異世界発見録~ミルファ~

  ▶作者からの一言◀


 先ず、また更新が滞ったことをお詫び致します<(_ _)>


 まあ、理由は色々とあるのですが…最も大きな理由はスチームでここ最近リリース(日本語化も含める)されたりアプデされたゲームのせい…でしょうか?(他人事)


 Wall Worldとか、Loddlenaut(丸一日やってた笑)とか、Cornucopia(現在プレイ開始済み)とか、Travellers Rest(早く釣りしたい)とかね(ダイマもしくは単に同じゲーム沼に引きずり込みたいだけ笑)


 あとPotion Craftはいつバージョン2.0になるんですかねぇ?(粘着質なファン層)

 それと、スタバのアプデも三月中旬とかさあ…これは完全に執筆活動の妨害ですよ?(100%責任転換)



 …そんな感じです。ホントこんな弱筆者ですみませんRe:<(_ _)>


 また、次話はちょっとしたアナザーストーリーを書きたいな、とか生意気に考えています。

 今週中には書き上げる予定でございますので、更新した際には何卒(^_^;)



  (‥)



「おお…コレがミルファか…!」



 成り行きとはいえ、俺達は目的地であるミルファの街へと遂に辿り着いていた。

 その街を囲う数メートルの高さはあるだろう分厚い石壁を目の前に俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまったぜ。


 既に昼を超えた辺りの時間帯だが、このミルファ東門前では結構な数の人間が並んでいるようだ。

 まだ、街全体を把握してないが…少なくとも千葉県にある某ランドよりは圧倒的に広そうではある。

 そりゃだしな。

 それに、このアクアント王都の四方を囲むように位置する東都であるようだし、規模も人口も一昨日に立ち寄ったあの訳ありラウルフ村の比ではないだろう。



「…さてと、ルッツ。タム。ニコちゃん。…ここまでありがとな?」

「……フン」

「「…………」」



 出会いあれば…別れあり…。


 思えば、異世界初日から丸四日間ずっと三人と一緒にいたんだなあ。


 辛い事もあったけど(主に夜に)…ケモ耳美少女達に囲まれての旅なんて……実のとこ、俺はとんでもなく幸運な男ハッピー野郎だったんじゃないか?

 故に隠しステータスの幸運を既に使い果たしてしまった可能性が微レ存…。


 実に濃ゆい日々だったなあ……。



「ねえ。このままじゃ俺…街に入れないからさ……ね?」

「「…………」」



 だからその…もう、そろそろ俺から離れて欲しいんだが?



「…………」



 ……困ったなあ。


 ルッツ達が俺から一向に離れてくれんのよなあ。

 背中にルッツ、両腕にタムとニコちゃんに俺が抱きつかれている現状。

 なにそれ裏山と思われるかもだが…如何せん、森の中と違って人目があるもんだから俺の紙装甲メンタルがゴリゴリ減っていくんです。



 主に“決意が鈍る”という点で。



 朝っぱらから今迄の距離感(まあ最初から近い方だったけどさ…)はなんだったんだってくらいベッタリな上に上目遣い(俺より背の高いニコちゃんはその、無理すんな)は卑怯なんでないの?



 まあ、このままルッツ達に森へお持ち帰りされても…――



 …いかん。もう俺の意思は既にブレブレだ。


 だが、今後俺達テスターに対してあの女神ヘレスがどんな扱いをするのか未知数であるし、この異世界の情報を収集しつつ、動き易いよう行動範囲も広げたいんだよなあ。


 正直、ここまで来れたのは彼女達の存在なくして成し得なかった。

 心情だけでなく戦力面でもルッツ達と別れるのは痛い。


 だが、鋼の精神(おまいう)で俺は万力の如き力で抵抗する三人を何とか振りほどき前にやる。


 因みに、一人離れるとまた一人くっつくというアホのようなやり取りがあって一時間は無駄に潰したわ。



「別にもう会えなくなるわけじゃないさ。俺も暫くはこの街で仕事を探すつもりだし……ルッツ達は? ミザーの森に戻るのか?」

「あア。あそコハ気に入ッテルシナ…ほっトクト、直ぐニ北かラ山賊共がヤッテクル…」

「そっか…」



 遂に訪れる別れの時…流石に酸いも甘いも嚙み分けたこの中年男といえど、ちょっとしんみりしちゃうよね。


 と、俺がそんなちょっとセンチになった隙を突かれてしまった。



「ン!」

「ウッ!」

「うひゃ!?」

「ア"アッ!?」



 タムとニコちゃんが俺を襲い掛かってきて、二人同時に俺の首の左右に噛り付いてきたんだよ。

 てか、ルッツみたいに力加減できないみたいで…いや普通に痛ェエエ!?

