第18話 ユニークなサイコ

 「さて、PKするのはいいけどどうせなら移動する?ここは一応序盤の町なわけだからもっと先の町を拠点にした方がほら、何というか、リターンが大きそうでしょ?」


 リュティとフレンドになった私はそんな提案をする。そうなのだ、今私たちがいる場所はアインスの町。ほとんどのプレイヤーがチュートリアルを受け、そして旅立っていく街なのだ。そんな街には基本的に初心者の人しかいないわけで………ん?


 「そういえば、なんでリュティはこの町にいたの?この町を拠点にしてるってわけでもないんでしょ?」


 「んーと、モンスターを倒すの飽きてきたからゴロゴロしてたらイベントの時間が終わったっぽくて、気がついたらここにいた」


 「な、なるほど………?」


 理解はできない。理解はできないが納得はできた。要は私と同じようなタイプということだろう。初期リス関係であったり今回のことであったり、このゲームの運営にはもう少し頑張ってほしいところである。いや、こんなすごいゲームの運営を少しの不具合はあれど大きなバグもなく運営しているのは十分すごいことなのか?


 「じゃあ話を戻すけど、やはり移動しようと思うんだ。で、今の最前線の町?的なのってどこだかわかるかい?」


 コホンと一つ咳払いして少し横道にそれていた話を修正した私にリュティは少し考える仕草をした後


 「多分、今発見されてる中で一番新しい町はツヴァイの北にあるドライの町と南にあるフュンフの町だと思う。………でも、なんかこの国の首都?的なのがツヴァイの町で、そこが一番おっきいから一番人がいるのはそこ………かも?」


 「ん?ドライとフュンフ?ドイツ語ならフィーアを飛ばしてない?」


 「え?何が?」


 「いやほら、とのゲームの町の名前ってドイツ語の数字じゃん?だとしたら順番がおかしいなって」


 「へー、ドイツ語なんてよく知ってるね」



 「………………よし、ツヴァイの町に行こう」


 純粋そうな顔で感心したようにそう呟くリュティの言葉に少々古傷が刺激された気がしたが努めて冷静に目をそらし精神を安定させながら言葉を返す。この話題にこれ以上触れ続けるのはまずい。



 「ああ、それとこれからパーティー?的なのを組むにあたってリュティのスキルとか、戦い方についてある程度知っておきたいんだけどいいかな?ちなみに私は基本的に「隠密」からの「不意打ち」がメインだけど、「スラッシュ」や「付与」系も少し使える感じかな」


 急遽用意した話題であったが、パーティープレイにおいてはかなり重要な話だろう。咄嗟にこんな話題が出てくるなんて流石私である。


 「ん、私は大剣系のスキルはいろいろできる。攻撃も防御も、衝撃波も出せる」


 「なーるほど?そういえばなんで大剣を使ってるの?リュティは私と同じロリ体型というか、目算140センチくらいだと思うんだけど、その体で1メートルくらいの大剣を振り回すの大変じゃない?」


 「うん、でもリアルと違ってSTRを上げれば振り回せるし、人を切り潰すのは楽しい。」


 ひえ、切り潰すってなんだよ初めて聞いたけど凄まじく怖い単語なんだが!?


 「ほ、ほう。切り潰す。ね、ははは……」


 「?」


 怖いよ。その純粋そうな目で首をかしげているのが尚の事怖いよ!!



 「あ、そう言えばリュティ、ユニークスキルって知ってる?」


 話題の転換がてら、この際だから疑問に思っていたことすべてぶつけてしまおうと思ってユニークについて聞いてみる。

 なんかさっきから話題をふるたびに微妙な雰囲気になっている気がするが気のせいだろう。


 「ユニークスキル………詳しくは知らないけど、「怠惰」ってやつなら持ってるよ」


 ほう、「怠惰」とな?私のやつが「憤怒」であったからもしや七つの大罪を冠していたりするのだろうか?


 「「怠惰」………ちなみにどんな効果なの?」


 「んと、なんか得られる経験値が1.3倍になるらしい」


 ほうほう………………ん?


 「1.3倍?」


 「うん」


 「え、常時?」


 「うん」


 え、クッソ強いな!やっぱりユニークは壊れスキル。そう再認識できた。


 「すっごい強いね…………ちなみに私は「憤怒」ってユニークスキルを持ってるよ。ところで、私はこのスキル、初めてPKしたときに貰えたんだけど、リュティも「憤怒」もらえたりしなかった?」


 「ううん。私の時は何ももらえなかった。「怠惰」も気がついたら増えてたやつだし」


 そうなのか。ユニークというくらいだから、一人しか持てないとかあるのかな?それはそれで特別感があるから大いに結構なのだが………謎は深まるばかりだ。

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