芝居
頭はぼうっとして、背中が痛い──。若旦那に
耳が
「
「結構なお点前だ。
「滅相もない。
慈浪は、気の抜けたような顔で坐りなおす千幸を、ちらッと見、退室した。湯呑みを口に運ぶ雨士の気分は、もう
「自信を持たせてやりたかったのだが、どうやら無用のようだな。気の利かない男と二番手ほど、まぬけなものはないからのう」
雨士は笑い声になり、番頭のふるまいを高く評価した。なりゆきに身をまかせていた千幸は、なにをされても受けいれる。そうすることが、いちばんだと思っていた。自分の余計な感情こそ邪魔だった。
「繁盛しているようで、なにより」
「……恩に着ます」
千幸は苦心して笑みをつくり、慈浪が置いていった湯呑みを見つめた。胸がざわざわと騒ぐ。若旦那が本家に求めるものは、目こぼしなどではない。雨士の脅しに挑戦するくらいの心境は必要だが、芝居を見破られては本末転倒である。千幸は何事もなく談話を終わらせると、雨士の帰りを見送った。
〘つづく〙
※当方の作品を少しでもお読みくださっている方々、いつも誠にありがとうございます。なかなか更新できず、申しわけございません。
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