第32話 港町って湿度高いよね

 さて、ドゥルグ村でリスポーンし、旧友(いうほど昔ではないが)と感動的な再会を果たし、スゴクオイシイ料理を振る舞ってもらい、ユニークスキルなんかをゲットしたわけなのだが、これからどうしようと考えた私が始めたことは、フレンドとの再会を目的とした地理の把握ではなく、自らの強化であった。

 そう、もう二度とあのゴリラ聖女にボコられないために特訓である。


 詳細は省く、というよりも詳細を語る必要がないほど単純なものなのだ。

 だって五日間くらいずっとイノシシ狩ってたんだもん。詳細聞きたい?いらないでしょ?もうね、ずっと狩ってた。といっても一日5時間前後だけど。映画化するなら無限イノシシ狩り編だね。


 そして、今日も今日とてレベリングとイノシシ喰いを続け、レベル100の大台が見えてきてイノシシの群れともやりあえるようになり、そろそろロックドラゴン君に挑戦しようかと思った頃。




 『レベルが上昇しました Lv.99→100』

 『条件を達成しました【真竜人】に進化できます』



 「おっと?」











 コカサイトオンライン、Ckoと略されるこのゲームは多くのプレイヤーによって日々開拓されており、現在はアインス、ツヴァイ、ドライ、フュンフの四つの町が基本的にプレイヤーたちの拠点になっていた。もちろん、それは「基本的に」であり、他の町に到達したもののそれを黙秘していたり、意図せず未開拓の町にたどり着いてしまったプレイヤーもいくらか存在する。


 そしてもちろんというのも存在するわけだが、今回「リュティ」というプレイヤーが人を探す中でその町に到達していた。


 「ん、フィアの港町、ついた」


 とりあえずフィアの港町に着いたのはいいけど、アヤが言ってような街の名前じゃないし、町の雰囲気も全然違う………。


 この街もツヴァイの町やドライの町と同じように中世ヨーロッパ風のファンタジー世界的町並みが強く、間違ってもアヤから聞いたような田舎の村といった雰囲気ではなかった。


 「でも、港町………このゲーム、海出れる………?」


 いや、それはちょっと思考が飛躍したかも。水辺の魔物と戦える………くらいかな?まあどちらにせよまずはアヤの居場所について聞き込みをしないと。この辺の地理に詳しい人………誰だろ?まあいいや、とりあえず適当にそこら辺の人に聞こう。


 「ねえ、そこのおじさん、ちょっと」


 とりあえず目についた漁師風のおじさんに話しかける。この町はちょくちょくこんがり日焼けしたおじさんがいるのだが、これも港町だからかな?


 「ん?どうした?お嬢ちゃん」


 「えと、ドゥルグ村って聞いたことある?どこにあるか知らない?」


 するとおじさんは軽く考えるそぶりをした後


 「ドゥルグ村………悪いけど聞いたことないねぇ。ほんとにこの辺りなのかい?」


 「いや、それは分かんないけど」


 「そうなのか………俺もこの大陸以外の町は詳しくないからなぁ………」


 「………え?」


 おじさんの言葉に引っかかりを覚える。

 そうだ、「この大陸」とおじさんは言ったのだ。それではまるで────


 「他の大陸も、あるの?」


 「ん?お嬢ちゃん知らないのかい?世界にはこの中央大陸だけでなく、他に二つほど大陸があるんだよ?」


 「うぇ………」


 リュティは気が遠くなりそうだった。この大陸だけでも全然探索しきれていないのに、もしアヤの言うそのドゥルグ村とやらが別大陸だった場合私たちはもう二度と会えないんじゃ───


 「ううん、きっと、会える………!!」


 さすがに運営も初期スポーンに別大陸を設定するなんてことは無いはずだ。きっと、多分、おそらくめいびー。


 「ちなみに、その別の大陸にはどうやって行くの?」


 「そうだなぁ………この町の港からならアルタ大陸行きの船に乗せてもらえれば行けると思うぞ?ルド大陸の方はちょっとこの町からは無理だな」


 「ん、わかった、ありがと」


 とりあえずはこの大陸でアヤを探す。それでも見つからなさそうなら別の大陸に行こう。大丈夫、きっとまた会える。ううん、会う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る