◆ヘザーの獣王◆

  ▶作者からの一言◀


 ◆~~~~◆のタイトルは本編のサイドストーリー、または、パラレルワールド、もしくは、アナザーエンディング(ノベルゲーなら 終 的なヤツです笑)みたいな感じの話です<(_ _)>


 今回は主人公がルッツ達に折れてしまった世界線の話です。

 ぶっちゃけ、ハッピーエンドです。

 何か無駄に長くなっちゃったけど…正直盛り過ぎた!

 書き手が爆発して欲しいほどのハッピーエンドです(念押し)


 因みに、ルッツは本編でも公式なヒロイン枠です。

 今回の話で登場したキャラクターも更新が順調に進んだ暁には…再度登場する可能性があります(恐らくまるで別キャラだと思いますが笑)



  (‥)



「……遂にやっちまったなあ」



 俺は自ら下した決断と行動に対して、今更ながらしみじみと感嘆とも呆れともとれる溜め息を吐いちまったぜ。



 俺……異世界テスター闇バイト、辞めちゃいました。


 思えば、この現実離れした三ヶ月。

 長かったのか…短かったのか…。


 あの日、結局ミルファまで辿り着いた俺はルッツ・タム・ニコちゃんとお別れするのが辛過ぎた結果。

 見事に彼女らに森に連れ戻お持ち帰りされてしまった。


 いや、自分がそう望んだんだけどな?


 だって…見た目満点、強さも十二分(物理に偏ってはいるが)、そして夜はリア獣(正直、もう少し余裕が欲しい)の御三方へ俺が文句をつける点などないんだもん。


 それにこんな三十路中年をゲットしてあんなに喜んでくれるんだし…ねえ?

 現実世界との落差がさあ…もう耐えられねえよってのが本音です(涙)



 結局、研修期間である七日間は彼女らとイチャイチャして楽しく過ごすだけで終わって無事帰還。

 カイドウとルリちゃんとも現実世界で再開を果たしたが…正直、カイドウはどうでもいいんだがね?

 俺と比べて遥かに苦労したルリちゃんには申し訳なさが有り余って心が常時痛かったなあ…。



 で、その後。



 改めて異世界テスター業務一週目、二週目と…何も問題なく俺の異世界生活は続いたわけだ。

 だって、俺は基本夜の相手だけで他はルッツ達がほぼ解決してくれるんだからね!

 完全に異世界中年ヒモ男と俺は化していた。

 というか、普通に獣人にとって発情期間的なものが終わったらしいけど、ルッツ達は多少の強弱・・はあるものの普通に毎日俺を裸にしてきたよ。


 ケモ耳美少女達の性欲が強過ぎる……けど、嫌いじゃない。

 これは確実に俺のユニークスキル【種男】の恩恵である。

 現実世界じゃ、やはり並であったことからも確定事項だな。

 まあ、現実世界にはそも検証相手がいない訳であるからして…やや、検証不足ではるかもだが、やはり異世界の俺の底知れぬ精力はもはや別次元のものにすら感じる。


 毎週与えられるノルマ(クエストボードのアレコレ)もルッツ達の協力で楽々クリアーだし、現実世界での給料(換金)もウハウハだった。



 が、そんな風に浮ついていられらたのも束の間だった。



「……え? あ、赤ちゃんができたの? マジで?」

「うム! 正真正銘、ルッツとシドのダ!」



 そう自慢気に膨らんだお腹を俺へ扇情的に見せるルッツ。

 

 ……や…やっちまったああああぁ~(orz)

 俺は膝から崩れ落ちる。



 異世界へ来てから早いもので三ヶ月が経っていた。

 ルッツ達と一緒に狩りに行ったり、相変わらずデルムーンからやってくるならず者共の拠点を幾つかぶっ潰したり(※基本、俺は留守番で返り血で血塗れになったドヤ顔三人娘の帰りを待つ感じですけど何か?)、他の流れの女獣人の群れとかち合って、ルッツがその群長と俺を巡って戦ったりとそこそこ色々あったんです。


 で、そんな折にルッツからのサプライズ報告だったんです。


 そりゃあ避妊なんて概念がそもそもこの異世界にあるかどうかすら微レ存だったし。

 そもそも、人間と獣人との間にそう簡単に子供は出来ないって…そう言ってたじゃん!?


 …だが、その割には結構いるんだよなぁ~?

 その混血児とその末裔があの追放ラウルフの村に。


 おっと、そんな言い方をしたが現在ヘザー地方に舞い戻った俺は週一か隔週で村を訪れるくらい付き合いがあるんだ。

 めっちゃ仲良しですから安心して下さい。

 

 確かに。最近あれほど俺を独占してたルッツが暫く夜の相手をタムとニコちゃんに譲ってたしさ?

 未だ、寒くも無いのに急にゆったりとした服?(※ルッツ達は基本半裸だから違和感はあったが…俺に合わせてくれてるのかと思ってた)を着込んだりしてたしなあ。


 しかも、獣人は妊娠から出産まで半年掛からんくらいのハイペースらしいんだわ。

 ……まさに獣よ。

 下手したら、三人目の年子だっていけるんじゃね?


