獣人達との旅~旅の終わりは近付いて



「ふぅむ…(ジロジロ)」

「「…………」」



 やあ、皆さんこんにちわ。

 狼族の情夫・・・・・こと、戦士シド兼タネモトです!


 …………。


 ってんな馬鹿な!?


 ステータスアプリさん! アンタなんて余計な仕事してくれてんだ!

 なに勝手に俺のステータス画面の▶称号:狼族の情夫に変更してくれてんのぉ!?



「身分を証明をするものを持っていないそうだが…不慣れなアズマ人なら仕方ないか。この関所ではミザーからオツベル領へと出るに限っては特に通行税を設けてはいないが。それでも我ら国の兵が守る街道を使わずに、危険な森を抜けてくるのは感心しないな。……今回は不問とするが、もうそんな真似をしないように。しかも、よりによって男一人の身・・・・・ではぐれ獣人などと一緒にいるなどと(チラリ)……ボソリ(攫われてしまうぞ?)」

「え゛っ…」

「「…………」」



 街道を進み、夕暮れ間近で俺達はオツベル領とやらとミザーとの間の街道上に設けられた関所に辿り着いたわけだが。

 その関所には典型的なファンタジーな兵士スタイルで武装した兵士が四名詰めていた。

 そこで俺達に対応してくれた兵士さんの言葉である。

 因みに、少し離れた場所で待機(獣人は警戒されてんのか? いや、あの山賊らしき雰囲気でか?)していたルッツ達の耳には兵士さんの興味深い忠告が聞こえていたのか、頭の上の耳がピクピクと判り易く反応していたぜ。


 …一応、攫われないように気を付けるか。

 まあ、仮にそうされても先ず抵抗のしようがないよね?


 それと、目的地とするミルファの街からザイル領の港までの行き来においては、通行税を払いたくないというだけの理由で結構な人間が街道から外れて森に入り、割と関所破りをするのが日常茶飯事だと溜め息を吐かれてしまった。



「逆にオツベル領から入る時は幾らお支払いすれば?」

「すまん。私はアズマの通貨には疎いんだ。…あくまでもこの大陸通貨でとなるが、1シルバーと50ブロンズを払って貰うことになっている。ああ、少し待たれよ(ゴソゴソ)…コレでその額となる」



 …ほう? ブロンズとは初めて聞く単価だ。

 何でもこの大陸で流通するのは主にゴールド・シルバー・ブロンズの三つ。

 金・銀・銅とか、非常に理解し易くて大変によろしいかと。

 俺が持っているシルバーがブロンズの百倍の価値。

 ゴールドとやらがシルバーの百倍の価値があるそうだ。


 兵士さんが見せてくれたのは、俺が持つ銀貨と同じものが一枚と、赤銅貨という俺が知ってる銅色よりも赤味がかなり強く、鮮やかに輝くコインが五枚あった。

 最安単価の通貨である銅貨ブロンズの十倍の価値があるんだとさ。

 まあ、そりゃそうか。

 1ブロンズのお代に1シルバー出して、釣りに銅貨が九十九枚渡されても困るもんなあ。


 他にも、5ブロンズの価値がある黄金こがね銅貨。

 50ブロンズの価値がある三日月銀貨。

 10シルバーの価値がある白銀貨などもあるという。

 そう、優しい兵士さんが教えてくれました。



 …そう、やけに俺に優しいんだよなあ。


 しかも、四人とも女性兵士だったし。

 偶然にしても、男の姿が少ない気がするんだが?


「いや、なに…君の様に素直な態度のアズマ人ばかりならば変な諍いも起きずに済むと思ってね? では道中気を付け……(ジロリ) 気を付けていかれよ。…それと、街道には兵士も巡回している。何かあれば直ぐに助けを求めなさい」

「わ、わかりました…?」

「ケッ」



 こんなしょぼくれた中年にも優しくしてくれた兵士さん達との出会いと別れを経て、俺達はオツベル領へと入領を果たすのであった。


 ルッツは関所が見えなくなっても暫く機嫌が悪かったらしく。

 ここまでの道中でのルッツから俺へのセクハラ頻度が倍になりました。


 ねえ? オッサンの尻なんか触って嬉しいんスか?


