RP~召使いサンチョ~ Part.0



「おい! 行くぞ、サンチョ! 遅れるなよ」

「はいはい!アベルお嬢様。このサンチョ、どこまでもお供いたしますよ!」

「「…………」」



 皆様、お元気ですか?


 晴れて、研修期間を終え、正式?に異世界テスター闇バイトのパート社員になって数日が経った今日この頃……。



 ――僕は現在、水の国アクアントの某子爵家の召使いをしています。



「サンチョ! オレは腹が減ったぞ?」

「~それはいけませんなあ。ですが御安心なさって下さいまし。わたくしめがお嬢様の為に、お昼としてサンドゥイッチィ(※巻き舌)を持参しておりますので」

「おお! ……まさかとは思うが、我が家の使用人仏頂面共に作らせたわけじゃないよな?」

「勿論でございますとも! このサンチョめが今朝の畑で穫れた新鮮なハーブと同じく自ら焼いたパンで作らせて頂いております」

「そうかそうか! では頂こうっ!」

「はいはいっ! 直ぐにお茶の準備も致しましょう」


「……あそこまでプライドの無い男の人も珍しいですよね?」

「いいなあ…僕もお腹空いたよ」

「…………」

「ん? ガーデニア。どうかしましたか?」

「いや…やっぱりあのオッサン、いい尻してんなぁ~って思ってさ」

「「…………」」



 俺の臨時雇用主…というか、正確には俺は雇用者ではなく単なる居候の身だがな。

 そんな俺が現在身を寄せているのが、何の因果かミルファの代官を任せられているオツベル子爵家なのだ。


 で、その御息女であそばせられるアベルカイン・ヴァーリス・オツベルが俺の目の前で何とも無邪気な顔で口いっぱいに俺の手作りサンドイッチを頬張っている。

 

 見た目は火の玉ヘアーのロリ勇者だが、一応は彼女が俺の直接の主人である。

 発育加減はルリちゃんと同じかそれ以下の実年齢は十六歳のこの異世界では立派なレディーであらせられるぞ。

 なんたって、この大陸の人間は女が十四、男は十七で成人と見做されるんだからね。

 随分と半端な年齢だが、この異世界は女が上で男が下とされる文化と風潮が強い。

 故に、この国の兵士は勿論のこと普通は男ばかりのイメージの職種は女性が担う感じだな。

 ドキ!女だらけの力仕事の大工・石工・左官に土方業に、荷運びとか、鍛冶屋の人とかも公衆の面前で堂々と上半身裸とかマジかこの世界?

 あと、めっちゃ気軽に腹筋とか胸(想像以上に筋肉)とか男の俺に触らせてくれるし…むしろ、触ってくれと言われたりもする。

 むしろ、アデル嬢のような現実世界的ニッチな体形の女性の方が珍しいのだよ。


 まあ、そんな世界観であるからして彼女は彼女で自身のロリ体形にコンプレックスを感じているみたいではあるんだけどな…。

 無理矢理、男っぽい(この世界では微妙に聞こえるかもだが…荒々しい?)口調を使ってる感あるし。


 俺はそんなアデル嬢の口元に付いたソースをハンカチで拭ってやった。



「美味しゅうございましたか?」

「うん! サンチョの手料理は美味いぞ」



 あと、何故かアデル嬢はこんな中年三十路男が作る手抜き飯をニコニコと喜んで食ってくれる。

 自炊はしてたから簡単な男料理程度なら材料さえあれば…俺もそれなりにね?

