第3話 戦闘?
駆け出した私はひとまず少女の方を向いていて私に背を向けているドラゴンを後ろから切りつけてみる。
「スラッシュ!!」
カキンッ
「………」
スキルを発動し、全力で振った私の短剣はそんな軽い音とともにドラゴンの鱗に打ち付けられる。
ふむ、えーと……?
「これダメージ入ってる?」
私の、攻撃というには少々おこがましい威力のちょっかいはしかし私という存在をドラゴン……いや、敬称をつけないのはもはや無礼に当たるかもしれない。いやいやモンスター相手に何を考えているんだ私は。ひとまずドラゴンさんにしておこう。私という存在をドラゴンさんに主張するという役割は果たしたようで。
「あ、あはは~……コンニチワ」
振り返ったドラゴンさんと目が合った。そしていきなり振り返ったドラゴンさんの様子を見て少女も私に気が付く。
「に、逃げてください!このロックドラゴンは今機嫌が悪いんです!!」
ほう、このドラゴンさんはロックドラゴンというのか。そんな中盤以降に出てきそうなモンスターが初期リス近くにスポーンするこのゲームのバランス調整を疑うが、まあそんなことはあとでいい。問題はこの少女だ。さてはNPCだな?必死さといい知識といい今日正式リリースのゲームのプレイヤーとはとても………いやまさかβテスター?
それはそれとしてこのゲームはNPCは一度死ぬとリスポーンできない。対してプレイヤーである私はペナルティにさえ目をつむれば無限に復活できるわけで……。
「いや、逃げるのは君の方だよ少女。ここは任せなさい!」
かっこつけてみた。
「憤怒」
先ほど獲得したスキルを起動する。ステータスが上昇することで体がかなり軽くなったような気がしてそれとともに現れた言い表せない高揚感に駆け回りたくなるが、とりあえずロックドラゴンさんを観察する。
紋が家でやらされていた纐纈家の武道はカウンター主体のものである。武道とは、自らの身を守り敵を倒すための技術に由来しうんたらかんたら、故に心技体を鍛えてなんとかかんとかとか説明を昔受けたが、真面目に聞いていなかったのでほとんど忘れた。ようは冷静に相手を観察してそれに合わせて潰せとかそんなところだろう多分。知らないけど。故によく見る。
ロックドラゴンさんが動いた。私を餌だと認識したのか口を開いて突撃してきた。大質量での突撃は単純故に厄介ではあるが、避けやすい。私は上昇した身体能力でひらりと突撃を躱した後、その側面に攻撃を叩き込む。
「スラッシュ!!!」
ガキンッ
「なっ………!」
今私ができる最大限の攻撃を繰り出したことで先ほどよりもいくらか鋭い音が鳴りはしたが、ドラゴンさんは無傷。そこまでならいいのだが、さきほどと致命的に違うことが一つ。私の短剣の刃が折れ、宙を舞っていることだ。
「うそでしょ………!」
まずいぞ。非常にまずい。有効打がないというか物理的に勝てない。
さて、これは死んだかな。そう思いせめてできる限り逃げ回ろうと考えた瞬間。ドラゴンが宙を舞った。
「………へ?」
次いで理解する。目の前のロックドラゴンは飛行能力に目覚めたのではなく、何者かに横から吹き飛ばされたのだ。そしてそれを為したであろう存在の方に目をやると、角のようなものが生えた女が立っていた。
「ラコ!無事かい!?」
そしてその女は少女の方に駆け寄っていき、抱きしめる。
「お姉ちゃん……!」
「一人で奥まで行くなっていっただろ!?」
「うぅ………ごめん、なさい……っ!」
泣き出した少女とさらに強く抱きしめる女、会話の流れ的に姉かな?どちらにしろ、私は置いてけぼりである。
「グルルァ……」
何やら感動的な雰囲気の推定姉妹を眺めていると、先ほどあの女の人が吹き飛ばしたロックドラゴンが起き上がってくる。
「ッチ、しぶといね。これでもくらいな!!「竜の
そう叫んだ女の人が口からビームを出し、ロックドラゴンを焼き払う。………ん?口からビーム?
「うわぁ………すっご………」
ビームの威力は相当なもののようで、私では傷もつけられなかったドラゴン君が瞬殺である。ちょっとレベルが違いすぎて思わず乾いた笑いを漏らしていると、不意にアナウンスが聞こえてきた。
『レベルが上昇しました Lv.1→15』
「え?」
レベルがすごい上がった。
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