 マトモに犬歯がぶっ刺さってる流血もんですわ。

 

 ふと、●イオの主人公ばらはあれだけゾンビに首噛られて(PS時代前後の話だぞ)割かし平気でいられるものだと、馬鹿のようなことを考えてしまう俺がいる。


 あのゲームには付き物の緑色のハーブみたいなもんがこの異世界にもあればいいなぁ…。



「トァム!! ニゥコ!!」



 怒りを露わにしたルッツが手を振り上げた瞬間に二人は俺から緊急離脱して近くの林の中へと一目散に逃げていってしまったぜ。


 ……えぇ~? どんなリアクションすればいいのよ俺ぇ。



「まっタク! 一度混じラセテやッタだけデコレダ。……まア、シド程のオスが相手ジャ、もウ並のオスでハ満足でキンカ?」

「……ん? ルッツさんや、それってどういう意mんぶっ!?」



 あ…有りの侭、今、起こった事を話すぜ!


 俺がルッツの方へ振り向くやいなや既にゼロ距離にまで距離を詰めていたケモ耳美少女(男前が過ぎるが)のぷるっぷるの唇で荒々しく俺の口が塞がれてしまっていたのです。


 え? これなんてエロ漫画なんです? それともレディコミか(偏見)


 ……てか、ルッツにはここ三日で毎晩首を散々アムアムされてはいたが、キスされたのは始めてだな?


 いや、というかルッツさんこういう時目を閉じずにガッツリ目を開けてるタイプなんですね。

 寧ろ、俺が恥ずくて目閉じちゃうぜ……。



「ぷはっ」

「………シド。…マタナ」



 俺から顔をやっと離したルッツはプイと背中を向けて、尻尾で何度か俺の身体をペシペシやった後に二人を追っていく。



 だが、俺も一つ気になることがあったので思わず声に出してしまったんだ。



「なあ、ルッツ。何かお前、顔赤くない?」

「ッ!? ウゥ…ウルサイッ!!」



 一瞬だけ振り返った彼女の顔は真っ赤っかだった。


 最後まで締まらなかったが、俺は笑顔で彼女達を見送ることができたぜ。



 ……まあ、問題はだな。

 周囲から俺に向けられる視線がより一層強くなったことだろうね。

 そりゃ、あんなの見せつけられたら…ねえ?


 俺も一般視聴者だったら、爆発どころか原子分解しろと叫ぶレベルだもん。


 俺は何度か咳払いをした後にそそくさと門前の列へと加わった。




  (*)



 現アクアント女王、フィガロ五世が居城する王都から東に位置する東都ミルファ。


 東都を置く領地たるオツベルと、主にミザー地方を跨いであるザイル領方面から行き来するものを検める東都東門。


 その東門を担う門衛の二人が午後の交代要員が到着したと同時に、手早く引き継ぎを済ませて市内にある詰め所へと歩いていた。


 二人組の内、門衛の任に今年加わった新兵のトライデ(二十歳処女)が何やら落ち着きなく周囲を見回してソワソワしている様を見て、もう一方の古強者ベテランであるパルチザ(四十代…といっても見た目はかなり若いが、愛する家内に娘二人と息子一人の人生勝ち組)がやれやれと額に手をやって溜め息を吐く。



「あの色気・・ムンムンのアズマびとなら…私達が教えた通り中央ギルドへ向かったか、もしくは…もうその辺で早速客をとって種商売・・・だろう。まあ、この辺の壁街の安宿になんてしけ込んだりはせんだろうがな」

「…………」



 トライデは後方から掛かった声でビクリと身動きを固める。



「独り身のお前に、私は何も男遊びをするなとは言わんが…その辺を探すよりも、中央裏の高級娼館で探した方が早そうだと言っておく」

「…い、いえ!? 自分は何もそのような不埒なことなど考えたりなどは! …ただ、慣れぬ土地で異邦人。それも男一人の身の彼を案じたまで、でして…その……」



 着込んだ鎧を動揺からガッチャガッチャと打ち鳴らしながら左右の両手を振り回した後に、モジモジと身を捩る新人にパルチザは大きくした鼻の穴から長く鼻息を噴く。

 

 先ほどの昼時に姿を見せた異邦人の男を見てからこの新人はずっとこうだとパルチザは心の中でぼやく。


 だが、無理もないと、そうなっても仕方ないともパルチザは目の前の新人を哀れむ。

 この自分を教育役として組まされている新兵トライデはそこそこの上級市民の出で、騎士学校もそれなりの成果を上げていたとも聞く。

 絵に描いたような優等生と人事の者からは聞かされていた。

 故に、その性格は生真面目かつその齢まで男遊びにかまけるような暇も縁もなく、故に男に対して殆ど免疫もないのである。


 そんな折にあのアズマ人……いや、本当にアズマ人と証明する品は何も持っていなかった。

 アズマ王から発行されるという流離御免の手形すら持ってなかったことから察するに、アズマ人が言う“ダッパン”というならず者かもしれないとパルチザは一瞬懸念したが……どうにも違う、そのような罪を背負う者特有の翳り・・が全く感じられなかったのだ。


 そもそも、アズマ人らしからぬあの腰の低さ。

 それに言葉遣いも大きく違っていた点もパルチザは気になっていた。


 噂に聞く、島流しにされて生き延びたアズマの罪人が大陸で秘密裏に築いた村の出か?


 しかし、あの無知さは国を出てこの大陸を流離う他のアズマ男児のそれだった。

 


『俺は冒険者になりたいんですけど…その、冒険者ギルド?の場所を教えて貰えませんか。エヘヘ…』



 男の身であのような事を恥も無く言う様もまたアズマ人だが、あのようにへりくだって道を尋ねられたのはパルチザの人生でも始めてのことである。


 門衛の経験則から、旅するアズマ人の男はほぼ必ず剣を佩いている。


 一応、そのアズマ人もまた剣を背にしていた。


 身分証を持たず、帯剣するものは検めるべきである。

 だが、その冒険者志望の男が背負う剣と当人との間にリンク装備可能が見られないのでトライデとパルチザは簡単に検問を済ませてしまった。

 男はほぼ身に着けたる粗末な服と剣以外は金銭しか持っていなかったのもある。


 そもそも、女である門衛が異邦人相手とはいえ男の身体をまさぐるような真似は避けたい。

 少なくとも、検問中のトライデはずっと顔を赤くしていて男から『具合が悪いんですか?』と声を掛けられてしまうほどであった。


 きっと、免疫の無い処女門衛はあの何気ない男からの優しさ・・・に当てられてしまったのであろう。


 だが、彼は黒目黒髪は同じくとも、周知するアズマ人のような浅黒い肌ではなかったなとパルチザは思い返す。


 そう、あの見慣れない黄色い・・・男の柔肌が、この哀れな処女トライデの心をこうまで掻き乱すのだろうと…壮年の門衛は嘆息する。


 確かにアズマはこの大陸アクアントの人間とは真逆。


 男が政を任され、そんなか弱き男に働かせておいて、本来は強く、男を守る立場にある女に楽ばかりをさせるという…とんでもない文化がまかりとおる国とパルチザ達は聞かされていた。


 だが、あの様相は目に余る。


 慎み深くあるべき男子があのように肌を露出させ、あまつさえ…門の近くまで引き連れていたラウルフ、いや、恐らくは野良獣人(悪く言うと、国に税を払っていないアウトローな連中)とこの白昼の公然の場で急に乳繰り合い出した時など言葉を失ったものである。


 ここはアクアントでも最も栄え、かつ治安良しとされる栄えあるオツベル侯爵領。

 分家筋ながら女王陛下の覚えもめでたいアベリアーヌ・ヴァーリス・オツベル子爵が代官として治めるその粋たる東都ミルファなのだ!

 決してアクアントの恥部たる北都レッドブルーとはまるで違うのだ!


