獣人達との旅~銀貨の使い道

  ▶作者からの一言◀


 ステータスについての変更点です。

 1.EXP(経験値)の具体的な修得値をぼかす(悪w)為に百ポイント制からゲージ制(▯×10)に変更しました<(_ _)>

 2.ずっと気付かなかったんですが、魔力のつもりで書いていたステータス能力値にある魔法を魔力に修正しました<(_ _)>

 因みに、魔法と呪文は今後この拙作中では別物として扱います。

 基本オーソドックスに使われるのは魔法の方です。



  (‥)



 今更だが、ルッツとのピロートークから得た地理情報は地図アプリにちゃんと反映されてたぞ。

 それと地味に俺の知識が10になっていた。


 恐らく、最初期の5から変化した理由は昨日ニコちゃんから〔植物学〕スキルを習得したり、ルッツ達から色々と見聞きしたからだと思う。


 多分…レベルアップはニコちゃんとのやり取りが大きかったんだと思いたい。


 決してルッツと一線を超えたから、などという不道徳な理由で初のレベルアップを果たしたとは……とてもじゃないが、他の連中には聞かせられん。

 特にルリちゃん辺りに知られるのは絶対に避けたい。

 こんな俺に懐いてくれているリアル姪と近い年齢層故に、彼女から『不潔です』とか言われなぞしたら俺は素で泣くだろう…。



「…なあ、ルッツさんや?」

「ン~?」


 俺の肩に顎をわざとらしく乗せてきたルッツがそう返す。


「どうしてそんなに俺とべったりくっついて歩いておられるんですか?」

「別に構わナイダロ?」

「いやぁ~歩き辛いしさあ? それに…」



 あからさまに昨晩から俺に対するルッツの距離感がおかしいんだ…。


 朝飯を済ませて出発してからずっとこんな感じ。

 常に俺の斜め後ろで器用に歩調を合わせてピッタリと俺にくっついている。


 三十秒に一回のペースで俺の尻が彼女の尾で叩かれるという謎のスキンシップ?も継続中だ。


 まあ、正直俺だって可愛いくて若い(多分)女の子(ケモだけどさあ)にくっつかれて嬉しくないわけじゃあないよ?

 でもさあ…。


「「…………」」


 イチャイチャしている俺とルッツの前後を行くタムとニコちゃんのチラ見視線が非常に気になるんだぜ…。


 二人の役目は昨日と同じで、基本は斥候役と殿しんがり役だ。

 距離感は互いに目に入るかどうかくらいだが…大して五感が鋭いわけでもない俺でも視線だかはしっかりと感じるんだよなぁ~?


 そりゃあ、自分達のボス的なポジションのルッツがこんなしょぼくれた中年とイチャコラしてたらそれなりに思うことも…ありまくりだろうな。


 でも、あの二人も二人で俺に対してどんな気持ちでいるのかよく判らんのよな?


 今朝のことだが…朝飯つっても軽く済ませるってことのなのか、俺に出されたのはタムとニコちゃんが森で採ってきたらしい謎の食べ物・・・だった。


 見た目は完全にホヤ(ピンとこない人はネットで画像を調べてよう! 因みにホヤ自体は普通に美味しい海の幸だぞ!)だ。

 だが、磯臭さなぞ欠片も無い…何だコレ?


 どうやって食べればいいのか困っているとルッツ達は速攻でバリバリ口の中で噛み砕いて食べているようだ。

 ああ…噛み砕いた殻はペッするのね。

 硬い殻……なんだマジで陸生のホヤなのか?

