RP~獣人と斬首と護衛依頼~



  ▶作者からの一言◀


 お待たせ!(淫夢)


 大雪にPC不調が続き、二月前半の連休は散々だったよ…orz

 スマホから書き込みできるようにした方がいいかもですな(^_^;)



  (‥)



 ロールプレイ――とはどういう意味ですか?


 ――それは何かを演じるという意味です。


 日常的に何気なく使われるいわゆる一つのジャンル、RPGのあーるぴぃの部分ですね?



 ただまあ、この場面においては単なるごっこ遊びで済む話ではないという話で…。



 ほのぼのとTRPG(因みにリアルでの経験無し)でキャラシを前にサイコロを振り、GMの顔色を伺う代わりに――


 キャラシ代わりのスマホモドキを手に、俺に向けて血濡れの手斧を突き付ける片言の山賊獣人娘相手に命懸けのRPをしなければならない。



 さあ、どうする?



 恐らくは性格の悪い、いや、確実に性根の曲がったGMがニヤニヤといやらしい顔で俺にそう問いかけやがる…。



 …こうなったらアレ・・を繰り出すしかねぇなあ。



 我らが大和の民草が最終奥義。

 そう、ジャパニーズDOGEZAである!(カッ!)


 いや、寧ろこのまま倒れて五体投地でもいいかもしれない。

 それなら相手の顔を見なくてもいいし。

 ぶっちゃけ、目の前のケモ耳娘が……怖い。

 顔はかんなり可愛いんだけどもな?

 目の前でその、灰色エルフ?の首を手斧でポンと刎ねてらっしゃるわけですし?


 さっき俺が気取られた時にめっさ犬歯剥いて獣人威嚇フェイスしてたしね。

 アレ見たら大半の俄かケモナーの淡い欲情も吹っ飛んでいくこと間違いなし。

 玉ヒュンってヤツだよ紳士諸君。

 少なくとも俺は漏らすとこだったぞ…。


(…いや、もしかすると…もしかするかもしれん。俺、もういい大人だよ? 泣くよ?)


 良し、ならとりま土下寝それで……っ!?


 …………。

 悪寒が奔るってヤツか?

 それとも、既視感デジャヴュ

 

 一瞬だが、眼前のケモが身体を水平に一回転半させたかと思うと……俺の視界がジェットコースターのように変わり、やがて妙な衝撃を後頭部に感じた後……視界いっぱいに空が映る謎の光景がノイズと共に浮かんだ――ような気がする。



 ……コレは恐らく。

 俺、られてるね?



 というか何で?

 生命の危機に瀕して超能力にでも目覚めちまったのか。


 あ。もしかして地面に放った青銅の剣(実際は謎のゲーム仕様で装備できもしねえ。クソゲーだろ!)を俺が拾うとしたと思われたのか?

 そんなバナナ!?(死語)


 だがこのまま行動に示さないのもまた拙い気がするし……。


 昔のエロ…間違った、偉い人はこんな言葉をことわざとして遺している。



 “押してダメなら、引いてみろ”、と。



 俺は上げていた両手を後頭部に組むと…そのまま重力に逆らうことなく背後へと倒れ込んだ。


 ふむ。

 なかなかの衝撃…咄嗟に後頭部をガードしていて良かった。



 さあ、どうとでもしやがれっ!(バァーン!)


 あ。でも命だけは助けて下さい。



「…………」


 まな板の上のコイ状態になっている俺をケモ耳が目を細めながら近づいて覗き込む。


 …あの、血塗れの斧を肩でポンポンやりながら近づいてくるの怖過ぎるんで止めて欲しいんですけど?


「ケモノビト相手に腹を見せルトハ…奴隷村の者カ?」


 ケモノビト?

 ああ、獣人ってことか。

 ファンタジーに付き物の貴族とかの封建制とやらはまだ解るが、奴隷村なんてものまであるのか?


