第2話 暇と学業を全うして
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私、風見 日向子の中学時代の話をしよう。
栄光ある孤立を選ぶがまま、人と関わることが苦手な私は、普段から林のように静かに、知りがたきこと陰のごとく目立たぬようにしながら数年先を見据えて勉強し、時折遊び心を加えつつ、好奇心の赴くままに行動した。
誰とも関わらず、部活動に所属せず、塾にもいかず、当然仲良しグループには入れてもらえず……ああ、とっても快適なボッチライフを満喫したのさ。
当然のようにボッチの特権である、あり余った時間を有効活用し、例えば静かで居心地のいい図書室に引きこもれば、そのうちここの本に関して司書さん並みに詳しくもなったのが、小さな小さな私の誇り。
時に頼られるのは構わないものの、ほんの少し嬉しい反面、正直鬱陶しかったな……。
それからというもの、図書室に入ればすっかり顔馴染みとなった司書さんの代わり、あるいは図書委員会の誰かの代わりとして、度々頼られることに辟易した私は、図書室に引きこもる頻度を減らし、陰で囁かれた主の称号を返上。
小さな小さな私の新たな居場所として目を付けたのは、小さいようで広い広い外の世界。
それまでと打って変わって外に飛び出した私は、体力作りと暇潰しを兼ねてフォレスト・ガンプのように駆け回れば、最初は息絶え絶えと言う情けない有り様だった。
元々運動そのものは苦手ではなく、むしろ武術を嗜んでいたというか、小さな小さな私の身を護る手段として、有段者である私のおばあちゃんから手解きを受けていた。
おかげで小さい身体でありながらも、大きな自信を持てる程度には上達したものの……今は現役じゃあないし、体力は人並み以下まで落ちこぼれた。
しかし、それで挫けるような私ではなく、一度自信を持ったことで得た負けん気、根性はなくなる訳じゃあないんだよ?
なによりも私は、私自身に負けるのが嫌なんだ。
小さな小さな私の目の前に立ちはだかる、大きな大きな壁を乗り越えるべくして、折れることなく挑み続けていくうちに、身体はとても軽くなり、まるで映画の中で風になったフォレスト・ガンプそのものだった。
小さな小さな私だけど、壁が高かろうと関係なく立ち向かえば成長するものだ……もっとも、身長はちっとも伸びなかったけどね?
それでも諦めずに続ける暇人そのものである私は、毎日のように駆け回ったことであるときから、風のようになった噂の主となる不審者っぷりに、また何か面倒くさい事が起こるのでは?
そう頭に過れば当たるも八卦、当たらぬも八卦な私の直感を頼ればどうなるか?
何とも言えない胸騒ぎをお供にした数日後、どうも嫌な予感だけは当たるらしく、おまけに身長が伸びる気配すらないね?───。
◇
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