続・三鏡という男
資料室で必要なものをさがす桜木は、あとからやってきた高尾に、手の届かないところに積んである木箱を取ってもらった。
「ありがとうございます、高尾さん。おかげで
桜木は差しだされた木箱を両手で受けとり、
高尾は長身を
「
「におい……、もしかして……」
怪訝な顔をする高尾に、蝙蝠傘の男の話をした桜木は、踊り場で相手の名前を確認していなかった。
「ほう、とんびコートの彼に逢ったのか」
「はい、そうです。おれの顔を見て、
「
現在の日本に財閥はなく、事業を受け継ぐ企業は残っている。財閥とは、
「それでは、さっきのひとは、
「
「そんなひとが、どうして出版社へ」
「自由気ままに旅にでて、立ち寄った土地の人々から聞いた話や実際に自分の目で見てきたものを、
現地に
「なんでそんな
「単なる物好きでは終わらないのが、三鏡という男の特徴でね」
「どういう意味です、それ」
木箱の中身を確認する桜木は、手をやすめて顔をあげた。紳士ふぜいの高尾は笑みを浮かべ、「さてね」と、見解をはぐらかす。一瞬、桜木は変な顔をしたが、資料室に他の従業員がやってくると、高尾は先に編集室へもどっていく。
「……なにしに来たんだ、あのひと」
資料室に用があったふうには見えなかったが、桜木は細かいことを気にする性格ではないため、本来の目的を優先した。探しものは
三鏡と出逢ったこの日から、桜木の日常は
〘つづく〙
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