十四番
もう孤独で泣く必要はない
僕が、きみを鎮守しよう
……うるさい、目障りだ
無用の産物となって
消えゆくのか
……勘違いするな、
我は
すなわち、人間の願いは
聞き入れないと云うことか
……
人間の願いは聞き飽きた
我に感情論は通用しない
若き天比古は、「ふうん」と息を吐くと、しばらく沈黙した。いくら捨て置かれたとはいえ、
さて、朝から出版社へやってきた三鏡は、帝都あやし編集室の扉を軽く叩き、ひとり残された
「ちょうど、桜木くんから取材時の
「通りがかっただけです。蔵持の
「急な天候不良に見舞われるとは、自然を信仰する
「
背もたれに自重をあずける室長は、ほんの少し眉をひそめ、三鏡の後方へ視線を向けた。古びた書棚が見える。日和見に十四番の姿を目視することはできないが、三鏡と書棚のあいだに、なにかの気配を感じた。
「……天比古くん、旅をするさいは、落とし物に気をつけるんだよ。荷物も、少なめでいい。なにもかも、ひとりで背負わなくてすむからね」
日和見の忠告には、裏に意図がある。だが、三鏡は小さく笑みを浮かべ、編集室を退出した。すると、室内の空気がふわりと軽くなったような気がした。
〘つづく〙
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます