ゆゆしき身なれど
──世間ではいろいろ云うけれど、
田宮家の帰り、結之丞は聞き覚えのある声に足をとめた。鹿島屋の垣根と
「行ってしまった……。今の人、誰なんだろう……」
どこかでいちど
人目を避けて勝手口から若旦那を寝室へ運びいれた慈浪は、布団のうえに躰を横たおらせると、着物の帯を
「おまえはいったい、
──そう、あわてちゃならんよ。起こるときには起こるってのが世の
なにを云う、それはならん。よいか、この件に関しては
大旦那と抄子のあいだに、子どもはいなかった。千幸は、どちらの血筋ももたぬ養子などではなく、大旦那が
ほかの誰でもない。ずっと、慈浪が育ててきた。今も
「おまえは、おれの子も同然だ」
鹿島屋に身を捧げる慈浪の真意は、大旦那への忠誠心によるものではない。
〘つづく〙
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