めざましきもの
鹿島屋に
「お
「かしこまりました。道中お気をつけて、いってらっしゃいませ。……
「はい、精進します」
風呂敷包みを持つ結之丞は、ぴしっと背筋をのばした。田宮の屋敷に向かう若旦那のお供をするのは、きょうで四日目になる。田宮
親戚筋の娘をもらった正字郎は、軍人として国家に忠誠を誓う、誠実な男である。歳は二十六にして、
「
「もちろんです。最後まで尽力させていただきます。……きょうは、こちらの薬を追加で置いていきます。かならず、使用量を守ってお使いくださいね」
風呂敷包みをひろげる若旦那は、あらかじめ調合した漢方薬といっしょに、安産祈願の
おとなしい性格の菊世は、少年の結之丞が足もとへ
屋敷の客間へとおされたふたりは、使用人が運んできた抹茶と南蛮菓子をいただくことにした。湯気のたつ茶碗を神妙な顔で見つめる少年は、菊世と母親の姿を
心の底にある隠しごとは、いつか露見するだろう。結之丞は長考におよんだが、向かい合って坐る千幸はなにも云わず、渋い抹茶を静かに口へ運んでいた。
〘つづく〙
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