 まさか変な虫の卵か蛹ってこたぁーねえよな…流石に虫食には少し躊躇いがあるぞ。


『(あぐあぐ)……硬いなぁ』

『噛んデヤロウカ?』

『え…』


 …それはそれで……ちょっと恥ずかしいなあ。

 仕方なく俺は渾身の指力で殻を剥くことに。


 程なくして殻にパキリと割れ目ができ、俺は何とか中身を取り出す事が出来た。


 だが――


『うわぁ… ( ˙꒳˙ ;)』


 何故か殻の中から白く白濁した大量の汁が噴き出してきて、手がベトベトになりもうした…。

 しかも、殻をズルリと剥いて出てきた中身は俺が知るホヤなどではなく、半透明のブヨブヨした段々のある楕円体だ…もうコレ、食べ物、俺、見えない(※ショックの余り一時的にインディアン化しています)


 だが、既に食べ終えた三人が揃って俺を凝視するもんだからさ。

 俺も意を決して食べたよね。


 …………。

 食感はグズグズになったコンニャクのような…巨大なタピオカを噛み締めているような…まあ、見た目通りブヨブヨした得体の知れない何かだった。

 何故か味だけは甘味の少ないイチゴミルクみたいな感じで……逆に不気味だわ。


 敢えてその朝食に供された食べ物の詳細を聞く事を俺は止めた。



 何とかそれを咀嚼して無事飲み込んだ俺だったが、手がベトベトになってしまっていることに気付いた。



『悪い。ちょっと手を洗って……え?』



 何故か俺が両手を見せると左右からタムとニコちゃんが近付いてきて俺の手をペロペロと舐め始めたのである。

 しかも、上目遣いでしたね。


 え!? 何のプレイが始まったっていうんです!?

 …俺、いま百シルバーしか持ってないぞ?


『勿体ナイダロ?(ニヤニヤ)』

    

 悪戯っぽい笑みを浮かべるルッツに見られながら俺は朝から変な気持ちにならんよう必死に素数を数えて耐えたさ。


 因みに正気で数えられた素数は31までが限界でした(秒で終了した)

 だから、朝から変な気持ちになって気まずかったです。まる。



 そんな事があったもんで俺は二人との距離感が判らん状況にある。


 お陰でニコちゃんにまた〔植物学〕のスキルレベル上げをする為に色々と教えて欲しかったのに…その機を失ってしまったぜ。

 ニコちゃんは言葉が流暢じゃないが、それでも〔植物学〕Lv5を持ってたからなあ…できればもう一度くらいご教授願いたいところだが。



  (‥)



 二時間くらい歩いた頃だろうか。


 先頭を行くタムが時折、左右の茂みへと入っていくのだが…どうやら、ルッツを呼んでいるらしい。


 ニコちゃんが俺の護衛に回って数分待つと、またもやドヤ顔を俺に披露してくれるタムとそんな彼女を褒めるルッツが何か・・抱えて帰ってきやがった。


 ……嫌な予感がした。



 ルッツとタムが頭上に掲げているのは体長三メートルは超えている蛇だった。


 まあ、何故か目は一つしかなかったけどな(他人事)



「運がイイ! コレハ昨夜のよリモ美味イゾ!」

「喰うの!?」



 早速少し早めの昼食になりました。

 基本は見つけたら狩って喰うのが彼女らのスタイルらしい。


 味は…まあ、また焼いただけではあったけど普通に美味かったな。

 骨だけ多かったのが難点だが割とアッサリ味だった。

 そういや、何かのテレビ番組で蛇は鶏肉みたいな味がするって言ってたような気もしたな……昨晩のよりは鶏肉に近いな、確かに。



「…シド」

「うわっマジか! ありがとうルッツ!」

「フフン。コレくらイ何てコトナイ」



 なんと! 俺が無我夢中で焼き蛇を貪っていた間に、剥いだ蛇の皮でルッツがサクっと剣の鞘を作ってくれたのだ!(出来立てホヤホヤだ! 多分、この皮全然鞣してねーぞコレ。大丈夫か…?)

 しかも、背中に背負えるように紐まで付けてくれている。

 早速背負ってみた。


 ……うん。そこはかとなく、DQの青髪ツンツンヘアー主人公みたいだ。

 問題は俺のトータルの見た目が、非常に主人公成分が不足している点だな!


「でも、何でまた急に剣を返してくれたんだ」

「問題ナイ。…そもソモ、シド。オマエ、その剣ヲ装備でキンダロ?」


 何で判ったんだ?


