第21話 ネーミング
「ねえ、アヤなんであんなの仲間にしたの………?」
先ほどの変態さんを仲間にしたことがよほど気に入らなかったのか、リュティがそう抗議してくる。
「はは、奴隷を仲間と呼ぶかは置いておいて、彼を仲間にした理由は、私もあのギルドとかいうやつを作ってみようと思ってね。人数が欲しかったんだ」
「えぇ、初耳」
「ごめんね?急にやってみたくなっちゃって。リュティが嫌ならやめるけど………」
「そこまで言うならまぁ、いいけど………」
未だに納得しきれていない様子のリュティにそう聞くと、渋々ながらも納得してくれたようだ。実はただただ強キャラムーブをかましたかっただけなんて言えない。適当にでっち上げた理由であったが何とか納得してくれてよかった。
さて、しかしさっきのは楽しかったな。相手の人数が人数だからそれなりに緊張感もあってかなり良かった。できればまたやりたいものである。………もう片方のPKギルドもやろうかな?
「ねえ、もしかしてその場のノリと勢いであんなこと口走ったの………?」
「ッ!?え?いやいや、なんでそう思うの?」
まさかッ!私の心を読んだ!?そんなことが………ッ!
ジト目を向けてくるリュティに両手を上げて降伏を表現しつつ、この付き合いの短さで私を掌握しつつあるリュティの能力に戦慄していると、でも、とリュティが続ける。
「まあでも、ギルド?っての。いいと思うよ。さんせい」
おや、こちらは意外にも好評のようだ。ならばもう懸念点はない。いや、嘘だ。全然ある。流石にまだまだメンバーが足りなさすぎるため、何とかしなければならないな。
………そう考えると少しめんどくさく……いやいや、とりあえずやってみようじゃないか。
「に、しても。この人数だとギルドよりもパーティー、だね」
「確かにね。パーティーならパーティー名の一つでも決めたいところだけど………案はある?」
「ん、そんな時こそ奴隷を使ったら?」
「ふむ、そうだね」
出てきたばかりで引き返すのは少し恥ずかしい気もしなくないけど、名前を決めるということに少なからずテンションが上がっていた私はさっそく奴隷に聞きに行く事にしたのだが。
「
「却下」
「ださ………」
奴隷が出した案を即座に却下する幼女二人。いや、頼んでおいて何なのだがこの男のネーミングセンスは想像以上のものがあった。エピオは結構かっこいいと思っていたのだが、聞けばギルドメンバーが決めたのだそうだ。
「にしても、ゼウスオーディンはないだろう。なんで北欧神話とギリシア神話を混ぜたんだよ………というか、漢字が全知全能ならルビはゼウスだけでいいんじゃ………」
「神話とかよくわからなかいんすけど、詳しいですね、リーダー!!」
「ぐっっはぁ!!」
「り、リーダー!?」
「だ、だいじょうぶ……?」
『あ、紋ちゃんって難しいこといろいろ知ってるね………』
古傷がッ!!古傷が痛む!!くっそ、この奴隷こんなに攻撃力の高い武器を隠し持っていたとは………ッ!!!
「と、とりあえず奴隷に任せるのはやめよう。リュティ、何かいいのある?かっこいいので」
我ながら無茶ぶりだと思うが、リュティはかわいい顔を顰めながらうんうんと考えてくれる。あ、諦めた。
「では、私から出そうか!臥竜天昇と書いて「がりょうてんせい」でどうだろうか!!!」
「え……うん、いいと思う………よ?」
「リーダーも人のこと言えないんじゃ………」
奴隷が何か言ってるが、きっとこのかっこいい私のセンスに恐れおののいた末に出た賛辞の言葉か何かだろう。決して惨事の言葉ではないはずだ。
「まあ、もう決定だから。私たち臥竜天昇ね?」
「え?」
「いや………」
「ん?どうした副リーダーと下僕一号」
何やら言いたいことがあるようなので話を聞いてやる。それが臥竜天昇のリーダーとしてのはじめの任務だろう。
「副、リーダーッ!!!」
「げ、下僕………ふふふ、あの口からまさかそんな言葉が………」
ふむ、二人とも目を輝かせて嬉しそうにしているが、そんなに名前が気に入ったんだろうか。とすればやはり言いたいことはこのセンスへの賛辞だな。うむ、そういうことにしよう。
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