丁稚の一日
おかしな夢を見ただけでなく、自分の手足が勝手に動いて
丁稚とは、商家の主人に衣食住を保証してもらい、一定の期間、無給で下働きをする年少者である。盆や暮れなど、とくべつな行事の
薬種商の鹿島屋では、
「ねえ、あんた。田宮家でのお産に立ち合ったんだってね」
台所
「赤ん坊が生まれる瞬間って、どうなの」
「わかりません。自分は途中から眠ってしまって、おぎゃあという産声で目が覚めました」
「なあに、まぬけな話ね。でも、若旦那さまは立ち合ったのでしょう」
「はい……」
「それにしても、
まだ二十代手前の台所女中は、嫡子を出産したことで正妻の肩書きを手に入れた
「あたしも玉の輿になりたいわぁ」
女中は云うだけ云って満足したのか、洗い場のほうへ向かった。すっかり手を止めていた結之丞も、番頭に見つかって叱られる前に、バタバタと足を動かし、廊下の床拭きを再開した。
奉公人の朝餉は、お茶漬けが基本である。昼は麦飯に味噌汁、おかずの
〘つづく〙
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