 …え? 程良く柔らかくて育った尻だから揉み応えがある? そ、そうですか。



  (‥)



 陽が落ちたので街道から少し外れた水場でのキャンプです。


 ルッツ曰く、ミルファまではあと一日歩くことになるとのこと。

 左様か…。



「ガッハッハ! シドも遠慮せズ喰エ!」

「おう…わかってるって。そう抱きつくなよ? 喰えるもんも、喰えんよ…」



 ルッツは焚火の前ですっかり出来上がっていた。

 既に樽の半分近くのワインをほぼ三人で消費がぶ飲みしてやがったぜ。


 そんな勢いで飲み食いしてたら直ぐに無くなっちまうんじゃないの君達?



「「…………」」



 そして腹が満たされると突如始まる三人の睨み合い…マジで何の時間なの?


 だが、結局は常に俺の隣をキープするルッツから発せられる圧倒的なプレッシャーにタムとニコちゃんが敵うはずもなく、渋々この場から退散していく。



「…さテ。今夜の分ノ報酬・・ヲ頂くトシヨウ(ニヤリ)」



 やっぱかい。

 いやそんな気はビンビンにしてましたけども?


 俺は最早無駄な抵抗はすまいと素直に敷かれた毛皮の上で服を脱いで畳み、ルッツに向ってキチンと正座しとく。



「…ホウ。やハリ、シドもアズマ人なノダナ」

「……?」



 ああ、多分俺の正座について言ってんのかね?


 ……どうにもそのアズマ人とやらにオリエンタルな文化を感じてならん。

 かなり飛躍した話だが、あの女神ヘレスが江戸時代かそれ以前の時代から人を大量にそのアズマとやらに転移させた訳じゃあるまいな?



「フフフ…今夜モ、良い声デ鳴かセテヤル」

「や、優しくお願いしま――あっ…(ヤダっ…相変わらず強引…!)」



 ――そして事後。



「フゥ…今夜もルッツは大いに満たサレタ・・・・・。ドウダ? ルッツのオス・・にナランカ?」

「またその話かぁ…?」



 気怠く甘く香る汗の匂いを纏うルッツが俺にしな垂れ掛かってそう問い掛ける。

 昨晩もことの最中に、何度かそう言われた。

 冗談かと思っていたが……マジで言ってんのか?


 つまり、俺と結婚(そんな文化があればだが)しろってんだろ。


 まあ、ぶっちゃけ…――



 有りですね!(迫真)


 だってルッツ可愛いし! 強いし! エロイ! 三拍子揃ったケモ耳美少女だし。


 …………。


 だが、素直にこの世界に転移してきたチート転移者でもない俺がそう簡単に決断できる話じゃあないだろう。


 そもそも、バイトの上司女神ヘレスがそれを許す保障もない。

 いや、既に既成事実はあるんだがな?


 残念だが、また同じように断るしかない。

 ……おいおい? そんなむくれてあざと可愛い顔するのは反則じゃね?


 …ああ、ほら。


 また・・ですよ?



「(ジィー)……惜シイ。お前ガ毛無しデナク、同じケモノビトなラ……有無ヲ言わサズ逃げラレンほド森深くマデ連れテイクモノヲ…」

「…………(ガチで攫う気やんけ)」



 だが、ルッツはお構いなしに俺の・・を掴んで、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて俺の顔色を伺ってくる。


 再戦ですかそうですか…。


 だが、俺の身体…どうなっちまったんだろう?


 思えば昨夜の衝撃的な一件で混乱していたが…やはり、俺の身体は異常・・だな。


 別に怪しい薬を服用していないのにも関わらず昨晩も今晩も…駆け付け抜かずの五発をルッツにお見舞いして、彼女からお褒めの言葉を頂けた。


 そんな激闘を終えた後でもこの復活力……普通じゃない。


 思えば、ここ十年はリアルで女っ気がなかったが…それでも、若い全盛期においても俺はこんな性の怪物的なポテンシャルを持っていたことなぞない。

 あくまでも人並み・・・の範疇であったはず…。


 まさか…信じ難いが、俺のユニークスキル【種男】の影響としか思えないのだ。

 ……そんなバナナ(※決して下ネタではありません)


 まあ、現状では役に立ってますけどね。

 でもさあ…何かこう…ファンタジーに心躍る感じでは……ないよなぁ~?



「……フム。まァここマデのオスもそうソウイマイ。…アイツらニモ、良イ加減経験・・ヲ積まセルカ」

「え? 何か(不吉なことを)言った?」

「なんデモナイ…さァ、ルッツが直ぐニ楽に・・シテヤロウ…ククッ」



 そう笑う彼女は、また俺に覆い被さってきたよ。

 いいのかなぁ~…こんな爛れた感じでさあ?



