になる進化条件だがまあこれはほぼ二択だろう。即ち


 「レベルか、討伐数か」


 ちょうどレベル100になったタイミングで進化可能になったことから私としてはレベル100説を推したいわけなのだが、こればっかりは他にも進化をしているプレイヤーの話を聞かない限り判断のしようがない。


 「うーん、まあ考えてもわからないものは一度おいておいて、竜化を試してみようかな?「竜化」!」


 スキルを発動したとたん私の体が光だし、尻尾らしきものが生え、翼が生え───


 「わっ、わっ、すごい」


 変身が止まった。


 「………ふむ」


 なるほど、なるほどなるほど?

 あれだ、私は竜化と聞いて大きなドラゴン的なサムシングになることを期待していたのだが、どうやら竜の要素が入ったサムシングになるスキルだったらしい。

 ということで、今の私は手や足の爪が伸び、その付近がウロコに覆われることで見るからに攻防力が上がっていたり、尻尾と翼が生えたりはしているが、体のサイズは元のアバターとほぼ変わらないものであった。

 そして、この姿になった時からずっと感じている全能感というか、高揚感から察するにステータスも上がっているのだろう。

 うん、今確認した。結構ステータス上がってた。


 まあだが、想像していたものとは違ったが、これはこれでなかなかかっこいいのではないだろうか?そう思い至った私は試しに尻尾や翼をぶんぶん動かして………ん?翼?


 「え、もしかして飛べたりする?」


 ステータス画面を確認する。それらしいスキルが追加されている様子はない。しかし、しかしだ。翼まで生やしておいて実は飛べません飾りです。なんてことは無いだろう。もしそんなことがあればその種族は進化の方向を間違っているだろう。生物学的に。いや私は別に生物学を専攻しているわけではないから適当に言ったのだが。いや、まだ口には出していないから正確には「適当に考えた」のだが。


 「ふぉぉぉ!!」


 バッサバッサ!


 浮かばない。


 「こ、のぉぉぉっ!!!」


 バッサバサバサァ!! 


 飛べない。


 「おらぁぁぁぁ!!!」


 バサバサバサバサ!!!


 ………………



 「飾りじゃないか!!!」


 なんだよ、リアルに五分くらい努力していた私が馬鹿みたいじゃないか。ま、まあいい。うん、別に私は気にしていない。とりあえず尻尾や翼をいったん消すために竜化を解いて


 「うわ、体力がすごい減ってる。なにこれ?いや、多分竜化の影響か」


・竜化

使用者の命を削ってかつてありし竜の力の一部を宿すことができる。



 ユニークスキルたちの時から思っていたのだが、こういうデメリットとかはもう少し明言しておいてほしいものである。

 ああいい、一旦帰ってドーラ達に進化の報告を


 「ん?ドーラと言えば……」


 ドーラの事を考え、一つの可能性に思い至り自分の頭部に手をやる。


 「角が………ある」


 そう、角だ。思えばドーラの頭には角が生えていた。そして今私にも生えている。つまりこれは真竜人という種族由来のものなのだろうが。


 「え、これ、どうやって消すの?まさか……消せない………?」


 消せるよね?消せないとなるとちょっと困ったことになるぞ?具体的にはもしもアインスやツヴァイに戻ることができたとき、この角を他のプレイヤーに見られると「あ、あいつ真竜人じゃ~ん」のようなことを言われる可能性があるし、そもそもまだ誰も真竜人になれたプレイヤーがいない場合、質問攻めにあう可能性が微レ存。


 そして奴隷やフカセツさん、主にフカセツさんあたりは特に根掘り葉掘り聞いて来そうで非常にめんどくさい。



 「えぇ……消せる、よね?」

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