 もしかして、ルッツは初遭遇時に俺が装備不可で剣が弾き飛んだ時に鳴ってしまったあのビープ音が聞こえてたのか、と焦ったが…どうやら別の理由らしい。


 何でもルッツ(達)のように戦闘に慣れた者は武器と武器使用者の間にある繋がり・・・のようなものを把握できるらしいのだ。

 つまり、相手が持つ得物は装備可能か不可を知る術が普通に周知されているらしい。

 して、その繋がりが見えない俺には返却された青銅の剣は単なる飾りでしかないことが端からモロバレだったみたいだ。

 ならあの時の悪寒や既視感は気のせいだったのかもしれないな…。


 だが、そんな俺に態々鞘を作ってくれるまでボッシュートしていたのは、トーシローであるヘタレが青銅製とはいえ歴とした刃が付いた剣を単に持ってるのが危なっかしいと思ったからだそうだ。


 俺のルッツへの好感度がヤバイ。

 それと同時に俺がそれほどまでにヘタレに見えるのかと少し凹む。


 それと、ルッツ達は普通に自身のスキルについてもちゃんと認識していた。


「もしかして、ステータス画面とか見れる?」

「ステータスガメン? 何だソレハ?」

「…あら?」


 自分のことくらいは自分で判るだろ? と、言われて終了してしまった。

 この世界の住民には、俺のスマホモドキのような機能が各々に備わっているかと思ったが…どうやらそういう訳でもないらしい。


 ううむ、疑問が残るが仕方ない。

 無事にミルファとやらに着いたらまた調べよう。



  (‥)



 一つ目の蛇を食してから二時間くらい歩いた頃だろうか。


 道なき森から獣道へと変わり、段々と進む路が広くなってきていた。

 

「もウそろソロ目的ノ村が見エルゾ」

「そうなのか。てか、ルッツ達は何の目的で寄るんだ?」

「ン? 決まッテイル。シドかラ報酬ヲ貰ウ」

「え…」


 思わず俺は変わらずに俺に張り付いているルッツから離れて身体を庇ってしまった。

 傍から見れば相当キモイ光景だろう。

 ああ…タムとニコちゃんからの冷たい視線が……ってアレ?

 また、俺じゃなくルッツにジト目が…やっぱり俺との距離が近過ぎることに反感があるのか?


ソレ・・ハ……マタ、夜にナ?」

「…………」

「「…………」」


 断固嫌だ! …とは言えない自分が憎い。


「ルッツはシドの身体ダケデモイイガ。ソウモイカンダロ? 村で酒ト食糧ヲ買ってクレ」

「良いけど…他に使い道もあるだろうし。少しは銀貨シルバーのまま貰っておいた方が良いんじゃないの?」

「…………」


 ルッツはまた筋の通った鼻をスンスンとやりながら顔を顰める。

 え? 俺臭いっスか?(今更感)


「大抵のケモノビトにトッテ銀はダ。持ち歩ク事ヲ酷く嫌ウモノダ。(スンッ)…本当ニ知らナイヨウダナ? 変ナ奴ダナ、オマエハ」



 いや、初耳だっつーの。

 なるほど昨晩俺が渡そうとしたシルバーを振り払ったのはエキサイトし過ぎただけじゃなかったのか。


 …………。

 いや、待てよ?

 じゃあこの世界のでの獣人連中の通貨ってどうなってんだ?

 もしかして、物々交換オンリーなんじゃないか?


 で。そこんとこ踏まえて、この先にある村って獣人ラウルフの村なんじゃないの…。



 俺はその辺のこともルッツに尋ねたが、当人は「ヘーキダ。早くイクゾ」の一点張りだった。



 三十分ほど歩くとずっと頭上を覆っていた木々の絡みある緑の天井がやっと切れ――久々の青空を拝むことができた。



 ホッと和んだのも束の間、直ぐ目の前には丸太を並べた壁が見える。

 アレがラウルフの村とやらか?


 入口らしき場所に二人ほど見張りらしい人影が確認できた。

 …どうやらアッチも俺達を見つけたようだな。


 まあ、取り敢えず行ってみるしかないか。



 あ゛。忘れてた…。


 ルッツ達のステータス欄の称号におもっくそ“山賊”ってあったけど。



 この面子で、このまま村に直行して大丈夫なんだろうかね…?


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