 ここ毎日、朝昼晩と飯を作れと彼女から請われたおかげで新しく〔家庭料理〕などという新スキルを習得してしまったぜ。


 まあ、アレか…大変失礼かつ業の深い話だが。


 男と女の手料理、どっちが食べたいかと問われたら君ならどう思う? という話だろう。

 この世界ではそれが男女逆転しているというだけだ。


 それと、普通は若い男の方がモテそうだが…それはそれで、俺のようなオッサンにも割と需要があることが既に判明してもいる。


 その証拠として、我が主が半ば空気にしているパーティメンバーであるラウルフ・・・・女からの粘着質な視線を臀部で感じる。



 さて、いい加減に俺が何でこんな処遇に甘んじ、彼女らとどう運命的な出会いを果したのかについて語るとしよう。


 …そう、アレはルッツ達と別れてミルファの街の中央ギルドに初めて訪れた時のことだ。



  (‥)



「お、俺が冒険者になれないってのは…どういうことなんですか(震)」

「ふぅーむ…」



 俺は何とか震える声で、俺に“君に冒険者無理ですからお帰りはあちらです”発言しやがったギルドの女職員に向ってそう言い返してやったぜ…(半泣き)



「納得できないって顔だね。……はあ~。仕方ない、本当は名前と年齢と出身地…は答えられればで結構だが、それと幾つか質問をして終わりなんだけど」

「……?」



 相変わらず態度も胸もデカイ彼女がカウンターの裏から何やら取り出した。


 ……深い暗緑色の何だコレ? ブロンズ粘土でできたような粘土版に見える。

 サイズはA5…じゃねえな、B5かな?

 教科書や大学ノートくらいの寸法だって俺は言いたかったわけね。

 端っこには線のようなスリット…切り込みが四本並んでいる。


 …で? こんなもんで何するってんだ?



「能力鑑定の粘土版だよ。その感じだと、初めて見るってツラだね? まあ、原物は大昔に炎国の竜人トカゲ共が編み出した秘術らしいから……君の故郷アズマには無い代物かもしれないが」



 ほお~…鑑定アイテムってヤツ?

 彼女の続けた説明から、この粘土板で使用者のレベル・資質アーキタイプ・各能力値・スキル(レベルまでは判らんらしいぞ)が鑑定できちゃうんだってさ、すごいね!



「おい。止めておけ!」

「そ~だよ、オッサン? ガッカリするだけだってば」

「し、失礼ですよ! 男性にだって、成人してからでもずっと自由な冒険者などに憧れる人は割といるんですから」

「まあ僕とナセルが割とそうだしね。…けど、まあ…その、ね?」

「え。君達はさっきの…?」

「困りますなあ、アベル嬢。業務の邪魔をなさらないで下さいませんか」

「ランハート! さっさとその粘土板をしまえと言ってるんだ」



 突如、俺の背後から乱入してきやがったのは、先ほども列前で俺に絡んで来たメスガキ・オスガキ二匹ずつのティーン共だった。


 おう、ダブルデートなら他所でやれやぁ~? ここはギルドですよ?(憎)



「やれやれ。私だって大の男に恥をかかせたくないからこそ忠告したんだ。……まだ、やる気があるようだな? …使い方は簡単。好きな方の掌を板の上から押し当てるだけだ。すると鑑定結果が出る」

「面白そうだっ……(ぐにゅり)おほぅ!?」



 なんと! 俺が粘土版にオラァ!っと右手をやってやると…どうしたことでしょう?

 予想を超える気持ちの悪い触感と同時に、泥に手を突いたかのように俺の掌の面が沈んでいくではあ~りませんか!


 …しかも、何かメッチャ吸い付くこの粘土板!?

 まさか、俺の右手の指紋を無くす気か!ってくらいの超バキューム。



 まあ、ものの数秒でズポッと…無事に俺のおてては解放されましたけどね?



 俺の手形がくっきりと残った粘土板がやっと俄かに輝き始めるファンタジー展開に…!

 だが、特にそんな感動もない様子であるランハートと呼ばれたギルド職員が粘土版をひっくり返すと、その中央に何やら文字が浮かんできたではないか。


 こう既に結果は知ってるんだけど、如何にもらしい・・・演出ってワクワクす――



「ふむ。まあ、端から判ってはいたが、やはり冒険者は無理だな」

「Oh…(※どうして、君はそんな事を僕に言うんだい)」



 容赦のないランハートの言葉に悶絶しそうになる俺(やはりマゾか?)