 …………。


 だが、こうなったら俺は…せめて、男として責任・・を取らねばならん。



「…わかった。こんな事言うのも今更だが……――俺、ルッツのオスになるよ!」

「…~~ッ❤!? シドォ!!」

「ちょまっ」



 その日は一日中……その…激しかった。



 で、問題は今後どうするかって話でな。

 俺はもうルッツ達と添い遂げるって腹積もりだったし、現実世界に未練も余り感じなくなっていた。


 うんうんと考えても二進も三進もいかなくなった俺は結局、七日毎の帰還の際に異世界テスターの闇バイト上司である女神ヘレスに辞職を懇願した。



「う~ん…なるほど」

「…………」

「いいですよ?」

「へあ!?(※光線はでません)」



 意外にもアッサリと承諾して貰えた。

 だが、以下の条件つき。



 ☝現実世界の生活も財産も名すら捨て、異世界の住民として生きること。


 ☝スマホモドキ(オ●ホ)没収。これにより、少なくとも今迄使用できていた各アプリ(アイテムボックス・鑑定・種メイカー)が使用不可。


 ☝他の異世界テスターとの接触を禁ず(俺自体に女神ヘレスから不干渉の呪いが掛けられてしまう模様)


 ☝可能な限り、信仰心(※女神ヘレス推奨)を持って生きるよう努めること。


 ☝現役である限り、毎年子供を設けること(!?)



 五番目の条件が謎過ぎる。



「正直、あなたにはもっと期待していました。あっと、勘違いしないで下さいね? 正確にはもっと私の世界により広く刺激物・・・を蒔いて欲しかったんです……ですが、まあいいでしょう。 ――…結果として、獣人にやや偏った世界になってしまうかもしれませんが。それはそれで面白い」



 最後は独り言のように呟いて薄い笑みを浮かべる女神様は恐ろしいほど美しかった・・・・・



 こうして、俺はカイドウやルリちゃんにはキチンと事情を説明して別れを告げた。

 ルリちゃんは少し泣いてしまって、カイドウからはひたすらに俺に対して呪いの言葉を吐かれたけども。


 疎遠だった実家には“結婚しました。外国で幸せに暮らします”的なことを書いた葉書を出しといた。

 序に、異世界テスターで稼いだ金を全部送っといた。

 少なくとも学費は還元できたはず…せめてもの親孝行だ。



「…さよなら」



 俺は虚空か、それともまだ見えぬ“異なる地平線”に向ってそう呟くと、ルッツ達と他多数・・・が待つ新しい家族の下へと振り返った…。



  (*)



 私の名はフィレン・グミアー……二十三歳の独身。

 大陸中央を統べる聖国サンブライトの法服貴族、グミアー家の三女です。

 代々、我らグミアー家は聖国の文官に就く血筋。


 そして、私はその聖国ばかりか、生家であるグミアー家からもいいようにコキ使われてる…言わば、味噌っ粕パシリストです。

 なのでこの歳になっても仕事ばかり押し付けられて、良い男をこれ見よがしに侍らして尻を撫でる長姉や娼館通いに狂う次姉と違ってまだ男の人の手も握ったこともない…そんな可哀想な苦労人が私です。


 そんな私が聖国からアクアント…いえ、正確にはとある一大勢力・・・・への特使として赴くという人生最大の苦労ごとを背負わされています。


 正直、吐きそう。


 だが、折れるわけにはいかないのです。

 私の細腕には聖国の…いいえ! 世界の命運が懸かっていると言っても過言ではありません。


 何故ならば私に任された任務とは停戦・平和交渉に他ならないからです…!



 ここ、数年で私の生きる世界は……大陸の情勢は大きく変わってしまいました。

 


 七つの国の内、二つの国が滅び。

 更に最悪なのが、長年属国扱いされて搾取され、中央へ長年不満を抱いていたマッドダムが聖国への反旗を翻しています。

 しかも、本来同調するはずのない因縁深いリーフデンのエルフ達までもが足並み揃えて聖国へ牙を剥き挟み撃ちにされるように攻められているのが現状です。

 また、こんな戦時に永世中立国を謳うゴールドワーフのドワーフ達は“中央の連中と飲む酒は不味い”などという一言で中央への支援を拒絶し、これから私達が向かう総大将・・・と喜んで握手を交わしたという……どうにも、今迄の中央が行ってきた悪行を清算させられていると痛感に耐えません。

 

 ぶっちゃけ、私は口が裂けても公言出来ませんが…大陸の民は中央の悪王と貴族に滅んで欲しいのでしょうね。

 その中に私も含まれていなければ私も諸手を上げて義勇軍に参加するのですが。



 ……いえ、その義勇軍。

 件の総大将と呼ばれる人物なら先程から私の隣にいるんですがね。



「……貴様。何か良からぬことを考えているのではなかろうな」

「いえ…決してそのようなことは…」



 遥か頭上・・・・から掛けられた声が、私の枯れ枝のような貧体を容赦なく揺さ振りました…。


 私の後ろに続く、荷運びも兼ねた聖国騎士達の鎧がひしゃげるかのような音まで聞こえてしまうくらいです。



 正直、漏らしそう。



 ――主に聖国憎しで集まった獣人で構成された恐るべき義勇軍。

 その総大将…世界最強の獣人と畏怖され、敬われる大英雄が獣人フェンリル。

 バリバリと雷雲のような威嚇音と共にプラチナの毛皮が大嵐のようにうねって揺れています。


 身の丈五メートルを優に超える巨躯。

 神通力と噂されるほどの魔法の技と超能力を誇るラウルフの変異種。


 どんな分厚い金属城壁も、万を超す大軍隊ですら単独で容易く破り、屠る怪物の中の大怪物。


 ヘザーの“首狩り女王”と呼ばれる女傑を母に持ち、大陸全土から集まった獣人兵を率いる獣王です。

 

