第37話 鬼神の柔肌柔い肌
ドゥルグ村の付近の荒野では激しい戦闘による轟音が鳴り響いていた。
例の鬼神ことデカ角美女であるが、彼女は武器といった武器を使わない故にほとんどが拳と爪を使った物理攻撃なのだが、これがもうびっくりするくらい強かった。なんと真竜人の前衛10人+私と正面からやりあえているのだ。しかも定期的に後衛の真竜人の皆さんが放つ「竜の息吹」や恐らく魔法系であろうスキルを食らいながら。もうね、何というかね、やばいよね!
戦闘開始から30分弱。奇跡的にというべきかこちら側にまだ死人は出ていないが、MPやHPはじりじりと削られつつあった。
「ラガラッハ!!」
他の真竜人の攻撃と合わせてこの戦闘が始まって何度目かのスキルを放つ。「隠密」からの「不意打ち」コンボは早々に諦めた。というのも、この鬼神さんには私の隠密が効かない。つまりレベル8以上の「感知」を持っているのだ。今までなんだかんだ破られなかった私の隠密が破られたことには多少のショックは受けたが、それよりも戦いの序盤にいつも通り隠密を使用して近づいたはずなのに何故か鬼神と目が合って攻撃されたときの恐怖の方が大きかった。怖すぎて思わず悲鳴が漏れてしまったし。………誰も聞いてないよね?
ガキンという音とともに私のスキルと何人かの真竜人の攻撃がはじかれるが、後衛の攻撃がいくつか鬼神に着弾する。そこからかすかにダメージを受けた鬼神の反撃を中衛のサポートを受けながら何とか凌ぎ切り次の攻撃につなげるのだ。
そんな攻防を三十分も繰り返しているのだが、まだまだ長期戦になりそうである。私はこの中で唯一のプレイヤーとして主人公らしく地形を使った高IQな作戦を思いついたりピーキーこう火力ロマン技をぶち当てることによる戦局の好転なんかができればいいなーとか考えながら戦っているのだが、そんな頭も技も持っていない。強いて言うのであれば「憤怒」と「竜化」はまだ使っていないが、使ったところで多少前線でアイツとやりあえるようにはなるだろうが討伐には至らないだろう。なんにせよ、こちらには圧倒的に火力が足りない。
いや、これだけ真竜人がそろっていて火力が足りなくなる鬼神がおかしいのだろう多分。見た目はそこらの血色のいい乙女の肌と変わらないのに「竜の息吹」受けてかすり傷しかつかないとかいうチート防御力だし。
ところで、あの肌は、というかあのたわわな胸は触ったらやはり防御力相応に固いのだろうか?それともやはり柔らかいのだろうか?ちょっとお姉さんに触らせてごらんなさい、ほらほら。
戦い続けで集中力が下がっていたのか、それともこちらのHPとMPが削られていたせいか、最初の犠牲者が出たのはそんな時だった。
「ぐっは………っ!」
そんな呻き声とともに鬼神の攻撃をまともに受けた真竜人の一人が吹き飛ばされる。
「まずいな………」
このままでは戦線が崩壊してしまうかもしれない。正直今吹き飛ばされたのはあまり話したことのない真竜人だったが、ドーラのように知り合いの真竜人が被害にあうのは何としてでも避けなければならない。幸いと言っていいのかドーラは中衛を担当しているが、とても安心はできない。
しかし相手も確実に削れているからもう少し何かあれば………うん、わからん。アニメやラノベの主人公ってなんでこういう場面で起死回生の作戦とか思いつくんだろうね。私にはない脳みそを持っているんだなきっと。
まあいい、ピンチならば私にできる最大限をここで切るとしよう。
「「竜化」、「憤怒」」
竜化により翼と尻尾がめきめきと生え、上昇したステータスを憤怒でさらに倍にする。今まで使用したことのないスキルの組み合わせと未だかつてない急激なステータスの上昇により全能感が体に満ち、それに呼応して否応なくテンションがぶち上がる。
「ふふふ……私最強ぅぅぅう!!!」
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