ISEKAI ザ・ファースト・コンタクト



  ▶作者からの一言◀


 今回はグロ・●ロに注意!(笑)



  (‥)



 君がもし、もしもだ。

 見知らぬ土地…しかも、モンスターだのが本当にいるやもしれん弱肉強食ウォンチューな異世界のとある森の中に来てしまったら……どうする?


 しかもだよ。


 割かし近くから人の悲鳴(推定手遅れ)が聞こえたりなんかしちゃったら…どうする?

 ええっ!?

 どうするかって聞いてんだよぉ!?

 さっさと答えルルォ!?



「…ハァ…ハァ…(※動悸の影響です)……フゥー。わかった。一先ず落ち着こう?」


 俺は周りに誰もいないのに両手を左右に開いて見せる。

 最初からもう末期症状だ。


 選択肢は二つ。

 否、実質一択だけども。


 一つ、声の聞こえた方へと走る。


 絶対にありえん。

 嫌だ、断じてノーだ!

 俺は一般的なチート主人公ではない。

 女神がブン投げてきやがったこの【種男】が今後どのような活躍を見せるかなど知り様がないが、たった一粒の種(因みに本日は終了)でどう戦えと?


 馬鹿を言っちゃあいけないよ?


 そんな自分のポテンシャルを過大評価して飛び込んでしまえば……ほぼ確定の“残念だが君の冒険はここで終わってしまった!”しかないだろ。


 二つ、声が聞こえた反対方向へと速やかに退避する。


 はい正解です、採用!

 


  (‥)



 そこからねじくれた木々の間、藪や灌木などを何とか通り抜けて進むこと十五分ほど。

 いつどこからジャングルポッケ(※幼児向けの歌)のノリでモンスターが飛び出してくるかもしれんという過去最大のプレッシャーでの行進は、運動不足な俺を物凄く消耗させるのだ。


 だが、そんな折に…どこかからチョロチョロという音が聞こえる。


 俺が耳を澄ませながら音のする方角へと進んでいく。




「か、川だ…」


 少し開けた場所に出られたと思えば、そこには幅二メートルほどの小川が流れていた。

 近寄って覗き込むと、川底まで綺麗に見えるほど水が澄んでいる。


 ……ゴクリ。


 そう言えば喉が渇いたな…。

 だが、どんなに見た目が綺麗そうな水でも生水で飲むのはリスキーな行為。

 それくらいの知識なら流石に小学五年生より賢くない俺にだってある。


 ならば、一度この川の水を煮沸させる必要が――


 …しまった。

 そもそもサバイバル知識も実践経験もゼロである俺には、火を熾すことすら高難易度ミッションであることに気付いてしまったのだ。


「むむむ…だが、やってみるしかないな。その辺に丁度良さげな木の棒と木の板(非常にボンヤリとしたもみぎり式イメージ)が落ちてればいいんだが……ん?」


 俺が川縁をキョロキョロと見渡している内に、清らかな透明度を保っていた小川が俄かに着色・・し出したことに気付いた。


 ……赤い…ように見えるな。


 嫌な予感がしつつも俺は小川の上流へと目を向ける。



「……げっ」



 俺から百メートルちょっと離れた川向うにらしきものが倒れている。

 遠目でも判るほど出血している(川に流れ込むほどに)ようだ…。

 ピクリとも動かない。

 ……死んでいるのか?


 俺は杖代わりにしていた青銅の剣を始めてそれらしく・・・・・構える。


BEEPビー


 ガシャン。


「…へ?」


 謎のビープ音と共に何故か俺が手にしていた剣がスポンと抜けて地面へと放り出された。


 何が起こった…?

 慌てて音の発生源であるポケットのスマホモドキを取り出す。



 *あなたはこの武器を装備できません*



「はあ!?」


 *装備するには筋肉が不足しています*

 *スキル〔戦士〕または〔剣士〕が必要です*


 そう画面に表示されていた。


「じゃ、じゃあなにか? この剣を俺はそもそも装備できないってのか…」


 …………。


 じゃあこの剣いらねぇええええええ!?

 雇い主アイツも端から装備できないもの寄越すなよぉ!