  (‥)



「カッ・バァタテェ!!(※恐らく:このバカタレ!! と言っています)」

「「…………」」



 次の日のこと。

 

 問題が起きました…いや、問題が起こったようです。


 俺とルッツが一緒にまた川辺(このアクアントは毛細血管ばりに大小無数の河川と泉が湧いてるらしい。逆に水が溢れ返って水害とかによくならんもんだ…)に向い身を清めたいた時だった。


 ルッツがザバッと川に入って出るだけの烏の行水の如きでことを終えるので、先に俺を置いて戻ったのだが…。

 一人残って水浴びを続けていた俺をじっと見つめる二つの視線が…。


 …まあ、こんな中年の裸なんてこれ以上想像したくないだろ?


 ぶっちゃけ、覗きをしていたのはタムとニコちゃんでした。

 それがルッツにバレて…こうも激おこプンプン丸なわけである。まる。



「…ウウゥ…ッ! 二人にハ罰ヲ与エル! …おイ、シド」

「いや、別に裸を見られたくらいで大袈裟だってば?」

「ヌッ!? そんナコトハナイッ! オマエの身体ハ実ニ…ウマソウダゾ!? 思わワズ涎が出ルホドダ! 堪ランッ!!」



 え? なんか俺、猟奇的なこと言われてる?

 どうリアクションすればいいんだってばよ。



「シド。オマエガ好きナ罰ヲ与えロ」

「えぇ~そんなこと言われてもなぁ~?」



 こんなションボリした二人になにさせろってんだよ?



「じゃあ……」



  (‥)



「コレ・ドク・ダケ・ド…クスリ・ナル…」

「ふんふん」


 

 結局、俺が二人に下した沙汰は旅の最終日のようなものである今日一日。

 〔植物学〕スキル持ちのタムとニコちゃんに付きっ切りで色々と教えて貰うことにした。


 無論、ルッツの機嫌は急降下である。

 だが、その二人に代わって斥候役をやるハメになったルッツは文句を言わず俺の願いに付き合ってくれたのは感謝しかない。


 まあ、その分…夜の反動が大きそうで怖いがな……。



『ピコーン♪』


 *〔植物学〕スキルのレベルが上昇しました!*



「おお、やった!」

「「…?」」

「あっーと…スキルのレベルが上がったのさ。二人ともありがとうな!」

「「…………」」



 何とか俺の言葉が通じたのか、二人はコクコクと頷いてくれた。


 だが、俺のレベル自体は上がることはない。

 EXPのゲージは増えていたが…やはり、女神の言葉通りレベルが高くなるほど上がり難くなるもんなのかもな。



 そんな寄り道もあって、ミルファの街まであと五時間ってとこで陽が暮れてしまった。

 街に近付いたからか、街道を行き来する人影が増えたな。

 

 街道の真横で野営する連中もいたが、俺達も些末な・・・理由からそういうわけにもいかん。

 あと、どうにも俺もルッツ達も悪目立ちするみたいでな。



 やや離れた森の中で最後の野営となった。



「あのさあ、ルッツ。何でタムとニコちゃんにあんな厳しく?」



 昨晩に続いて豪勢な夕食を済ませた後、もはや恒例になりつつある俺の脱衣タイム中で俺はそうルッツに尋ねた。

 もう、街も近いし…今夜はないかと思ったがそんなことはなかったぜ。



「ルッツは群れノ長(アルファ)ダ。ルッツの言うコトハ絶対ナンダ。本来厳シイ群れニ属すメスは……種族が違エドモ、長ガ許さン限りオスに近付くコトスラ許さレン。ルッツは甘過ぎルクライダゾ?」

「へえ~そんな決まり?があったんだ…」



 じゃあ、本来は今日の俺が行った所業なぞ到底許されるものではなかったと。

 …付き合って貰ったあの二人の態度も多少、おかしくはあったしなぁ。



「デ。シドにハ悪イガ…先に二人ノ相手・・をシテヤッテクレ」

「……なんですと?」



 すると呆れたような顔を浮かべたルッツがズンズンと近くの灌木を脚で薙ぐと……そこには切なそうに息を切らせたタムとニコちゃんの姿があったのだ。


 …そんなとこに隠れてなにしてたのお二人さん?