 …と、生まれ育ちも生粋のミルファっ子であるパルチザは軽く臍を噛む。


 それにだ。幾ら、獣人のあの日・・・が過ぎたばかりとは言え…あの大きくはだけた男の肌に生々しく残された噛み痕を見れば、大抵の女は股辺りに違和感を覚えて身を捩り、獣人に至っては悶絶すること必至だろう。


 あの場に獣人が居なくて良かったとパルチザは心から思った。

 きっと、自分もその乱痴気に加えて欲しいと大騒ぎになったことであろう。


 今一度、落ち着いて街中を見回してもそこまで浮ついた感じはしない。

 恐らくは上手いこと彼は身を隠すことができているのであろうと胸を撫で下ろす。


 まあ、それでもあんな美味そうな・・・・・アズマ人は目立つだろうし。

 ミルファには獣人も、男に困る色々と・・・有り余らした女共はそれはもう沢山いるのだ。

 彼は放っておくほうが難しいだろうな、とパルチザは頬を掻きつつ、未だ浮ついた新人のケツを叩いて再度、詰め所へと歩を進める。


 だが、あの男は只者ではないだろうとも同時に思う。


 確かにこの辺でも珍しい、もう少し自分も若ければ思わず口説きたくなるほど良い身体の男だったのは確かだが…あのみだらな首筋に残された痕は……それだけ彼が、月に狂ったあの獣人共を満足させられるほど床上手・・・であるか、それとも――



「…いかんいかん。私もこれではトライデと同じでないか……家に帰った時、勘の良い夫に私が他の男に鼻を伸ばしたことがバレねば良いのだが…。…………。……今日は土産でも買って帰るかな。…おいっ!トライデ! いい加減諦めろ、詰め所へ戻るぞ!」

   


  (‥)



 俺は何とかミルファの門を潜り抜け、俺の姉貴くらいのベテラン門衛さんが優しく教えてくれた通り、ミルファの中央通りをさっさと抜けてミルファの中央ギルドまで何とか辿り着いていた。


 いやあ、ルッツ達との別れのやり取りのせいもあるだろうけども。

 そりゃあ目立った目立った…ミルファ観光する暇もなく走ってここまできちった。


 いわゆる異世界鉄板の冒険者になりたーい! で、ある。


 事前にルッツからの枕語り(俺が腕枕される側ね?)でこの世界に冒険者という職種があるのは聞いてたし。


 まあベターってかハズレがないかという安直な選択肢でね?

 本当はモンスターと戦う職業なんてコッチから願い下げだもんよ。


 けど、今の本音は冒険者っていうよりもギルドで認められる身分証明だな。

 市民権とまでもはいかずとも、正体不明の存在X場合によっては殺されても文句は言えないから根無し草のオッサンくらいにはクラスアップできるわけですよ。

 

 てかね。俗な話だが、このミルファに入る時、この国…アクアントでの身分証がないと毎回入市税だっつって3シルバー持ってかれちまうんだと。


 そんなんやってらんないッスわ。

 コッチは遊園地に遊びに来てるわけじゃないんやぞ?


 で、そんな理由もあって俺はギルドに入るわけだ。


 ――それと今更だが、報告したい点が三つほどある。


 先ず一つ。

 この世界は(いや、厳密にはこの国か?)男の立場と女の立場が逆転している。


 言わば、貞操観念逆転世界。

 いや、女尊男卑社会とも言えばよいのか…。

 さっきの門衛のお姉さん方も、道中で武装してる面々もやはり圧倒的に女性が多いんだよなあ~。


 いや何となく察してはいたよ?

 あのラウルフの村からなんか違和感あったしさあ。

 ルッツも『メスがオスを近くに置いて守るのは当然』みたいなことを片言で言ってたし。


 道理でこんな草臥れ掛かった中年男に皆して優しくしてくれるわけだよ…。


 まあ、俺に突然モテ期(異世界限定)が来た訳ではなかったようだな。

 凹む。

 けど、ルッツ達との思い出だけで俺はこの先の人生を悔いなく生きられそうだ。

 男って単純な生き物なんです(偏見)