 そして、勝手に俺の個人情報を覗き込むティーン達と他多数からの嘆息。

 

 不吉な予感しかない。



「これも務めか…致し方無あるまい。先ず、君のレベルが低過ぎる。(ジロジロ)……まあ、その見た目だし。随分といいとこ・・・・の出なんだろうが、その見た目と年齢でレベル1は問題だ。…君の後ろに居る新人…いや、見習いの男冒険者である未成年のナセルとギルスですらギルドの門を潜る前からレベル2だった」

「……はい」



 背後にいる二人の少年から居た堪れないものを見るような視線を感じるぜ。

 それと、俺はアズマとやらでも富裕層の出身でもない単なる異世界パンピーだよ?



「そして、能力値。力の強さ、素早さ、魔法の器、第六感に関してもほぼ最低値。これでは魔物と戦えない被保護の市民と同じか…それ以下だな」

「……はい」



 呆れた顔のハートランが粘土版の端をトントンと指で叩いて次のダメ出しをする。

 どうやら、粘土版の端にある切れ込みに生じた光の位置で俺の各能力値(筋肉・敏捷・魔力・精神)を表しているみたいだな。

 

 若干、俺の筋肉と思われる淡い光のみが気持ち少し浮いてるだけ、他の三つは最低値を示す最下の横線に並んでいる。

 …やれやれ。俺はこれから成長してモリモリ強くなる男なんよ?

 たかが、レベル1次点で決めつけられちゃ……え? もう、俺の年齢じゃあレベル二桁どころか、6以上になるかどうかすら怪しい?


 …………。


 ……やれやれだぜ(詰み)



「そして最後にスキルだが……実は、レベルや能力値以前にこのスキルの有無で冒険者として認められるかが決まってるんだよ。でだ。残念ながら、君は一切戦闘系のスキルが無い。…………。…ざっと見た感じ、非戦闘の技術スキルだけのようだ。護身用なのかどうか知らないが、その背中の剣も飾りでしかない。…せめて最低一つは戦闘向きのスキルがなければギルド側は冒険者としては認められない」



 恐らく、彼女が一瞬言葉に詰まったのは俺のユニークスキルが再度視界に入ったからだろう。

 どうにもスキルは大きく分けて二つ。更に分けると五つ種類があるらしい。


 …そこんとこちゃんと最初に説明して下さいよ、女神様ボス


 先ず、“技術スキル”と“能力スキル”の二つ。

 簡単にメタく言うと、技術スキルは後天的に最も身につけ易くスキルレベルがLv0から始まる点だろうか。


 俺の持つ【種男】以外の〔植物学〕と〔性…いや、〔植物学〕が技術スキルだ。


 そしてその技術スキルの派生のような存在として職種スキルと武器熟練スキルが存在する。

 ルッツが持っていた〔戦士〕や〔狩人〕などが前者で、〔斧〕スキルが後者だ。


 これらは、明らかに向き不向き、適性の有無があれど…訓練次第で習得またはレベル上げが可能で多くの者が所有しているスキルだという。


 逆に、能力スキルとは先天的に持つ(※ユニークスキルも含める)直接的にスキル所有者の身体能力に影響を与えるスキル群を指す。

 また、技術系と違ってスキルレベルがLv1からなんだと。

 同じく、ルッツの〔生命増強〕スキルと有用感がパないスキルがこれに該当するんだろうな。

 つーか俺も欲しいわぁ~あのスキル!


 だが、こと能力系スキルは簡単に手に入るような代物ではないそうだ…ガックシ。

 

 そしてこの能力スキルとは別に属性スキルなどがあり、これは魔法使いなどにとっては特に垂涎のレアスキルなんだそうな。

 まあ、俺は戦士だしぃ~? どうせMPもないからどうでもいっかなあ~(自棄)



「……一つ。訪ねたいんだが、この種男とやらのスキルは何だい?」

「…………」



 不思議な沈黙が場を支配する。


 いや、ぶっちゃけ説明するのめんどいのもあるが…実は俺もまだよく理解していないんだよね。

 主に女神ヘレスあの上司のせいで。



「むむむ…君の口からは説明し辛い、と? まあ、非情に直球なスキル名ではあるし…?」

「「…………」」



 …アレ? なんか変な勘違いしてません?



