第39話 消滅村

 鬼神に光が、光の束が降りそそいだ。一瞬何事かとあたりを見回してすぐに後ろの真竜人たちがやったのだと気が付いた。いや、そういうのあるなら一言くらいくれても良かったと思う。あ、言ったら鬼神にもバレるのか?というか、このバトルが始まってからまだ鬼神が喋っているのを一度も聞いていないが、本当にコミュニケーション取れるんだろうな?


 『鬼神の分身B を倒しました』


 ははは、聞いたかBだってよ!それじゃあまるでAやCなんかもいるみたいじゃないか。

 まあそんなことはいいとして、鬼神(?)を倒したことにより歓声を上げながらお互いの健闘をたたえている真竜人たちの一人、ドーラに近づく。


 「ねえドーラ、最後の何?ああいうのあるなら知りたかったのだけど。というか、私もちょっと危なかったんだけど!?」


 「ははは、ごめんごめん。だってほら、アヤは死んでも生き返れるんだろう?」


 はははじゃねえよ。人の心とか無いのだろうか。まあいいけど。それにしてもずいぶんな浮かれようである。まあ確かに強敵ではあったが、最後の一文が不穏すぎて素直に喜べないのだが………。。というか、そろそろ四大特異点?、周りきちんと説明してもらっていいですかねぇ?プレイヤー置いてけぼりですよ?


 「ねえ、ドーラ。四大特異点についてもっと詳しく………え?」




 私たちは村の外から何故か村に向かってきていた鬼神(?)相手に軽く陣を敷いて戦闘を行っていた。つまり、村を背にする形で戦闘していた。それは村には非戦闘員の竜人が多くいるからであるのだが、つまりおかしいのだ。


 村でなんてことは。


 「ラコッ!」


 村に向けて走り出すドーラと真竜人たち。私もそれに追従しながら状況を分析する。

 なんだ?戦闘員がいないことを察知したイノシシどもが攻めてきたとか?いやいや、そんなはずはない。それならばまだやんちゃな竜人(Lv.90)が喧嘩してるとかの方がまだしっくりくる。



 はたして、と言うべきだろう。私はこの可能性を頭の片隅で考えていたのだから。はたして、ドゥルグ村の衝撃と爆音の正体は、竜人を襲っている音だった。




 「な、なぜ………ッ!」


 驚く真竜人たち。いや、私も驚いてはいる。驚いてはいるのだが、微かでも情報があったからかその驚きは他の真竜人よりも少ない。

 そして、私はこの惨状を見てすぐにこれはもう無理だ、と結論を出し、目的を鬼神(?)の討伐ではなく仲の良く死んだら悲しい存在、つまりドーラとラコの生存を最優先に置くことにした。


 「ドーラ!ラコを探してくる!」


 「あ、ああ!じゃあ私は家の方を探す!!」


 ところで、このゲームはゲーム故にNPC、プレイヤー、モンスターが死ぬ際に死体などは残らず、経験値と素材、少しのポリゴン片を散らして消滅する。故に被害にあったであろう竜人たちの体や血は残らず、壊れた家屋のみが残っているという異様な光景が広がっていた。


 「ラコ………どこだッ!?」








 ドゥルグ村は大きな村とも小さな村とも言えないが、真竜人という竜人の上位種族がそれなりの数そろっていて、戦力としてはそれなりのものである。しかし、そのうえで鬼神(?)が二人とは、それを消滅させるのに十分な戦力であった。それは先ほど鬼神(?)一体を相手に苦戦していたことからもわかるだろう。

 加えてこの場で瞬間的にとはいえ鬼神をタイマンで相手し得るプレイヤー「アヤ」のスキル「憤怒」はクールタイム中であり使えず、後衛組は先ほどの大技「ドラゴン熱咆哮ブレス」の使用によりしばらく遠距離攻撃手段は無い。


 しかしそのうえで「鬼神の分身A」を倒せたのは奇跡と言うべきか、根性、もしくは信念というべきだろうか。


 『鬼神の分身A を倒しました』





 『今までリスポーン地点を固定したすべての地点が破壊されたためリスポーンできません。始まりの町「アインス」でリスポーンします』

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