 因みに、そんな彼には及びませんが同等の超能力を持つ兄弟姉妹が腹違いも含めて百近くいるそうです。


 そんな相手に端から我々が勝てるはずもないのです。

 我ら聖国は女神の怒りをかってしまったのでしょうか?


 二年ほど前ですか…愚かにも、闇国デルムーンが彼らに本腰で喧嘩を売ってしまったのは。

 まあ、見事に返り討ちにあったんですけどね。

 滅んだんですよ? あの糞ムーン。

 現在は仮に隣国たる水国アクアントの預りですが……既に元デルムーンの民達は大英雄を新王として迎えるべく、国名を獣国フェンリルとすることを満場一致で他国に布告していますけどね。


 ですから、現状サンブライトは地国・風国に加えて新・獣国の三方から攻められていてる大ピンチなわけでして…。

 


 ……そして、つい先日。


 余計なことに、その混乱に乗じて懲りずにアクアントに攻め込んだ炎国フレイムスも敢え無く返り討ちにされて国ごと解体されました。

 どうやら、国内に義勇軍のシンパがいたみたいです。

 まあ、圧倒的な彼の力を目にすれば無理もないかと…。


 私達も喉から手が出るほど欲しかった炎国の秘匿魔法技術がそっくりそのまま彼の手に入ったわけでして。

 今回の交渉にはあわよくばその辺のことで聖国もおこぼれを頂けませんでしょうか?といった内容も含まれています。

 ……馬鹿王の馬鹿側近共が、私に問答無用で獣共から簒奪したフレイムスの魔法技術を取り返してこい!



 なんて言ってましたけど? そんなん無理に決まってんだルルォ!?



「もう間もなく我らが本拠地にして、ヘザーの聖地・・となる」

「は、はい…」



 ヘザー自治領・・・へ入って暫く、段々と私達一行を見やる獣人の数も増えてきました。


 中には多種多様な獣人だけではなく、人間(アズマ人まで居る…)、エルフ、ドワーフ、亜人に竜人に見たことがない種族まで混在している悪夢のような光景です。


 隣のフェンリル様達と私達聖国使節団に向ける視線の温度差が激し過ぎて…今にも私は消滅しそうになる思いです。


 このヘザー自治領がほんの十年前まで、人間とラウルフの村があるだけの森ばかりの土地だったとは信じられないほど開拓が進んでいます。

 

 いやぶっちゃけ、聖国よりも遥かに優れた建築物(多分ドワーフ製)が並んでいる様はまさにこの大陸の最先端でしょう。

 それに、アチコチで見掛ける見慣れない精霊偶像…いや、女神像。

 噂に聞くシドヘレス…というこの自治領が発祥とされる宗教ですかね?

 というか、ヘザーのある水国だけじゃなく地国や炎国…既に新国フェンリルでは国教扱いされてますけど。

 無論、聖国では異教扱いですが、獣人族・亜人族からの人気は凄まじいとか。


 しかし…ヘレスとは、大陸?

 大地そのものを信仰してるんでしょうか…。

 まあ、少なくとも人間至上主義の聖国ファースト過ぎる腐れ聖堂経典よりは遥かにマシでしょうけどね。



 それに比べて、我が聖国の見え透いた見栄の虚しさたるや…敗北感と羞恥で胸が潰れてしまいそう。


 恐らく、獣王たる超人の存在なくとも聖国の敗北はもはや明らか…ですっ!



 そんな事を考えて項垂れる私を余所に、彼とその兄弟姉妹が手を振ると万民が歓喜の声を上げます。

 そりゃそうですよね、大英雄ですもんね。


 一方では……。



「チィッ…肥え太った聖国のウジバエ共め…っ! よくも我ら獣人の聖地にノコノコと顔を出せたものだな」

「止せ。フェンリル様とその御兄弟姉妹の御前だぞ? …どうせ、奴らなど。我らが女王とその御子であるフェンリル様、何よりもあの偉大なりし尊父・・様の御力で駆逐して下さる。そう思えば、もはや哀れにすら思える……積年の恨みなどもはや無いに等しいではないか」

「…そうであったな」



 身体中に酷い傷を負っている負傷獣人達が漏らした言葉に私の身体が一瞬硬直してしまいました。


 恐らく、聖国から酷い虐待を受けたであろう彼らへの罪悪感や殺意からではありません。

 

 尊父・・……数ヶ月前に生き残ったデルムーンのダークエルフから聞き出すことでやっとその存在の確証がやっと叶った存在…!