「ハァ…情けナイ。トァム、ニゥコ。出て来イ……今夜ハ…シドにメス・・にシテモラエ」

「「…っ!?」」



 ルッツの溜め息と共にバッと目を見開いた二人が目を輝かせて俺に向って襲い掛かってきたのだが――



「グガゥ!」

「ギャウ!?」

「アォン…」



 即座にルッツにしばかれて終了……何がなんやら。



「勘違いスルナッ! ルッツのオスを簡単ニクレテやるワケがナイダロ」

「お~いルッツさんや。俺はお前のオスじゃねぇ~ぞ~?」



 ルッツは涙目になった二人を引き摺っていくと木に向って手を突かせてコッチに尻を向けさせたんだが?


 いったいこれから何が始まるんです?



「フフン。今度はルッツかラノ罰ダ。コレハ…ケモノビトのメスにトッテ最モ屈辱的な体位デナ? 獣のヨウニ、オスに後ろカラ覆い被さラレテ好きナヨウニされルノハ。ククク…」

「ルッツさんオメー。さてはまだ怒ってんな?」



 だが涙目になるほど赤面した二人がプルプルと震えながら俺に向って無防備に尻を向ける光景は……――



 正直、バッチバチにとても興奮したよね。


 タムの尻をペチペチ叩くルッツに「コレ以上恥をカカセテヤルナ」と急かされ、俺は仕方なく二人の相手をできる役と……おおっと! 男の責務を果たすことになった。



「オイオイ! なんダその腰振りハ? ケモノビト相手に遠慮なドスルナ。ニンゲンほどヤワじゃナイ! …どレ、ルッツも手伝っテヤルゾ? んン?」

「おいルッツ止めろって!? 後ろから腰をぶつけんなよ! いきなりそんな深く……アッー!」



『ピコーン♪』


 *新たなスキルを習得しました!*

 *〔性交渉〕が自動的に装備スロットに追加されます*



 …おい、止めろ。

 そんなスキル覚えてくれんなよっ!?

 ちょっと自発的に(半ば強制)動いただけだろぉ~!


 因みにタムもニコちゃんもルッツのように怪物染みたタフネスなぞ無く、簡単にノビちまったよ…半分はルッツのせいだが、悪いことしたな。


 流石にそのまま放置はできず、俺は二人を運んで敷物の上に寝かせてやった。



 てか、改めて冷静になってきたら…幾ら相手が獣人だからってさあ?

 こんな若い子達に俺…なんて早まった真似をしちまったんだと罪悪感が今更ながら込み上げてきて、割とガチでメンタルガッタガタで吐きそうです……。



「…情けナイ。オスにココマデ世話を掛けオッテ」

「いや、やらせたのはルッツじゃん」

「フン。普通メスはこンナ良い・・扱いナドサレナイ」

「…………」



 え? なんだよルッツのヤツ…焼き餅か?



「シドも物足りンダロ? ルッツがチャント慰め……ドウシタ?」

「いや、羨ましいのなら。俺もルッツに後ろからしようか?」

「…………」



 はい。ルッツに割とガチでしばかれました。

 ここ三日間では一番ハードに扱かれました……殺さないでね?



 ……だが、明日でルッツ達との旅も終わり、か。


 

  (種)



 ▼勇者タネモト▼


 ▶レベル:1   EXP:▮▮▮▯▯▯▯▯▯▯

 ▶アーキタイプ:戦士

 ▶身分:身元不明

 ▶称号:狼族の情夫

 ▶HP:15   MP:0

 ▶所持金:70シルバー

 ▶攻撃力:0   >付与:無し  

 ▶防御力:1   >耐性:無し

 ▶筋肉:F

 ▶敏捷:F-

 ▶魔力:F-

 ▶精神:F-

 ▶知識:14

 ▶状態異常:無し


 E:クロース

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――


 勇者タネモト◀スキル・カスタマイズ


 【種男】Lv0     〔植物学〕Lv1

 〔性交渉〕Lv0    〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


  ==残り予備スキル枠:10==


 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


 *種メイカー最大使用回数:1回(スキルレベル+1)

 *????


 ▼クエストボード▼


 ==今回のノルマ==


 ●今回は試用期間につき、兎に角頑張って七日間生き延びよう!

  (4/7)

 ▶達成報酬:1ゴールド


 ==ペナルティ==


 ●テスター業務の終了。

  (※なお、報酬は発生しません。)


 ==現在進行中のイベント==


 ●獣人族との旅(3/3)

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