 う~ん。ある程度は想定していたが、なかなかしんどそうな世界だぜ…。


 だが、だからこそっ!

 俺は全力で応じるまでよっ!!


「お、オラァ…オラはただの貧しい農民ですだ!? その剣を最寄りの街まで届ける途中で道に迷っちまっただけなんだぁ! どうか命ばかりはお助けくんせぇっ!!」

「…………」


 某伝説の子役ばりの同情するならアレしてくれ!レベルの名演技で、俺は完全にこの世界のいち農夫となった…!


 最悪、その俺がいかにも大事にしてるフリをする女神からの餞別ゴミだけで済めば万々歳の完全勝利となる。

 そもそも、ファンタジー世界においての青銅製の剣の価値ってどうよ?

 決めつけは良くないが、先ず最序盤の武器としてすら懸念が残るブツだろう。

 登場するのだってDQか四角い会社発のRPGくらいなんじゃねーの?



 彼女が俺の身体を跨いで見下ろし、鼻をスンスンと鳴らす。



「嘘を吐クナ」

「……はい」



 はい、速攻でバレた!

 これにて(人生が)終了ですっ!

 皆さん短い付き合いだったがアリーヴェデルチ(※さよなら)だ!



「誇り高き森のオオカミは匂いで相手の嘘がワカルンダ」


 はあ!?

 んだよそのチートは!

 俺のユニークスキルとやらより断然役に立つじゃねーか!?

 チキショー!


「マサカ、知らなかっタノカ?」

「そもそも…獣人を見たのすら初めてといいますか…」

「ハァ~?」


 俺の返事を聞いて彼女が顔を顰める。

 再度鼻をヒクヒクさせているが…俺は正直に答えたからだろう、より一層顔の皺を深くしているようだ。



 というか。

 今更だが、彼女の恰好がヤバイ件について…。(迫真)


 その獣人文化とも言えばよいのやら…彼女は首から原始的な首飾りと二枚の布らしきものを両脇から垂らし、その他はガーターベルトらしきものと前面十五センチ四方だけのフンドシめいた布切れのみ。


 完全に痴女だ。

 寧ろ、全裸よりエロイ。

 一般的にはこの極限スタイルを着エロと言ったりするんじゃなかろうか?


 つまり…絶賛仰向けの状態の俺の上に跨る彼女の上半身に実ったメロンは丸見えというか…それは見事に堂々と放り出されているわけで。

 尻尾が微かに左右上下する度に唯一下半身を隠す布が悪戯に舞う……どころか、そもそも俺の視線からだとモロに×××が丸見えなわけです。

 ええ、無修正なんです。

 国外…いや、異世界規格なんですね、はい。


 カショー。


 気付けば、俺は取り出したスマホモドキでその光景を撮影してしまっていた。

 おっと、これは盗撮なんかじゃあないんだぜ?

 鑑定アプリを試してみただけだ。

 

 決して、画像や動画が記録できない事実を再確認して心の中で盛大に舌打ちしたりなんかしていないんだぜ?



 ▼????▼


 ▶レベル:??  EXP:?

 ▶アーキタイプ:????

 ▶身分:????

 ▶称号:????

 ▶HP:???? MP:????


 ▶攻撃力:??? >付与:不明  

 ▶防御力:??? >耐性:不明

 ▶筋肉:?

 ▶敏捷:?

 ▶魔力:?

 ▶精神:?

 ▶信頼関係:遭遇

 ▶状態異常:不明


 

 …………。

 一応、ステータスは鑑定してくれたようだが。


 肝心の鑑定ができてないな。

 全く以てして相手の正体のシの字も判らん。

 マジで使えねぇー。


「…? 何をシテル。……あア、腰が抜けタカ?」


 おお…マジであの女神が言った通り、コッチの世界の住民には俺が手にする端末を認識できないみたいだな。

 いや、認識されてたら盗撮だってキレて踏み殺されてたに違いない。


 しかも、俺の手を掴んで立たせてくれようとしている。

 …え。優しい?(トゥンク)


 ――ハッ!?