 獣王とその兄弟姉妹の父にして、この異様な勢力自体が…このヘザー自治領を大群長ルッツが治めているのは表向きの姿で……その実、尊父と呼ばれる人物を柱としている――軍団や国といういうよりは、一夫多妻の大家族であるという事実。


 故に、この地で最も尊敬され、守られ、心の拠り所とされるのは私の隣に並ぶ獣王でもなければ、その生母である女王ルッツでもなく……真にあのダークエルフの言葉が正しければ、その存在は単なる人間の――



「おい」



 その一声で私の心臓は凍り付き、破裂します。


 …いや、本当にそうなってくれればどんなに楽なんでしょうかね。

 顔を上げると、その間近に恐るべき銀狼の顔が。


 

 すいません。漏らしました…(心の中で挙手)



「一言だけ、忠告しておく。良いか? ここで貴様らが何を企み、しでかそうが我らにとってはもはやどうでも良いことで、どうでも良い存在なのだ。…だがな、決して私も、偉大な母も、姉妹も、兄弟も、そしてあまねくこの場にいる仲間達が許さぬことがある。……それは、我らが慕う尊父シド・・たばかること。そしるこだ。もしも…そう、もしもだ。我が尊父に無礼を働いたならば……貴様らだけでなく、聖国の連中をひとり残らず――」



 それは、強い魔力を帯びながら白い息を吐く獣王に凄まれていたその最中でした…。



「やあ! おかえり! そちらはフェンのお客さんかい? こんにちわ。距離的には近くなったとはいえ…オツベル様の関所から歩いてきたんでしょ? 街道もだいぶ整備したけど大変だったねえ~。あ…コレ、うちで穫れた果実を絞ったジュースなんだけど。どう?」

「へ? あ…はい? ど、どうも?」



 そこへ急遽割り込んできた人間の壮年男性が。

 そして、手に持つトレイに載せていた飲み物を差し出されたので…私は極度の緊張状態からそれを素で受け取ってしまいました。


 え? てか誰ですか?


 てか、この人…今、私達の目の前にいる獣王に向ってフェンとか呼び捨てにしてませんでしたか?


 ま、まさか!?



「無礼者っ! お前は獣人風情に下った奴隷か? 我らは王命で聖国から遣わされた使節団であるぞ! さあ、早くさがぅぶぎゅがっ!?」

「………っ!?」



 もう手遅れだ。

 随行する騎士もまた聖国の貴族の駄目な部分の影響を多分に受けている。


 獣王を前に半ば恐慌状態にあったのもあるんでしょう…けど、ちゃんと相手を確認してからにしろよ!?

 てか、ここ敵地ぃ!?

 そんな場所でよくそんな偉そうに振る舞えるなあ!?

 逆にコッチがビックリだわ!?


 そして、恐らくこの…いや、もともと無理があるとは思えてならなかったが…停戦と平和交渉は失敗だ。


 私は揺れるジュースの水面に映る自分の顔越しに、獣王が手ずからに潰した三名の聖国騎士の亡骸を見てそう確信していた。


 

 尊父だ……私に気さくにこのジュースをくれた人が。


 

 私は末期の水とばかりにジュースを煽ると「美味しかったです」とお礼を言いました。


 

  (‥)



 俺が異世界に居付いて十年。

 まあ、色々あったわけよ。


 て、基本俺自体は特に何もしてないけどね?


 先ず子供が生まれたよ。

 俺とルッツの子。

 全身キラキラ光る真っ白な毛で覆われた世界一可愛い俺の息子がね。



「シド。最初の仔ダ。…本当は次代ノ長にナル娘がヨカッタガ。…だカラ、守りの願イヲ籠めテ……最モ強イ狼の名ヲ付けテクレナイカ?」

「強い名前? う~ん……フェンリル…とか?(照)」



 何でも群れの長は必ず女獣人(メス)だから、将来男獣人(オス)は他の群れの長に嫁ぐしか基本はないらしい。

 

 はあ!? 絶対やだね!

 うちの可愛い息子をそんな飢えた女獣人の群れになんてやるもんかい!!


 そうして、幸せな時間はとんでもない速さで過ぎていくもんで…。

 たった三年で俺の息子は俺の倍近くまで大きくなっちゃったよ。


 え? …変異体?

 そうなのかあ~…他の子と比べて成長著しいと思ったよ。

 しかも、身体が大きい分だけ寿命も何倍も長いんだ?


 …ん? ああ、他の子もフェンほど大きくなるわけじゃないけど殆ど変異体だって?

 そうなのかぁ~…まあ、皆喜んでくれてるみたいだし…別にいっか!


 そう、他の子…俺の子供だけどもさ。


 あれから十年、現在正妻・・の立ち位置(男女逆転世界だからよく判らんが)にいるルッツは俺との…二十二・・・番目の子供を妊娠している。


 ヤバイよなあ。もうサッカーチーム二つ分だよ、てか試合できるよ?

 平気で年に二、三人産んでるからね。


 そして、当然の様にタムもニコちゃんもルッツほどじゃないが俺との子供を産んでくれている。


 さらにドン! なんとルッツの傘下に入った支族…その獣人達との間にも、血が結び付く事で真に団結するという謎の女獣人達の制度によって俺は子供を設けてしまっている。


 いつの間にか〔性交渉〕のスキルレベルがMAXになっていたし、新たに〔絶倫〕などというスキルにも目覚めてしまったらしい。

 実は、端末画面を見なくてもスキルの修得やらレベルの上昇が何となく判るんだわ。

 何となく、わな?


