第25話 開戦

 「さて、と。あとは待つだけだね」


 聖女一行と戦うべく集まった私たちプレイヤー四人はホーム(仮)二号に集まっていた。聖女たちがいつどのタイミングで来るかはわからないので、今回はそれを確かめるためでもある。はたして奴らは私たちが集まっていればいつでも来るのか、それともリーダーの私が一人でいても来るのか、時間帯や時期は関係あるのかなどの検証である。


 「相手が対PK用のNPCだとするなら、負けたらペナルティが普通より大きいとかあるんすかね?」


 「いや、わからないね。そもそも対PKer云々だって私たちが勝手に想像してるだけだし」


 「なんか、ドキドキしてきた」


 今の状況にそれぞれが大なり小なり緊張していると、状況が動いた。


 「……ッ!来ました!おそらく聖女です!!」


 いつの間にか感知のレベルが5まで上がっていたフカセツさんに拠点周りを全力で警戒してもらっていたのだがどうやら反応があったようだ。


 「よし、じゃあ作戦開始と行こうか。」


 そう呟く私にリュティが何か言いたそうな視線を向けてくる。


 「ん?なに?」


 「………なんか、リーダーからの鼓舞とかない、の?」


 「えぇ……」


 なかなかに無茶ぶりをしてくるなこの子は。そんなもの急に言われても少々困るのだが。


 「うっ………」


 そこで気が付く。リュティだけではなく他の二人も私に注目しているのだ。


 「え、ええと………相手はNPCだ。いつもなら殺しはしないところだけど、私たちに歯向かう以上敵以外の何物でもない。絶対に勝つよ!!」


 「「「了解!!!」」」


 言いながら私とリュティ、奴隷はそれぞれ隠密を発動し、拠点の中に潜伏する。同じ隠密といっても私の隠密はレベル8、リュティはレベル1、奴隷は2であるので、これで相手が感知スキルを持っていた場合そのスキルレベルに大体のあたりをつけることができる。ちなみに戦いの初撃は隠密を使用した私たちの奇襲から行う作戦であるので、相手にレベル8以上の感知を使えるものがいると少し悲しいことになる。


 ドンッ!!


 騒音とともに、しかし前回とは少し違い扉ではなく壁を破壊して登場した聖女一派。メンバーは前回と同じで聖女1人に護衛騎士3人。護衛騎士が聖女の周りを囲むように立っている。護衛騎士のメンバーも見た感じでは前回と同じように見える。猫耳女騎士と金髪イケメン騎士、黒髪女騎士だ。これは聖女というNPCのAIが自分で選んだメンバーで、私たちを狩るということも自分で考えたうえで行動しているのか、それともこのメンバーが固定なのかはわからないが、作戦に変更はない。


 「ッ!」


 ガキンと音がし、金髪イケメン騎士にリュティの大剣が止められる。


 「ダニエラ!二時の方向!!!」


 鋭くそう叫んだ聖女とそれに反応して剣を振るった猫耳騎士の斬撃を奴隷が受け止める。

 そして私のスキルのエフェクトを帯びたナイフは


 「ぐっ!!」


 首に刺さったことでクリティカル判定になり、そのダメージから苦悶の声を上げる黒髪女騎士にかまわず追撃を加える。ナイフを引きぬき、首にもう一撃。苦し紛れに放たれた斬撃を体をひねって回避しつつ鎧の関節部分から膝の裏を刺す。次にもう一度首に刺してやろうと思ったところで聖女がこちらに手をかざしているのが目に入り、慌ててバックステップっを入れると、私が先ほどまでいた場所に光弾が放たれた。


 「フカセツさん!!次!!!」


 「了解です!「ウインドハンマー」!!」


 風属性の吹っ飛ばし性能が高い魔法を行使するフカセツさん。それによりリュティの剣を受け止めた護衛が家の外に吹き飛ばされる。そしてそれを確認したリュティは奴隷と競り合っていた護衛を奴隷もろとも打ち据えた。


 「パワースウィング!!」


 奴隷と猫耳騎士が家の外に出たことを確認するなりリュティは先ほど自分の剣を受け止めた護衛が吹き飛ばされた方向に走り出し、フカセツさんは奴隷の方に走りだす。それによって今家の中には私と聖女以外に人はいなくなった。


 私たちがたてた作戦通りの状況が整ったところで口をゆがめて聖女様に笑いかける。




 「さて、タイマンと行こうか、聖女様?」

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