 …ダメだ。

 俺は起き上がれん状況にある。


「どうシタ?」

「いや…その…ちょっと…」


 迂闊にも刺激的な光景と自身の生命に危機が迫ったからなのか…俺の息子が「やれやれだぜ」と起きてしまったのだ。

 目の前には若い女性…つーか高校生くらいの若さに見えるケモ娘。


 ぶっちゃけ、久し振りに死にたい。


「オマエ……ほォ~ウ?」


 完全に立ち上がらずにしゃがんでいる俺を見て目を細める彼女。

 …え? 怒んないの?


「スマン。男の前デ礼を失シタナ?」

「へ?」


 むぎゅ。


 垂らしていた二本の布で、俺にわざと・・・見せつけるようにして自身の胸を縛り付けた。

 へぇ~そうやって使うんですね!

 寧ろ、もっと胸が強調されて俺の先生!お腹が痛いんです!状態が悪化するんだが!?


 そんな苦しむ俺の様を見てより笑みを浮かべているようだ。

 …マジで痴女なの?


 そんな折にガサガサと近くの草むらから音がして四つ・・の人影が現れる。


 いや、正確には二人。

 彼女と同じくケモ耳と尻尾を持つ水着よりも全裸に近いスタイルの女性。

 コッチはより容姿が若く見え…下手すりゃ中学生くらい。

 異世界に条例や警察がなくて(恐らくだが)ホッとする光景だ。


 落ち着け、ホッとしてる場合じゃない。

 もう二人分は彼女らが手に引き摺っていたもの・・だった。



「仕留め終わっタカ」

「「……(コクリ)」」


 頷き返す彼女らが前に放り出したのは人だ。

 さっき首を刎ねられたヤツと違って完全に人間(まあ、漠然とした意味で外人だが)だった。


 片方は鎧を纏っていたが髪の長い女性だったようだ。

 さきほど川縁で見つけた死体と同じく頭部を唐竹割にされている。

 うっ…思い出したら吐きそうだ…。

 てか、十中八九コイツらに殺されたんだろうがな。


「ううっ…何でもする。見逃してくれぇ…」

「っ!?」


 もう片方の若い男の方は相当ボコボコにされてるけどまだ生きてるぞ!?

 ふむ。どうやら殺さない奴もいるのか…良か――


「始末シロ」


 どぅえぇー!?

 連れて帰ってきたのに即処刑!?


「「…?」」


 ほらぁー!

 ソッチの二人も「え? マジすか?」みたいな顔してるよー!?

 そんなに焦って殺生しなくてもいいんじゃないのぉー!

 せめて、やるならやるで俺を解放した後に頼むぜ!


「(チラリ)……代わりナラ、見つカッタ。どうセ裏切ったヤツは皆殺シダ。手間が省ケル」


 え。いま…俺をチラ見しなかったか?

 その皆殺しリストに俺も漏れなく入ってないよねヤダァー!?


「……(コクリ)」

「ひっ。た、たすエペッ――」


 その男を連れてきた方のケモ耳が渋々手にした鉈らしきものでいとも容易く男の首を刎ねてしまいました。まる。


「まさか…次は俺の番――ってオチじゃあないですよね?」

「フフッ…。オマエ、死にタイノカ?」

「何でもしますから助けて!?」


 俺はすかさず会心の土下座を見舞う。

 更に五体投地からの身体ピーンのコンボで斬首への抵抗を試みる。


「冗談ダ。…それト、オマエ。何か勘違いしテルゾ? コイツラと違ッテ、ルッツは山賊デハナイ」

「え?」


 どう見ても堅気には見えねーけども?