 そして二つ。

 一つ目に随行するが、この世界では女の方が男より強いか、男並(俺基準)であること。


 そう、皆揃って逞しいんです。

 筋肉とかモリモリでして、俺よりも背の高い八頭身や九頭身がゾロゾロいるわけです。

 逆に見掛ける男はガリガリのモヤシ(ただし、顔は良いので単なる悪口)ばっかだ。

 背も低いし、俺並の体格は稀。

 ラウルフの村の男獣人らしきのにはそこそこデッカイのが居たけどな。


 でだ、そんな逞し過ぎちゃう女性達から謎のプレッシャーをアチコチから感じてしまう俺は堪らず逃げるようにしてここまでやって来たわけです。

 しかも、俺の首にある痕がかなり目に毒らしいので、俺は速攻で門近くにある露店で長めの布(50ブロンズでした)を購入してマフラー代わりに巻いている。



 てか、あの門衛の若い方の人。

 俺をずっと顔真っ赤でガン見してたっけ…正直ドキドキしちゃったよね(変態)

 

 だが、それ以上の詳しいことは現時点では判らない。

 ルッツ達に返り討ちにされてた連中の中には男もいたし…。

 いちいち鑑定アプリを使ってたわけじゃねえしなぁ。


 後でまたその辺は調べるとしよう。


 最後に三つ目。

 俺の謎のユニークスキル【種男】のスキルレベルがつい昨日上がった。

 なんかドタバタしてたから後回しにしてましたメンゴ。


 【種男】Lv1になったことで、俺の端末から使える種メイカーの日に使用できる最大回数が1回増えたのと。

 新たにアンロックされた*ドロップアイテムにスキルレベルに応じた種アイテムが追加*という能力。


 …今日はまだ種メイカーを使用してないが、今の所立て続けに出たのが――柿の種・柿の種・柿の種(偽)であるので、良い加減にして欲しい。


 え? 柿の種(偽)ってなんだって?


 …だってそう鑑定アプリでもアイテムボックスでも表記されるんだもん。

 因みに、植えても芽は出ないってさ。

 だろうな。お前はピーナッツと一緒に食べきりパックにでもされてろって感じのそんな謎のアイテムです。

 たった一粒だが、ホームシックになったら食べるとしよう。


 肝心なのは、ドロップアイテムの件だ。

 こればかりは…やはりモンスターと戦闘しなければ検証できんだろうなあ。


 他にもまだ追加能力はあるっぽいし…まだ、本気で役立つか疑ってるが……マジで頼むぞ俺のユニークスキル!



「あの…ギルドに御用ですか? そんなところへ立っておられずに、どうぞ中へお入りになって下さいませんでしょうか?」

「あ…ハイ。すんませんした」



 俺がギルド前で気合を入れていたら、流石に単なる不審者に見えたのか。

 先程から玄関で掃除をしていた男性職員さんに声を掛けられた俺は申し訳なさそうにペコペコしながらギルドの門を足早に潜ることになった。


 

 中央ギルドとやらの中は結構な人の数だった。

 そもこの中央ギルドは冒険者だけでなく商人や一般市民も立ち寄る役所染みた場所らしいな。

 建物自体もかなりデカイ。

 俺の知る地元市役所の倍はデカイだろう、三階建てっぽいけど…一階の天井が兎に角、高いのだ。

 下手すりゃ建物自体の高さは…●オンだな。

 屋上に●ーナーでマイ●ルな映画館があるヤツ。


 左右にもブースでちょっとした市場っぽくなってたり、これまた鉄板の酒場めいた場所まであるので目移りするが……とりあえず、玄関先に居たピシッと制服を着こなした男性職員さんの案内に従ってギルドの総合カウンターという場へと行ってみる。



「おお…結構並んでるなあ」



 横に広く、仕切りのあるカウンターにはそれぞれ列ができている。

 平均して十人程度だ。

 それが十列近く…おや?

 だが、そのド真ん中だけがポッカリと空いていた。

 しかも、カウンターにはなんの嫌がらせだとばかりにイケメンばかりが並んでいやがるのだが…その空いているカウンターに座するのはどう見ても女性である。

 大きく胸が開いた厚い革服に身を包んだ、しかも巨乳美女であった。

 これは、どう考えても俺にはラッキーでしかない。


 俺は喜び勇んでそこへ向かおうとすると……思わぬ邪魔が入る。



「ちょっと待て」



 だ、誰だ!?



「まさか、そんな年増の男身で冒険者になろうだとか考えているのではないか?