 どうして、皆して俺の股間を見やるんです?



「…うぅ。いいなあ。俺もそんなスキルがあれば、しゅうとからネチネチいびられることもないんだろうなぁ」

「そこは、男として頑張るしかないだろ…頑張れ…俺達は頑張るしかないよっ!」



 何故かランハートの隣のイケメン受付男性職員が意気消沈しているのを、その隣のまたもや別のイケメンが目にキラリと光るものを浮かべながら肩を叩いてそいつを慰めている。

 他の男性職員は呆れとも羨望とも思える謎の視線を俺に向けて…ってイヤイヤ、コッチ見てないで自分の持ち場の仕事ちゃんとしなよ?



「ええと…でも、俺。植物学のスキル持ってますし? 薬草採取とか…」

「薬草採取? …何故か非冒険者から簡単な依頼の代表格として勘違いされがちだがね? アレはギルド内でも難度・重要度の高いものなんだ。そもそも需要の高い貴重なアイテムほど危険な魔物が存在する地域である場合が殆どだ。高い戦闘能力は当然必須だし。君のスキルレベルまでコチラでは判らないが…生半可ではない高度な知識が必要になるんだぞ?」

「……はい。ナマ言ってすみませんでした」



 だって、俺の〔植物学〕まだLv1ですから。

 所詮、幾つか草の名前がまだ判る程度ですから。

 背中の剣だって装備できませんから。

 即、装備解除ビーですから。


 何か問題でも――しかねぇよ……(崩)



「最後に君に紹介できる仕事がこの街にはないと言ったが…それも私の悪意あってのことじゃないのさ。……その、君は目立つだろう? んー…色々・・と? オマケに鑑定結果には性交…んんっ! 情事に関するスキルまで持っている。悪いが、安全に稼げる・・・仕事が欲しいのなら、当中央の裏手にある色街に行った方が間違いない」

「…………」



 ああ…まさかの冒険者よりも、夜の商売を勧められる日が来るとは思わなんだ…。


 俺達の会話に聞き耳を立てていた周囲の女冒険者からソワソワした雰囲気と…ねちゃっとした俺に向けられる視線が強まっていく。


 こうなる結果を予想して実は俺を助けようとしていた火の玉ロリガールの顔もトマトのように真っ赤っかだし。

 おい、連れのラウルフ女は舌なめずりまでしやがって良い加減にしろよ?



「失敬。そう簡単な話ならギルドなど素通りするか。むー…そうだな。私としては余り勧めるべきではないとも思うが、一応確認だ。君の能力・・を十全に生かすのであれば、どうだろう? 男を募集している亜人族の要塞に行く気はないか?」

「…………」

「女しかいない亜人族…ハーピーやらラミアやらは常に男不足・・・だ。了承してくれた場合、オツベル家を通して国から少なくない手当も出るし、亜人女は喜んで君の面倒を一生涯みてくれるはずだ」

「…………」

「…お、おい? ランハート? もうその辺で…」

「恥をかかせてしまったせめてもの償いだ。私も帯者の身であるから大きな声では言えんが…ヒソヒソ(信頼のおける娼館に伝手もある)」

「…………」

「ちゃんとアクアントとオツベル家の法に従って、病除けの護符を置いてある優良店だ。あそこの主人は異邦人の男だからと目くじらを立てることもない。…だが、それでも嫌というなら仕方ない。私が――」

「うわああ~っ!! ファンタジーなんて糞だぁあああああ!!」



 俺は絶望の余り、この異世界とその異世界を手掛けたであろう女神を呪いながらギルドから逃げ出した。


 兎に角どこか遠くに行きたかった……。



  (‥)



