ゴブリンスラッガー Part.1
「これはアデルカイン様…いえ、赤髪の乙女の皆様でしたか。今回はどのような御所用で壁外へ?」
「フン。…ゴブリンだ」
いや、どこのスレイヤーだよ?
俺達五人はミルファの街の北門を潜る。
ミルファ近郊北部のゴブリン討伐依頼をギルドで受注し、その依頼を遂行する為だな。
って、まあ俺が知ってんのはそれだけでな?
今から何処に向うのかすら四名のティーンズ任せの困ったオッサンなんです。
だが、我らが“赤髪の乙女”のリーダーたるアデル嬢の機嫌はやや悪い。
その原因は今さっき北門の門衛達に
けど、あの門衛のオバサン&オネーサンズは、このミルファの街の代官たるオツベル子爵家に雇われるか、実質養われているようなもんだろーし…あの扱いになるのも無理なかろうて。
他の中世風ファンタジー世界の設定に漏れず、封建制度が色濃いこの異世界じゃあ貴族と平民の格差はそれなりに根深ろう…。
「で、お嬢様。具体的にはこれからどうなさるので?」
「ふむ。そう言えば、サンチョはこの辺の地理に疎いのであったな。先ず、オレ達は馬車……でギルドに依頼を出したノースカインの村まで行く。なに、そう離れた村ではない。馬車の移動で二時間、村に着いてからゴブリン共を探す時間は…まあ、三時間程度だろう」
…むう? 馬車のとこで変な間があった気がする。
それに、今はまだ十回目の鐘…午前十時になったばかりだぞ?
なら、真っ当に目的地に到着すれば正午だ。
……にしちゃあ、随分と仕事時間が短いんじゃないのかね?
「随分と…その…?」
「オッサン、私達は仕事してないなぁ~って…思ったでしょ~?」
「うっ…」
疑問を投げ掛けた俺にもたれかかるガーデニアの言葉にアベル嬢が小さい呻き声を漏らす。
「仕方ないのさ。なんたって、お嬢様はオツベル子爵家の跡継ぎだからね。街の外に出るのも
「なるほど」
「……はんっ! どうせ、家は私の妹が……お、オレの優秀な妹が継ぐのさ。だから、こんな不自由もアドリアが十四になるまでの我慢だ。さあ、早く乗れ! オレ達の貴重な冒険の時間がもっと少なくなってしまうぞ?」
そうか。あの優秀そうな妹君はまだ十四にもなってない少女だったんかい…。
そう自身に無理くり発破をかけたアベル嬢が門近くに停めていた馬車に身勝手に乗り込む。
まあ、その馬車はどう見たって屋根付き、扉付き、黒塗りの立派な
…あ、御者台の座っている二人。
屋敷で見たことある人だったわ。
(‥)
俺は御者台の二名の武装した淑女から、真ん中の席を進められたが…アベル嬢からの許可が出ることはなかったぜ。
なんで、馬車に揺られて(直線のジェットコースターくらいの揺れ幅)二時間。
途中停めて貰って、村への到着前に昼食をとる。
俺がこさえたサンドイッチを車内で頂く。
やはり、ソッカイさん達が育てた新鮮な野菜は美味いなあ~。
……おっと、良い機会だ。
この場で四人を鑑定アプリに掛けてみよっかな。
カシャー。
俺は次々と四人を不可視のスマホモドキで
先ずは、まあ…アベル嬢か。
▼赤髪カインアベル▼
▶レベル:5 EXP:▮▮▮▯▯▯▯▯▯▯
▶アーキタイプ:魔法戦士
▶身分:水国貴族‐オツベル子爵家長女
ミルファの冒険者‐等級・銅星四つ
▶称号:赤髪の乙女のリーダー、オツベル子爵家の問題児
▶HP:85 MP:160
▶攻撃力:25 >付与:無し
▶防御力:20 >耐性:無し
▶筋肉:D
▶敏捷:C
▶魔力:A+
▶精神:D
▶信頼関係:依存(父性)
▶状態異常:無し
レベル5の魔法戦士か。
アーキタイプ:魔法戦士だけあって、俺と違ってMPも持ってる…うらやましい。
能力値的には魔力以外は普通か?