 恐らくルッツ達三人で既に一学級くらいの数の子供が余裕でいるわけで、加えて狼族以外も含めると一学年…下手したら二学年か…。


 正直、このヘザー自治領は俺の子供だらけである。


 そうだ。自治領になったんだった。

 アクアントの女王はよくできた人でさあ?

 幾度もデルムーンから秘密裏にアクアントを守ってきた功績だってんで、まるまるヘザーを俺達にくれたんだもん。

 ルッツが貴族になるなんて嫌だって言ったからだ。

 だから、仲良く援助し合う仲・・・・・・ではあるが…正確にはアクアント内にある別の国と同義なんだよな。


 決定打は俺が異世界に帰化した二年目に本腰入れて報復に来たデルムーンの連中をルッツとその他大勢(俺の嫁さん達)で完膚なきまで叩き潰したことへの手柄だろうね。


 まあずっと放置するしかなかったくらいだし…そんなんなら、俺達に少しでも開拓させて有効に使って貰った方が良いだろうって話だ。

 あと、あのラウルフの村の人達は正式に俺達の庇護下に喜んで入ったよ!

 そのせいで初めてあの村に尋ねた時に門番してた娘さん二人が新たに俺の嫁(あの村の現地嫁扱い)になりました。


 はあ~…どうなってんだこの異世界? イカレてんよぉ~?


 けど楽しくて仕方なかったよね。

 増え続けるケモ嫁に、毎年毎月自分の子供がポンポン生まれることに思うことはあるにはあるが……。


 だが、そんな最中だったなあ。

 …確か二年前くらいだったっけかな?


 俺の提案で、正式に自治領になった暁に好き勝手始めてさ。

 ヘザーに行き場のない獣人達を呼んで色々と産業を手伝って貰ってたんだ。

 まあ、ボロく儲かってさあ…儲かり過ぎて……たった数年でアクアントの総人口が軽く三倍超えになっちまったけど。

 しかも、自治領にメチャクチャ集中してる上に、何故か隣国のエルフどころかドワーフや全く知らない種族やらアズマ人まで居付くようになっちゃったけど…。


 そんなうなぎ上りに発展する俺達の自治領にボロボロになった狼族の奴隷達が噂を頼りに助けを求めてきたんだよ。

 …相変わらず、デルムーンは矛先をちょっと変えただけ。

 奴隷狩りやその他の悪行が継続してたわけだ。

 勿論、速攻で保護…てかうちの領民にしたけど何か問題でも?


 でさ、その中に珍しいアルビノの狼族の男の子がいてね。

 そりゃあ惨たらしい傷だったよ…親しくしてたオツベル家の伝手で治癒師を呼んでもお手上げだった。


 けど、俺もフェンも何とか助けたくってさ。

 三ヶ月、ずっと看病してたけどなあ…やっと会話ができるようになったんだけど…きっと、無理して俺達に笑顔を見せてくれてたんだろうなあ。


 助からなかったんだ…。


 そりゃあ泣いたね。

 まるで初めて自分の子供が死んでしまったくらいの勢いだったよ。


 特にフェンは堪えたんじゃないかなあ。

 実は最初にフェンが生まれてからルッツもタムもニコちゃんも暫く女の子ばっかでさ?

 同じ狼族の弟がなかなか生まれてこなかったんだよ…だから、きっとアイツも弟みたいに思ってたんじゃないかなあ。

 意外と自分の毛が白いの気にしてたみたいだし。



父者ととじゃ…その子のお墓に供える花を摘んできます」



 そんな事言ったのを最後にフェンと上の姉妹…それに逃げて来た狼族の戦士の何人かが急に姿を消したんだよ。

 何度も俺は探しにいこうとしたけどルッツ達に「大丈夫ダ」って羽交い絞めにされてダメだった。


 そんなこんなで三ヶ月くらいたった頃にフラっとフェン達が帰ってきたんだ。

 また、見知らぬ種族も一緒で。


 皆揃って大した怪我はなさそうだけどボロボロの姿で…白い花を一輪、ただ持ってたよ。



「え? 本当に供える為に花を探しに行ってたの!?」



 まあ、そんな訳ないよな。

 どうやら俺の子供達はデルムーンとバトってたらしいんだな。

 で、その様を見て同じ苦渋を味わっていたマッドダムの獣人・亜人達が大奮起。

 うちの最強過ぎる息子に続いてデルムーンへと殺到。

 敢え無く、デルムーンの真の悪党たる首領は討ち取られたという。


 取り敢えず、俺は「よくやった」と何故か俺の前に跪くフェンを褒めてやる。


 が、それが良くなかったのかあ~?


 それを満足気に見ていたルッツがフェンを獣人初のとして認め、勝手に独り立ちさせちゃったんだわ。


 おいおい…まだ、フェンは八歳児だぞ?


 え? もうデルムーンをフェンリルに改名してフェンを王に据える?

