第36話 対話は知的生命体の特権だよね?
「鬼神が来た」という報告を受け、目をやればそこには荒野の中を悠々と歩いてこちらに来る女性が見えた。もちろんただの女性ではなく、その頭部からは少々アンバランスな大きさの角が生えていたのだが。
これに対し私は少しばかり驚いた。というのも、てっきり鬼神とやらは大きな怪物だとばかり思っていたのだ。だが、言い訳をさせてほしい。これに対して私は悪くない。その主な理由として今ちょうど目の前で展開されている陣が関係あるのだが、その陣とやらが前衛10人、中衛9人、後衛15人の布陣なのだ。こんなものを見れば誰だって最低数メートルはありそうな巨大な何かと戦うと思うだろう。故に私は悪くない。
さて、ところで相手は二足歩行人型の美女である。もっと言えば、見るからに高度な知的生命体である。さっきまでは鬼神を知性の少ない大型の魔物だと思っていたが、話し合いによる円満解決などもできるんじゃないだろうか。だってほら、真竜人の皆さんガチだし。なんか目を細めて睨んでいる人もいっぱいいるし、ビビるよね。うん。
ということでとりあえず話しかけに行ってみよう。
「あ、アヤ?何してるの?」
鬼神に近づこうとしているのを察知してかドーラが声をかけてくる。
「いや、ちょっと話し合ってみようと思ってね」
するとドーラは慌てたように静止してくる。
「いやいや、無理だって。相手はあの鬼神だよ?というか、真竜人なんだから「竜眼」で見れば相手がそういう次元の存在じゃないことはわかるでしょ?」
おい、竜眼ってなんだよ。
口ぶりからすれば真竜人には備わっていて当たり前のものであるようだが。あいにく私にそんなスキルは───お?スキルポイントを使えば獲得できるらしい。まあレベル60から100までめんどくさくてポイント使ってなかったから余裕はあるな。よし、取得っと
これで使えるのかな?
・竜眼
対象の生命力、戦闘力のおおよそを測ることができる
なるほどなるほど、まあとりあえず「竜眼」起動。
「うわっ、眩しっ!」
鬼神に向けて竜眼を発動した瞬間まばゆい光に目が襲われた。どうやらこの竜眼とやらは相手の戦闘力や生命力を光として映してくれるようで鬼神の放つ光のあまりの眩さに目がくらんでしまったらしい。
というかこれあれだな。多分真竜人の人が睨んでいたのって眩さに目を細めていただけだな多分。たまらず竜眼を解除しながらそう思う。
さて、しかしだ。確かに鬼神がとてつもなく強いことはよくわかったのだが、それとコミュニケーションがとれるかは別なのではないだろうか。というか、ここにいるのは私以外みんなNPCだから死んだら死んでしまうはずなのだが、皆覚悟決まりすぎだと思う。竜眼ついてるよね?
少なくともこのメンツで鬼神と戦いたくないと思った私はドーラが制止するよりも早くまだ距離がある鬼神に近づき話しかける。
「あの、すみません。ちょっといいですか───ドゴォ!
「っぐ!」
問答無用で攻撃された。というか、攻撃を受けたら死ぬと思っていたのだが、まだ体力が4割くらい残ってるな。私強い!
「あの!なんで攻撃してくるんですかね!?」
叫ぶと拳が飛んできた。今度はかろうじて回避できたが今ので確信する。うん、和解は無理だな。
それが分かるや否や全力で後退し真竜人の陣まで下がる。
「ちょっとアヤ!何やってんのさ!?」
「いやー、何とか和解できないかと」
「四大特異点はそういうんじゃないんだよ!!」
「どうやらそうみたいだね」
他の真竜人たちも私の奇行に最初は驚いていた様子だったが、すぐに目の前の鬼神に集中する。いろいろわからないことが多くて一旦考える時間が欲しいところではあるが、どうやら戦いは避けられそうにない。
こんな戦闘があるとわかっていればスキルをいじっておいたものを………今からちょっとスキルいじって来てもいいかな?
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