 俺は拾った剣を川に向って全力で投げつけたい…という怒りを何とか寸前で鎮めることに成功した。


 取り敢えず、様子を見に行くか…。

 なんせ、この異世界初のファーストコンタクトになるだろう。

 相手死んでるかもだけど。


 俺は一応、役に立たない(現状装備不可)剣を手に近付いていき、少し追い越してから川向うへとジャブジャブと川を渡る。

 深さが膝下くらいで助かった。



「うっ…!?」


 だが、その数秒後に様子見に来てしまったことを後悔したぜ。


 恐らく男…だった・・・

 うつ伏せに倒れていてくれたことだけが幸いした。


 しかし、その頭部はまるで弾けた果実のようにバックリと裂けてピンク色の白子のような塊がブリンっと零れ出てしまっていた。

 それに、肩口から背に続く深い傷口からは骨や内臓がのぞ…――


 先に言っておくが……仮にお食事中の方がいたらもうし「ヴェオロロロオロロロロロロロォ~…」


 生まれて初めて見る惨殺死体に俺は盛大にゲロゲロしてしまった。


 ……普通、その対象から咄嗟に逸らして吐くものなんだろうが。

 俺にはそんな余裕すらなく、その亡骸にダイレクト吐瀉物だ。


 ガチで祟られそうだが…すまん、勘弁してくれ。




 ふぅ~…スッキリ。


 いや、強がりだからね?

 日常なら心療内科に受診するまであるよ。


「ウプッ……一体、なんで殺されてるんだ? さっきの悲鳴とは別者か…」


 この傷なら、こんだけの流血も納得だ。


 だが、恐るべきことにこの仏さん。

 奥の森からここまでやってきたらしい…血痕が続いている。


 俺はその時、精神的なショックで朦朧としていたのか…。

 迂闊にもその血痕を辿って森へと入っていっちまったのだ。

 

 こんなん、もう死亡フラグぞ?



  (‥)



 暫くソロリソロリと血痕を辿りながら中腰で進んでいくと、その先から人が言い争う声が聞こえる。


 俺は木の影を伝いながら様子を伺うべく更に近付く。



「頼む! 許してくれ!」

「…駄目ダ! よくモ騙し討ちニしようとシタナ」



 そこには地面に這いつくばって(正確にはもう一方に背中と首を踏みつけられて)赦しを請う男とそれを押さえつけ、その首筋に血濡れの手斧を突きつけている女の姿があった。


 ……てか、どっちも人間・・じゃあねえぞ?

 どうなってんだ?


 あ。すいません…俺ってばここがISEKAIであることをすっかり忘れてた。

 異世界なら仕方ないねってそんな訳あるかぃ!?


 男の方は灰色の肌に…耳が長い?

 もしかしてあの有名どころのエルフか?

 …の割に人相が悪い上に耳が垂れてるなぁ。


 上に乗っかてる女は……ケモ耳がある。

 主に耳と尻尾に重点を置いた日本人には需要の高いタイプの獣人のようだな。


 ほほう…しかも結構可愛い――


「死ネ」

「あびゃァ~」


 ズパンッ! ブシュウウウウ~…。


 ギエピぃー!?

 速攻で首を刎ねやがったぞあの女獣人!!

 ひ、人殺しぃ~!?


 てか、やられた方もなんだ、その気の抜けた断末魔は!

 ふざけてんのかっ!


「…ッ! 誰ダ! そこニ隠れてルノハッ!大人シク出てコイッ!!」

「ひぃー!? モロバレぇ!? …あっ」



BEEPビー


 ガシャン。



 咄嗟に構えたのが装備判定に引っ掛かったのか。

 持っていた剣がまた俺の手から勝手に放り出されて、彼女の足元へと飛んでいっちまったよ…。

 まったく、やれやれだぜ……!(※死ぬほど冷汗掻いてます)



 殺されたくなかったので俺は渋々両手を上げて隠れていた藪の中から出た。



「……フン。潔く降伏するトハ。どうやら馬鹿なニンゲンではナイナ。コイツらの仲間とは思えンガ。オマエ。何者ダ…?」



 どうやら、これから俺は命懸けのロールプレイをするハメになるようだな…。



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