 むむむ…。 


 しかも、そのまま勢いで大陸中央にあるサンブライトを叩く予定だったらしい。

 戦争よくない。てか、子供らに怪我しないで欲しいので「悪い人間ばかりじゃないんだ、俺だって単なる人間なんだよ?」と言って何とか宥めたぜ…ふぅ~。


 

 と、久々に顔を合せた息子を見てそんな思いでに浸るが……はあ、仕方ない。

 本当はまだ十歳の可愛い息子を叱りたくはないんだがな。



「き、貴様ら…よくも…」

「ひ、ひぃ」

「――駄目じゃないか! フェン!」

「ッ!?」



 ああ、そんな顔をするなよ? 俺だって叱りたくないんだぜ?



「きっと急に俺が出て来たから驚いてしまっただけだろう。だというのに…ほら、早く治してさし上げるんだ」

「…はい」

「悪いけど…誰か着る者を三人…いや四人分もってきてくれる?」

「「はっ! 直ちに尊父様!」」



 クゥーンと悲しそうに身を縮ませるフェンは渋々、地面に押しつぶされた聖国人らしき肉片に向って手を翳す。

 すると眩い光と共に見る見るうちに肉片が再生する……まあ、鎧までは無理だけどな。

 うちの自慢の息子はとんでもない魔法の使い手で、誰にも教わってないのに「使える気がする」というだけで攻撃・回復・補助なんでもございの超獣人だ。



「よし偉いぞフェンリル!流石は俺の自慢の息子よ! さあ、来いっ!」

「…と、父者!」

 


 巨大な息子が俺を襲う…のではなく甘える。

 最近は滅多にできなくなった親子のスキンシップだ。

 まあ、傍から見れば超大型犬にのしかかられている中年の飼い主だろうけども。

 何とか届く範囲をワシワシと掻いて撫でてやる。



「ほう。我が息子ながら、少し灼けるナ」

「は、母者ははじゃっ!? 申し訳ありません!」



 新たに姿を現したのは、最早裸マントと同義の恰好をした我が妻たるルッツである。

 その自慢気に逸らされた下腹部は明らかに膨れ、彼女らの自慢であるライフマーク・・・・・・が二十一個刻印されている。

 そしてその腹部に上からのしっ…てなってる俺の頭ほどにまで大きくなった瓜二つ。

 ……子供が出来る度に胸も尻も育ってるからね、仕方ないね。 


 因みに、ルッツは俺と一緒に居る時間が長い分だいぶ言葉がこなれた。

 子供達は俺や外部からの人間の影響で言葉遣いに問題はないんだけどな。


 それと使節団その他から俺とフェンを呆然と見る視線も結構堪える。

 流石に良い加減離れよう。



「(スンスンッ)…中央からの使いカ。……女。その箱の中身は我らへの貢ぎ物カ?」

「は、はいぃ!そうです!? 申し遅れました! 私は使節団の代表でフィレン・グミアーと申します。この度、中央を統べるものの責である…本来止めるべきフレイムスの卑しき蛮族の軍勢のアクアント侵入を許したことへの慰謝。そして、その愚かな蛮族を中央に代わって討伐した獣王閣下への感謝としての礼金として、金貨二千枚をお持ちした次第でございます」



 俺からジュースを受け取った彼女が代表だったか。

 顔…真っ青だけど大丈夫か?



「(スンッ)……フン。金貨、ナァ…?」

「急ぎ用意させた少額でございますれば…どうか手付金としてお納め下さればと…ど、どうか…!」

「……どうやら本気で知らぬようダ。女…いや、グミアーとやら。試しにその櫃を検めてみロ」

「…? はっ! そうおっしゃるならば直ちに……(ゴソゴソ)なっ!? これはぁ!?」



 数人の騎士と共に蓋を開けた彼女が悲鳴を上げた…何事?



「こ、この愚か者めぇ!全て銀貨・・ではないか!?」

「うぅ…」


 

 グミアー氏が同じ文官らしき人物の首を悪鬼の如き怒りの表情で締め上げる。

 銀貨…銀は獣人にとっては害のあるものであることは、この世界の住民にとっては常識だ。


 それを態々送り付けるってことはだね…?



「ほうほう…。なるほど、なるほど。どうやらコレが聖国の総意らしいナ?」

「そのようですな、母者…。はぁ…貴様ら中央の人間はどこまで愚かなのだ? あの屑共の国デルムーンに続いて真っ先に滅ぼすべきどころを、我が尊父の慈悲で生かされておきながら…それを無下にするとはな…っ!」

「ち、違います!? これは断じて聖国の民全ての意志では!?」



 必死に地面に伏せて土に塗れたグミアー氏が俺達に懇願し出した。

 釣られて顔を青くした騎士の何名かも(フェンが復活させた全裸も含む)も揃って土下座する。


 そのタイミングで彼女らの後ろにいる数人の騎士が倒れた。

 いや、正確には俺の娘達…隠れるのが得意なタムとニコちゃんの子に取っ捕まったのだ。


 その手から何か筒のようなものが転がり落ちた。



「おお!? お前達!急にどうしたの!?」

「パパ! フェン兄もお久っ!」

「ずっとママ達からの指示で中央から付けてたんだあ~。な~んか企んでたみたいだたしさ……コイツ等。今、明らかに隠してた毒矢でパパを狙ってたから…ねえ? 消していい?」

