第二章スタート
明治時代、カタカナまじりの漢文で、活版印刷にて編集された雑誌がいくつか出版されている。この時期に編集責任者として[帝都あやし]を創刊した
「
鼻筋に細ぶちの丸眼鏡をかけている
「
姿勢を正して墨を
「なんだい、桜木くんも高尾くんも、ずいぶん
日和見は前髪をゆらして椅子の背もたれに寄りかかり、つまらなそうな顔をした。
まぶたを閉じて風の音を聞く日和見は、「ああ、そうだったね」と、なにかを思いだし、フッと笑った。
「室長、ぼんやりしている暇があるならば、代筆をお願いできますか。あ、これ、
「蔵持か……。たしか、旅籠の
「はい。なんでもその女将は、もともとは旅籠の下働きで、蔵持家とは縁もゆかりもない他人らしく、大旦那におもねって、息子の
試し書きをする高尾は、筆をもつ手を動かしながら、室長と桜木の会話に耳を
「それはまた、たいそうな出世をした女中だね。しかしなぜ、その女将は客の男に
「室長、朝から下手な勘ぐりはやめてください。断じて、そのように
「では、どのような
「ですから、こうして代筆をお願いしています。そちらの
桜木は資料室に用があるといって、帝都あやし編集室を退出した。あとに残された日和見は、机に置かれた紙片を手に取り、蔵持家の事情に目をとおした。ひろげた巻紙に筆を
雨がふっている。黒色の
〘つづく〙
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