第15話 ここ is どこ?

 第一回イベントが終わり、Ckoのログインした私の前には第一回イベントの総合順位を表示するウィンドウが表示されていた。


一位 カイト    743Pt

二位 アヤ     740Pt

三位 リュティ   370Pt

四位 コニパス   340Pt

五位 フカセツテン 311Pt


………



 参加プレイヤーには順位に応じた賞金が与えられ、五位以上にはさらに「秋月シリーズ」の武器種から一つを贈呈いたします。





 「二位………?」


 三位以下と比べると明らかに私のポイントが高い。故にフカセツさんが言っていたことが嘘であったということではないのだろう。それはいいのだが、いやよくないのだが、まさかの二位である。


 「もしや、私別に最強じゃない………?」


 その考えに至ったとたんに恥ずかしさがこみ上げてくる。ブワッと冷や汗が流れ、イベント一日目の記憶を全力で探る。あの時の私はかなり調子に乗っていたが、何か変なことを口走らなかっただろうか?


 「まあ、大丈夫…………かな?」


 そう結論付けた私は、気分を切り替えつつ上位入賞商品の「秋月シリーズ」とやらを選ぶ。どうやら剣や弓など各武器種の中から一つ選べるらしいが、私は迷わずナイフを選択。


 『「秋月のナイフ」を獲得しました』


 そのアナウンスとともに現れたのは暗い紺色の中に白い紋様が浮かんでいるオシャレなナイフ。今使ってる岩竜のナイフがロックドラゴンの鱗そのままの黄土色にちょっと凸凹があるものがだということを考えれば秋月のナイフの方が見た目がきれいで強そうに見えるが、そんなことはなく岩竜のナイフの方が圧倒的に強かった。


 ログインした後すぐにウィンドウを操作してそこまで終えた私はふと思う。







 「…………ここは、どこだろう」




 そう、見慣れない土地にいたのだ。どうやら広場のようなところにいるらしい私の周りには舗装された地面と中世ヨーロッパを思わせるきれいな街並みが広がっている。間違っても土むき出しの地面に畑と貧相な家が広がっているドゥルグ村ではないだろう。


 一瞬間違えて別のゲームに来てしまったか?と思ったがCkoで間違いないらしい。しかし前回ログイン時と景色がつながらない。こうなってしまえばいっそ別のゲームを起動してしまったオチの方がありがたかったが、神に祈っても事実は変わらないのでひとまずこの地名だけでも明らかにすることにする。


 広場の隅にいる明らかにNPCっぽい露天商に声をかけ、訊ねる。


 「今いい?この街の名前を知りたいんだけど、教えてもらってもいいかな?」


 すると少し怪訝な顔をした露天商だったが、街の名前くらい教えてやってもいいと判断したのかすぐに答えてくれた。


 「?ここはアインスの町だが……お嬢ちゃん旅の人かい?」


 「!ああ、まあ。そんなところだよ。ありがとう」


 軽く感謝の気持ちを伝えてその場を離れたが、アインスの町?それってチュートリアルやる勢がスタートする初めの町だったよね確か。

 前回イベントフィールドでログアウトしたからバグった?うわ、ありそう。マジかー。ここからドゥルグ村まで戻るの?場所がどこかもわからないのに?


 「はぁ……」


 めんどくさい。だがやらねばならないだろう。どうせどこかに地図かなにかがあるだろうし、それを見つけてさっさと移動だ。





 なんてことを考えていたのが一時間前の私。そしてその一時間後。つまり今の私は軽く絶望を感じながら路地裏に積まれた木箱に座っていた。だってそうだろう。一時間かけて得られた情報は

・地図はなさそう

・この近くにツヴァイの町がー

・町の西に大狼がー

のみである。


 これ、もしやあれか?ツヴァイの町とやらに行かないとこれ以上情報はないのか?というか、もしかしなくともドゥルグ村って明らかに終盤の村だよね??一日二日じゃ絶対にたどり着けないようなエンドコンテンツの村だよね?だってレベル90がうろうろしてるんだもん。レベル90の群れを蹂躙する種族が住んでるんだもん。無理じゃん。


 「はぁ……ツヴァイの町、行くか~……」



 そう決意を固めていた私は気が付かなかった。ため息に紛れて人が近づいて来ていたことに。その人影が剣を握りしめ、こちらへの殺意を漲らせていることに。そして─────



 ザクッ



 「は?」


 私がそれに気が付いた時にはもう、大剣が私の体を切り裂いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る