「…やっと尻尾を出したカ」



 ルッツがまるで見越してたかのようにふんぞり返る。



「気でも違ったか!? ここは…この瞬間が、我らの最後の砦なのだぞ!?」

「コイツ…っ!? グミアー様! コイツは我ら聖国騎士の者ではありません!」

「なっ…ダークエルフ!? いつの間にすり替わった!?」



 憤慨した騎士の一人が取り押さえられた騎士の兜を蹴り飛ばすと…何と俺が何度か目にしたあの灰色エルフモドキの顔だったのである。



「利用されたナ使者殿。コイツ等は滅びた闇国から流れてきた殺し屋ダ。恐らく我が愛しきシドを害そうとしたのだろう…まあ、端から聖国の腐った連中と闇国がグルだったのは知っていタ。お前ごと屠るつもりだったんだろう」

「そんな…」



 俺の娘達が荷を検めると…毒やら爆薬めいたものが出るわ出るわ。


 こりゃあ、結局放っておいたら泣きを見るものが増えるばっかだろ。

 てか、グミアー氏が哀れ過ぎる…。



「…獣王フェンリル」

「はい」



 二年前のようにフェンが俺に向って跪いて返事をする。

 何か最近、フェンが獣王なんて呼ばれるからそう呼んでみただけなんだけど…なんか周りも偉い雰囲気になってないか?



「俺は何もできないけども。…この不甲斐ない父に代わって、皆の為に頑張ってくれるか?」

「……っ! …承知しました。必ずや尊父の憂い・・、あなたの息子であるこのフェンリルが全て絶って御覧に入れます!」

「「うおおーっ!!」」



 獣人達が一斉に上げた歓声、怒声、絶叫が俺を、大地を震わせる。



「「シド! シドヘレス! フェンリル!!」」

「「我らが尊父! 我らを導きし神! 我らの王!!」」

「「愛の化身! 破壊と創造の神! 御使いの仔!!」」

「「我ら獣人に救いを! 我らの敵に滅びを! 我ら民に安寧と永遠の王国を!!」」



 あちゃー…凄い事になってるなあ。

 

 一応、俺が女神様から出された条件を実行するにあたり…お地蔵様くらいの有難味でいいかなーなんて軽いノリでやり出したヘレス信仰。


 だが、周りに「自由でいいよ」みたいなこと言ってたら…いつの間にかシドヘレス教になってた件。

 あんまり過激なことになりゃなきゃいいんだけど…。

 俺の子供が凄いのはその女神様の力~なんて言っちゃったもんだから、まあこうなるのも無理もない…か?



  (省)



 …こうして、長年種族差別と他国からの搾取によって肥大し、増長していた聖国はかの大英雄フェンリルとその兄弟姉妹の怒りを買って歴史に幕を下ろしたのです。


 その後、大陸で覇を成したフェンリル・シドヘレス・ヘザーが王座に就くと共に、大陸の七国は統一され、獣王国と名を改めました。

 獣王の兄弟姉妹を臣下とし、多種に渡る異母兄弟姉妹である十二支族と総称される血族が獣王国各地を治め、血の繋がりもまたその絆と団結を強固にしたのです。


 獣王国の刻印は数種存在しますが、特に親交厚いドワーフの名工が手掛けた獣王フェンリルの横顔に獣王国の国花である淡く白い花弁が特徴的なスライの花を象ったものが有名でしょう。

 このスライの花には諸説あり、名の由来は獣王フェンリルが大陸統一前に命を落とした義弟の名からとられたものというのが最も有力であるとされています。


 では、改めてこの獣王フェンリルと切り離せない存在である尊父シドヘレスについて…。

 獣王フェンリルの実の父親であり、獣王国内外で国教とされるシドヘレス教の開祖にして神の御使いとして扱われる聖人。

 国内各地に獣王像よりも圧倒的に多くシドヘレス聖人像、または、シドヘレスと彼の妻である狼族三妃と共にある夫婦像が存在します。

 特に夫婦像は挙式を上げる式場には欠かせない存在となっています。


 また、聖人シドヘレスは子宝の神としては余りにも有名です。

 人間男性にしては異例の齢百歳まで生きられ、その最期を獣王とその兄弟姉妹、そして百を超える妻達に看取られての大往生であったと記録されています。

 明確に全てを把握できてはいませんが、少なくとも生涯現役・・・・であった聖人シドヘレスの血を引く者は三千を悠に超えているとされ、その殆どが獣人種族との間に設けられたのもあり、獣王国における大抵の獣人はシドヘレスの名を名乗ることが獣王陛下から許されています。

 因みに、極僅かではありますが…女神に微笑まれたのか、縁に恵まれた獣人種族以外の人間・エルフ・亜人種族との間にも子を設けているという記録もあり――



  (※)