 やや片言の彼女の言葉に耳を傾けると、彼女の名はルッツ。

 誇り高きオオカミの女獣人で、この辺を縄張りしている流れの獣人らしい。

 そんな彼女の手下というか、子分というか、妹分というか…。

 ディンゴの女獣人であるトァムとコヨーテの女獣人のニゥコ(二人とも微妙に発音し辛い)の三人で活動しているんだとさ。

 ディンゴとコヨーテ…う~んどっちも名前だけは聞いたことがあるレベルで、犬か狼の仲間だったようなイメージだが、正確には判らない。

 そもそも彼女らのケモ部位の見た目も色違いくらいで…そう変わらない感じだしなあ。


 で。そんなルッツたちがどうしてこの灰色エルフモドキとその愉快な仲間達をコロコロしていたのかというとだ。

 彼女らは自由気ままに自身が決めた縄張りで狩り暮らしをしているそうだが、時たま縄張りを通る者から通行料として物資を分けて貰っていたらしいんだな。


 …それって、いわゆる山賊なんじゃねーの?と、思ったが一先ずは置いておく。


 そんな彼女達の縄張りに別の土地から山賊がやって来たわけで…必然的に獲物通行料の取り合いになった。

 そんな折にその山賊のライバルで彼女らに好意的に声を掛けてきたのが……今日、俺がその最期を見てきた彼らだったらしい。

 協力してその山賊を潰そうという話だったのだが、つい先日に(ほぼルッツたちの力で)山賊共を片付けたら、今度はルッツら諸共始末しようとこの灰色エルフモドキ達が背後から襲ってきて……まあ、こんな風に異世界風アウトレイジになってしまったと。


「報酬がアレバ仕事はヤル。奪うダケノ山賊と一緒にされルノハ業腹ダ」

「ふうむ。なるほどねぇ……じゃあ少し、俺に雇わる気はないか?」

「…ム。オマエガ、雇ウ?」


 おっとっと?

 別段、俺は未だロールプレイを諦めたわけじゃあないんだぜ?

 話が通じる相手なら別の切り口でいこうってだけの話さ。


 だだ、嘘がモロバレなら話し方は素に戻そう。


「ここから一番近い村か街までの案内を頼みたい。…そうだなぁ、できればギルドがあるとこが良い」

「…………」


 ギルドなんざ適当に言っただけだがな。

 単に人が集まってて、この世界の情報が集め易い場があれば良い。

 だがこの手の異世界じゃ、定番だろう?


「ギルド、か。ルッツは入ったことが無イガ、この近クデ一番大きいニンゲンの街ナラ――…ミルファ、だナ。ケモノの脚ナラ夜通シ一日で着ケル。オマエの脚に合わセルナラ…三日は掛カル」


 三日ね…まあまあの距離だな。


 それと、報酬はどうするか?

 そもそもこのシルバーとやらの価値が判らんからなあ。

 今後を考えると全額出すわけにもいかんし…。 


「五十シルバー出そう。コレで連れていけるとこまで…頼めないかな?」

「………(スンスン)…本気ダナ?」


 …ヤバイな。

 こんなんで足りるか!ってキレなきゃいいが…。


「…どうヤラ、オマエ。本当にケモノビトを知らナカッタ。ルッツにニンゲン共のヲ何の意図・・もなく差し出スノダカラナ」


 意味が解らん。

 だが、報酬額には文句はないみたいだな?


「いいダロウ。雇わレテヤル。……だガ、いいノカ? 今夜から暫ク――“月が丸い”ゾ?」

「……満月ってことか? 別に構わないけど?」


 俺の返事にルッツは目に見えて上機嫌になり、何故か後ろの二人は驚いたような感心したような顔で俺を見ている。

 

「…気にイッタ。気の強いオス、ルッツは好きダ! …名前。オマエ、名前ハ?」


 名前を聞かれたのでタネモトと答えるも何故か通じず。

 結局は特に捻りも無い、種繋がりからシード……シドと名乗ることにした。


 仲間?とまではいかないが、コレで一応は人の居る場所まで行ける気がする。



 どうにかして、俺はこの異世界であと七日間…無事に生き延びなければならん。



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