 フフ…止めておいた方が良い」

「…………」



 俺の前に突如として湧いたポップしたのは見事な赤毛を火の玉のようにして縛っている少女であった。

 サークレットに剣に革鎧…どこの女勇者だよ。

 まあ、こんなんでも冒険者なんだろう(他人事)

 その理由は、彼女の近くには彼女の仲間パーティらしき若い男女の姿も見えたからだ。


 だが、彼女にとっては不遜甚だしいだろうが、その…ルッツ達と比べると余りにもチンチクリン(死語)だった。

 女はデカイばかりと思ったが、彼女のような背が百四十にも満たなそうな娘もいるんだな。


 確かに可愛いが、俺はぶっちゃけ偏見なく言えばロリコンではない。

 説明しよう! この不肖タネモトは若けりゃまあいいじゃんなんていう軟弱な考えよりも、そもそも受け身な俺にはそれなりに実戦経験のあるmatureベテラン辺りが守備範囲なのだ!(ビシィッ!)

 だが、修羅場は怖いから人妻NGという面倒臭い癖のある男なのだ!


 というか、この横槍のせいで周囲から俺への視線が集まっちまったじゃねえか。

 どうしてくれんの、これ?



「…ご心配なく。お嬢さん?」

「な…っ!?」



 俺はマックス努力レベルの激渋ボイスと渋顔(因みに●はんが●スムくんのCMを参考にしているぞ)をお見舞いして、その少女の頭をポンポンとやってからその横をすり抜ける。


 なんか、その場がどよめいた気がするが……きっと、気のせいだろう。


 俺は絶対に『あれ? なんか僕やっちゃいました』系のコメントはしないと決めてるんでな。



「銀貨で五枚だ」

「はい?」



 開口一番にカウンターの女性からそう言われる。



「どうにも依頼って感じのツラじゃないし。アタシはアンタの顔を始めて見る。…オマケにアンタは異邦アズマ人ときたもんだ。身分証明の登録…違うかい? その登録料が5シルバーなんだよ。おっと…検問を通って来たんだ。最低限、銀貨くらいは解るだろう?」

「あ…ああ、なるほど」



 俺は何かまた癖のある人だなと思いつつ、素直に銀貨五枚をカウンターの上に置く。



「……(ニヤリ)毎度どうも」



 そう言って女性職員が銀貨を鷲掴みにして身を乗り出す。

 その顔はまたルッツとは違う女の艶やかさが滲み笑みがあってゾクリとする。

 アレ? 俺ってマゾなのかしら。



「で。登録にあたって…ミルファ近辺での滞在目的をお聞かせ願えるかな?」

「ええと…冒険者になりたくて?」

「…は? 冒険者…?」

「アッハイ」



 女性職員さんが俺の背中にある剣をチラ見した後、フッと噴き出してその様相を崩して俺にこう言ったんだわ。



「そりゃ何の冗談だい。悪いがアンタに冒険者なんてとても無理だ。そもそも、正直言ってしまえば…冒険者以外の仕事だって斡旋できかねる、だがね」 

「……おぅふ」



 こうして、私はミルファ到着初日に初ギルドの初対面の女性職員さんから無職宣言を突き付けられてしまいました。まる。



  (種)



 ▼勇者タネモト▼


 ▶レベル:1   EXP:▮▮▮▯▯▯▯▯▯▯

 ▶アーキタイプ:戦士

 ▶身分:ミルファの無職

 ▶称号:狼族の情夫

 ▶HP:15   MP:0

 ▶所持金:61シルバー、50ブロンズ

 ▶攻撃力:0   >付与:無し  

 ▶防御力:1   >耐性:無し

 ▶筋肉:F

 ▶敏捷:F-

 ▶魔力:F-

 ▶精神:F-

 ▶知識:15

 ▶状態異常:無し


 E:クロース

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――


 勇者タネモト◀スキル・カスタマイズ


 【種男】Lv1     〔植物学〕Lv1

 〔性交渉〕Lv0    〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


  ==残り予備スキル枠:10==


 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


 *種メイカー最大使用回数:2回(スキルレベル+1)

 *ドロップアイテムにスキルレベルに応じた種アイテムが追加

 *????


 ▼クエストボード▼


 ==今回のノルマ==


 ●今回は試用期間につき、兎に角頑張って七日間生き延びよう!

  (4/7)

 ▶達成報酬:1ゴールド


 ==ペナルティ==


 ●テスター業務の終了。

  (※なお、報酬は発生しません。)


 ==現在進行中のイベント==


 ●仕事を探せ!

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