「…何コレ?」

「え? “獣人王の遺産”関連のイベ進行に必要な文献アイテム。〔アンネ・シドヘレス・グミアーの手記 獣王歴257年版(中巻)〕だけど?」



 とあるMMORPGに興じるゲームダイバープレイヤーの二人組の内の一人がもう一方に問う。



「イベ進行に必要だからちゃんと読めよ?」

「じゃなくてさ。何だよこの文中に度々登場する聖人という名の性的モンスターはよ。てか百まで平気で子供つくんなよ!? 無責任だろ!」

「ははは。ほんとだよな? よく腎虚で死ななかったよな……いや、どうだろ寿命じゃなかったら……」

「お、おい…何か怖いぜ。もうこの話題は止めよう」

「ちゃんと、読んどけよ?」



 仕方なく再度書物のアイテムを使用して眺めるプレイヤー。



「しっかし、この世界のNPCがケモミミだらけって設定にしては…流石に無理がね?」

「まあ、開発元が重度のケモ耳フェチだったんじゃないか? というか、名前が出るNPCのミドルネーム殆どそのシドヘレスだし。むしろ、違ったらレアキャラだって掲示板にアップされて祭りになるくらいだぞ」

「何だよその謎で実りの一切無い祭りは…」



 本を何とか読み終えたプレイヤーがイベントリに本を放り込んで目の前の巨大な像を見上げる。


 ダンジョン化した廃殿地下…その前にそびえるシドヘレスの夫婦像である。


 現在フェンリル五世が治める世界にて、悠に千年の時が過ぎ去ってなお…愛おし気にシドヘレスを囲む三妃は、実に美しかった。



「ていうか、マジでシドヘレスって人間だったのか? どう見ても人間っぽくないぞ? 破壊と創造…そして愛を司る神にしては強そうだ。聖人てか魔神だなコリャ」

「うーん。まあ、その辺はある程度デフォルメされてる設定なんじゃないか?」

「……実は単なるオッサンだったりしてな? そんな感じの設定の…ネットに制限の無い無法通信時代に流行ったレトロ娯楽小説でよくあったろ」

「ははは! もしそうだったら傑作――」

「コラァ! そこの異邦人共っ! 今、シドヘレス様を馬鹿にしただろう!」



 シドヘレス像の前で騒いだ二人のプレイヤーにダンジョンの番をしていた衛兵NPCが怒り露わに突っ込んでいく。

 手足の長い長身に長く梳かれた黒髪・・の上には狼の耳がある。



「やべっ…衛兵NPCだぞ! …俺達拘束時間ペナルティ喰らっちまうかなあ?」

「迂闊だったな。この世界のケモミミは例外なく信心深いシドヘレス教徒だからな…」



 その様をダンジョンへのゲート前に取り残された衛兵NPCが眺めて嘆息していた。



「あちゃー…班長殿が行っちゃいましたけど。いいんですか?」

「ほっとけ。別に逮捕しないさ……まあ、いつもの異邦人相手の説教だろう」

「というか前から思ってたんですが、何でああも班長はシドヘレス様を尊敬されているんですかね? あっと…別に僕が信仰心が足りないわけではありませんよ?」

「そうだな…下手したら回復魔法の免停もありうるからな」

「か、勘弁して下さいよ」



 後輩を先輩門衛がそう揶揄う。

 その少し逸れた視線の先には猛然と説教を喰らう二人組の姿が。



「知ってたか? …実は、班長はあの三妃の内の御一方…その直系なんだとさ」

「え? 確かに班長は狼系ですけど…嘘でしょ!?」

「嘘なもんかい。そんな事疑い出したら…明日から俺もお前もシドヘレスを名乗れなくなるぞ」

「そりゃそうですけど…で? どちらの妃様なんですか?」

「ああ、そりゃあ…シドヘレス様の片腕におられる――」



  (種)



 ※最後に主人公(没時)と獣王のステータスとスキルをオマケにどうぞ笑



 ▼尊父シドヘレス▼


 ▶レベル:??   EXP:?

 ▶アーキタイプ:戦士

 ▶身分:シドヘレス教教祖(神格化)

 ▶称号:尊父、破壊と創造と愛の神

 ▶HP:0   MP:0

 ▶所持金:国家予算級+その他の神話級遺産

 ▶攻撃力:0   >付与:無し  

 ▶防御力:0   >耐性:無し

 ▶筋肉:?

 ▶敏捷:?

 ▶魔力:?

 ▶精神:?

 ▶知識:?

 ▶状態異常:老衰



 尊父シドヘレス◀スキル


 【種男】Lv?     〔植物学〕Lv?

 〔性交渉〕LvMAX  〔家庭料理〕Lv?

 〔絶倫〕LvMAX



 ▼獣王フェンリル▼


 ▶レベル:??   EXP:?

 ▶アーキタイプ:獣魔法戦士(ラウルフ・デミゴッド)

 ▶身分:獣王国初代国王

 ▶称号:獣王、御使いの仔

 ▶HP:???? MP:????


 ▶攻撃力:??? >付与:雷撃  

 ▶防御力:??? >耐性:全物理魔法

 ▶筋肉:?

 ▶敏捷:?

 ▶魔力:?

 ▶精神:?

 ▶知識:?

 ▶状態異常:不明



 獣王フェンリル◀スキル


 【毛皮】LvMAX   【女神ヘレスの加護】Lv?

 〔魔法戦士〕LvMAX 〔王者〕Lv?

 〔雷〕LvMAX    〔治癒〕LvMAX 

 〔生命増強〕LvMAX 〔魔法強化〕LvMAX 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る