ISEKAI その説明回 Part.2
「あの…何か出てきたんですけど…?」
『それがタネモト様に与えられたユニークスキル【種男】の能力の一端である“種メイカー”によるアイテム生成です!(バァーン!)』
バァーン!…って言われてもなあ?
俺の掌の上にはどこか見慣れた細長い形の植物の種子らしきものが一粒コロンと転がっているだけ。
無論、画面上に表記されてるのは“本日の残り使用回数:0回”…。
……こんなんでモンスターが闊歩する異世界を生き延びろってか。
さてはこの女神、俺を殺す気だな?
『それはタネモト様の早合点というものですよ? 女神ヘレスとしてテスターの皆さんには公平に接しなければなりません。…ですが、実を申せば、私はあなたに
「……この種が? ――ハッ!(※背景が暗転して一筋のインパルス)」
待て待て、待てよ!?
こんなにも何故かDQフリークの女神様のことだ。
一見、この単なる
そう、
俺は覚悟を決めるとそれを口に放り込んでゴクリと飲み込む。
…………。
特に目立った変化は無い。
俺は種メイカーのアプリを閉じて、再度ステータスを開く。
…………。
フッ…なるほどね。
うん、特に変わったとこは無かったよ?
『何をなさっているのですか? タネモト様がお出しになったものは単なる
「…………」
すいません、純粋無垢な顔で死体蹴りみたいな真似するの止めてくれません?
まあ、ただの柿の種なら身体に害はないだろう。
え。でも、それじゃあこのスキル……何の役に立つの?
『さ。残りのアプリの説明を続けますね? その下のカメラアイコンを……あ~…先ほどの生成されたアイテムに対して使って貰うつもりだったのですが。もう無くなってしまったので、後で試しにその辺の草や石コロを撮ってみて下さいますか? 直ぐに意味が御分かりになって頂けると思いますので』
「はい、すいませんでした…」
そのカメラアプリ?は特に捻りも無い従来のスマホからの丸パクリ(アイコンも同じだしな)っぽかった。
写真か動画を撮れるのか?
だが、画面上にアルバムアプリ的なものは存在していない……イミフだ。
『では、今度はその左のアプリをお願いします』
「いやコレってグーグ…」
『地図です』
「アッハイ。そうっスね」
画面左下のアプリを起動すると、見た覚えのある地図が表示された。
真ん中の大陸と小さな島。
その左右上に二つ、下辺に一つの大陸……あの変な装置のある部屋のモニターに映し出されていたものと同じだ!
そして青と白地だけのかなり雑な地図上に赤く小さな点のようなものが十個ある。
『そのマーカーはテスターの皆さんの位置を示しています。点滅しているのがタネモト様の現在位置となります』
「ふむ……良く判らねぇ」
そもそも地図は全くの白地のみ。
一応、俺は現在中央の大陸の…あ~……時計で言うと3の方角辺りに居るようだな。
他にも俺の場所から下に4過ぎくらいの方角に一点。
8と10の方角に一点ずつと中央ど真ん中に一点だ。
それと左上の陸に離れて二点。
下の陸に纏まって三点。
近くの小さな島や右上の島には赤い点は無い。
つまり、この中央(どんだけ広いかは知らんが…)にはあの場にいた俺を含めて五人の
カイドウ……は、割とどうでも良いが。
ルリちゃんの無事が気に掛かるなあ。
『現在は最初期の状態ですが、今後この世界の情報をタネモト様が入手されると自動的に更新されますので』
「(不親切な仕様だなぁ)…でも、まだ誰が誰だか判らんけど各所在地が判るのは別に困らないな」
まあ、この一週間で合流できる可能性なんて皆無だろう、多分。
『最後に説明する右下のアプリですが、それはクエストボードです。今後、当社から課すノルマや成功報酬、それにタネモト様の
「あ!ちょっと!?」
『ブツッ! ツー…ツー…』
「マジで切りやがった!? チクショーめ!」
(‥)
本当にそんな説明だけかよ…。
ただ、気になるのはこの画面に表示されるアプリの数だ。
全部で7つのアプリ…。
恐らくアイコンが3×3と並ぶ感じなんだろうが…真ん中の俺のユニークスキルであるらしい種メイカーの左右のスペースがぽっかりと空いている。
……ただの偶然だろうか?
ま。そんな事を今考えててもしゃあないか。
とりま最後のアプリを開いてみよう…。
▼クエストボード▼
==今回のノルマ==
●今回は試用期間につき、兎に角頑張って七日間生き延びよう!
(0/7)
▶達成報酬:1ゴールド
==ペナルティ==
●テスター業務の終了。
(※なお、報酬は発生しません。)
==現在進行中のイベント==
●特に無し
うん。
これは普通に便利で助かる機能だな。
いや、一応この強制サバイバルゲーがお仕事だってんなら必須か?
非常にゲーム仕様っぽいのに、絶妙に生々しい…。
おっと。
そういや、女神のひとがカメラアプリでその辺の草や石コロを撮ってみろとか抜かしてたな…。
俺はカメラアプリ(まんまだったぞ…生きて帰れたら、開発元に報告してやる。あっ…そういや、その辺の事ができんよう呪われてるんだっけ? 女神パないな)を起動してその辺に好き勝手生えている草に向けた。
「お?」
不思議なことに被写体にしている植物の全体がキラキラとした光(画面上では)で輪郭が強調されれいる。
カシャー。
俺は試しにそれを撮影すると数秒間のロード(あのクルクル回る輪っかのヤツ)の後に“鑑定結果”と画面に表記されたのだ!
「まさかの鑑定アプリだと!? こりゃあ便利じゃねえか!」
だが、その俺の淡い希望も一瞬でくすむことになる…。
何故かって?
だってその鑑定結果がなんと……――草。
「…………」
嫌な予感から背中に汗が伝う。
俺は暫し、兎に角目に映る周囲のもの(できるだけ見た目が異なるもの)をそりゃあ撮りまくったさ。
その結果…。
石・草・草・草・木・草・木・石・草・草・キノコ・草・石・草・屍骸・草・草・骨・草…………フ●ック!(※あの女神、●すっ!)
以上です。
因みに死骸はなんか見た事もないキモイ昆虫で、骨はその辺に転がってたヤツ。
……結構サイズが大きいが、まさか人骨だったりしないよね?
はあ…。
普通の森で遭難しただけでもヤバイのに。
モンスターがいる右も左も判らん世界の森でこんな低スペックの俺が生き延びられるのか――
「イ"ェアアアア」
「…………」
おやおや、割と近くからどなたかの
物騒な世界ですねぇ。
と、そんな感じで落ち込んでセンチメンタルになるほど余裕のある時期が僕にもありました。
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