「え? 泊まれないの? 宿代なら払えるよ…ホラ?」

「ああっと…参ったなぁ~」 



 が、そのままの勢いでミルファの街から飛び出し、ルッツ達のもとへ走っていく体力も無い情けない三十路中年の俺は日が暮れてしまった夜の街で今夜の宿を求めて彷徨っていたのさ。


 そして、ここで五件目だよ。

 宿泊お断りされたのは……どうして俺がこんな目に…。


 全部女神様のせいですよ!?(※やり場のない怒りを虚空にぶつける中年)



「これもこの国の定めた歴とした法でね。身分を証明できない人は泊められないんだよ。よその国から逃げてきた罪人とかの可能性があるってんでね? それにお客さん…アズマ国の手形も持ってないっていうじゃないか。悪いが、それでも金を受け取ってアンタを泊めちまったのがバレると、無関係のうちの従業員まで衛兵にしょっ引かれるかもしれないんだ」

「ま、マジかあ…」



 それで皆あんな頑なに断ったんだな…う…っ!


 全部女神様のせいですよ!?(※本日二回目)



「かと言って…そんなアンタを泊めてくれるのは壁街のモグリの宿違法ホテルくらいだろうけど。あんな危ないとこに行くくらいなら……その辺の石畳の上で寝た方が安全だろ」



 うん。だから行ってない。

 首に巻いてる布を買った露店のオッチャンも絶対近寄るなって言ってたもん。



「だが、そんなアンタでもうちの宿に泊まる方法が……ないわけじゃない」

「え!?」



 じゃあ端からそれでいこうぜぇ!?

 時間を無駄にするなってばよ!

 もう夜帯なんですよ!?

 だからこそ、ギルドがもう閉まってて発行して貰う予定だったミルファの身分証を取りに戻れないんだよ!

 そうだよ暴走した俺が全部悪ぃんだよぉ!!(逆ギレ)



「うちは婆さんの代から営業してる子爵様にも認められた正真正銘の健全な宿屋なんだが。開業した婆さんの意向でね? ……連れ込み・・・・可…なんだ」

「んっ…んん?」



 おいおい、宿屋の女将は俺に何を言ってるんだ?



「(チラリ)……例えば、アンタが種商売で客をとって…そのうえでうちの宿を利用・・するってていなら問題ないんだ。アンタがどんな身の上でも、その責はうちの宿じゃなくて連れ込んだ客が負うことになる。それが国法なんでね」

「へっ…へぇー」

「(チラリチラ)……で、仮にあそこのテーブルで飲んでる冒険者の連中と一晩の夢に夢中になろうってんなら…構わない。既にあの連中は部屋をとってるからな」

「な、なんだ…あの角の生えてないオーガ共は?」



 女性に対してこんなことを言うのは心苦しいが…すごく、大きいです。


 宿に入ってからずっと俺を鼻息荒くして見てきてたから…寧ろ、彼女らを無視するように意識を全振りしてた。

 三人いるんだけど、皆してアメコミ作品から飛び出してきたかのような見事なマッチョウーマンだったんだわ。


 あれでオッパイが無くて、ヒゲなぞが生えてたら…完全にヴァルハラから地上へ遣わされた戦士達だぞ?

 


 てか、金属製マイクロビキニに鉄兜とかすげえ変態じゃん(※ダブルスタンダードです)



「なんだ? アンタ…この街は初めてっぽかったけど。オーガーズの連中を知ってたのかい?」

「いえ、知りません(即答)」

「ああ…そうなの? まあ、あの見た目で、鼻息も荒い奴らだが…単に男に慣れてないだけなんだよ。若手だけど銀星二つのなかなか将来有望な冒険者だよ? 私だって吹けば飛ぶような儚げな細男娼モヤシならけし掛けたりなんてしないが……アンタなら…まあ、大丈夫だろ。どうだい?」

「どうって…」



 まさかあのウォリアーズと4Pしろってか。

 そいつぁ~ちょいと危険だぜ(物理的に)


 しかも、その銀星二つとやらの凄さも良く判らんし。



「へ、へいっ! そ、そこの兄さん! い、今…暇かぁ?」

「お、おおぅ…」



 何と痺れを切らしたのか、件のオーガーズが俺に声を掛けてきちゃったんですけどぉー!?


 あ!? あの女将、いつの間にか奥に引っ込みやがったぞ!?



「ちょ、ちょっとアタイ達と一緒に飲まないか? その…奢るからさ?」


 

 そう言って血管が浮かぶほど力んだウインクを俺にお見舞いしてきた。


 いや、ナンパか!

 しかも下手か!


 遠巻きに見ていた同じジャンルっぽい女から舌打ちや「先を越された」みたいな声が聞こえてきたが…それどころじゃない圧が俺に三方から襲い掛かる。

 自分と同じくらいの背かそれ以上の女(しかも肩幅も頼もし過ぎてパない)に囲まれるって怖くね?



 ……ルッツ達との時とはえらい違いだなあ(逃避)



「うっ……だ、ダメか…? こう見えてアタイ達、力だけならこの街で五本の指に入るよ!」

「「お、おうっ! うーっ! はぁあ! ふんっ!」」



 …急に謎の筋力アピールが始まってしまった。

 それで俺がトキメクとでも?



 …………。


 だが、悪くはないな?


 女将が若いって言ってたけど、確かに近くで見ると確かに彼女らは結構顔つきが幼く見えなくもない。

 どんな経緯でこんな姿に…とは思うが、どうにも酒以外の理由で顔を赤くしてる様が少し可愛く思えてきてしまっている。


 どこか現実離れしたバッキバキの女の腹筋も…何か新しいフェチズムの扉を幻視しそうになる。


 だが、どうだろう?

 受け身の俺に対して彼女らはちゃんとリードしてくれるだろうか?



 ちょっと俺が内心迷っている時だった。



「オーガーズ。残念ながら、オレ達が先約・・だ!」

「「むんっ!?」」



 なんと、俺の前に割って入り込んできたのは…ギルドで出会ったあの火のように赤い髪を持つ少女だった。

 


「そうそう。オッサンは私達と楽しい夜を過ごすんだよぉ~?」

「そ、そんなふしだらな事は我が女神が許しませんよ!?」

「やっと見つかったよぉ…」



 続々と宿の中にその仲間達も駆け付け、俺を後ろに庇う。



 それが俺と……魔法戦士の少女アベル。

 その仲間であるラウルフの獣戦士ガーデニア。

 見習い神官の少年ナセル。

 同じく見習い魔法使いの少年ギルス。



 彼らとの運命的な出会いだったんだ…。



  (種)



 ▼勇者タネモト▼


 ▶レベル:1   EXP:▮▮▮▮▮▯▯▯▯▯

 ▶アーキタイプ:戦士

 ▶身分:ミルファの無職

 ▶称号:狼族の情夫

 ▶HP:15   MP:0

 ▶所持金:62シルバー

 ▶攻撃力:0   >付与:無し  

 ▶防御力:1   >耐性:無し

 ▶筋肉:F

 ▶敏捷:F-

 ▶魔力:F-

 ▶精神:F-

 ▶知識:15

 ▶状態異常:無し


 E:クロース

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――

   ――――――――


 勇者タネモト◀スキル・カスタマイズ


 【種男】Lv1     〔植物学〕Lv1

 〔性交渉〕Lv0    〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


  ==残り予備スキル枠:10==


 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕

 〔 - 〕      〔 - 〕


 *種メイカー最大使用回数:2回(スキルレベル+1)

 *ドロップアイテムにスキルレベルに応じた種アイテムが追加

 *????


 ▼クエストボード▼


 ==今回のノルマ==


 ●今回は試用期間につき、兎に角頑張って七日間生き延びよう!

  (4/7)

 ▶達成報酬:1ゴールド


 ==ペナルティ==


 ●テスター業務の終了。

  (※なお、報酬は発生しません。)


 ==現在進行中のイベント==


 ●特に無し

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