まあ、俺なんて平均せずともFですけど、何か問題でも?
……信頼関係の欄は見なかったことにすべきだろうか。
父性ってのは…複雑な気分だなあ。
そいや、アベル嬢の父親についての話は全く聞かない…一回だけソッカイさん達に聞いたけど微妙な顔して言い辛そうにしてたから止めといたんだよね。
赤髪カインアベル◀スキル
【魔力増強】Lv5 〔貴族〕Lv0
〔剣士〕Lv3 〔魔法使い〕Lv3
〔刺突剣〕Lv4 〔炎〕Lv5
〔 - 〕 〔 - 〕
ふむ。何とも想像し易い魔法剣士のスキル・ラインナップって感じ。
どうにも【魔力増強】ってのがユニーク枠らしいね。
このスキルが高い魔力やMPに関係してんのかなあ~?
…貴族の〔貴族〕レベルが0ってのは問題ありそーだが、俺が口を出す問題じゃあないだろうし。
さて、次はセクハラ色ラウルフ女か…。
▼射手ガーデニア▼
▶レベル:10 EXP:▮▮▮▮▮▮▯▯▯▯
▶アーキタイプ:獣戦士(ラウルフ)
▶身分:水国貴族‐オツベル子爵家護衛騎士
ミルファの冒険者‐等級・銅星四つ
▶称号:赤髪の乙女の石弓射手、色狂ラウルフ
▶HP:265 MP:0
▶攻撃力:100 >付与:麻痺
▶防御力:10 >耐性:冷気
▶筋肉:B
▶敏捷:B
▶魔力:F-
▶精神:C
▶信頼関係:警戒
▶状態異常:無し
レベル10…! 思ったよりも高いな?
つーか、騎士ぃ?
……さてはコイツ、普段はスケベなラウルフ女の振りしてやがったな?
しかも、俺へ向けられている感情は――警戒、だ。
やけに今迄ベタベタしてきたのも…まさか?
「ん? どしたのオッサン? さてはぁ~私に惚れちゃったのかなぁ~」
「馬鹿な事を言うな。サンチョはお前のようなふしだらな女など好かんさ」
「えぇ~?」
「…………」
世の中、知らん方が良いこともあるってことを学びました。
射手ガーデニア◀スキル
【毛皮】Lv2 〔射手〕Lv9
〔狩人〕Lv6 〔騎士〕Lv7
〔弩〕Lv9 〔短刀〕Lv7
おう、スキルの方もエグイな…。
恐らく、いや、間違いなくこの中じゃ文字通りレベチで強いだろ。
▼神官ナセル▼
▶レベル:3 EXP:▮▮▮▮▮▮▮▯▯▯
▶アーキタイプ:魔法使い
▶身分:ミルファの冒険者‐等級・銅星四つ
▶称号:赤髪の乙女の見習い神官
▶HP:10 MP:20
▶攻撃力:5 >付与:神聖
▶防御力:12 >耐性:無し
▶筋肉:D
▶敏捷:D-
▶魔力:D
▶精神:C+
▶信頼関係:同情・パーティメンバー
▶状態異常:無し
ナセルはレベル3の魔法使いなのか。
てっきり僧侶とかそんな感じのアーキタイプかと思ってた。
能力値は親近感が湧く…というか割と弱いな?
まあ、俺なんて平均せずともFですけど、何か問題でも?
魔法使いつってもそんなMPないのな?
それとも初期ステの差かね。
神官ナセル◀スキル
〔神官〕Lv2 〔戦棍〕Lv1
〔家庭料理〕Lv3 〔 - 〕
うん。スキルもレベル分相応って感じか。
アベル嬢みたいに〔魔法使い〕じゃなくて〔神官〕ってヤツなんだな。
▼魔法使いギルス▼
▶レベル:4 EXP:▮▮▮▮▯▯▯▯▯▯
▶アーキタイプ:魔法使い
▶身分:ミルファの冒険者‐等級・銅星四つ
▶称号:赤髪の乙女の見習い魔法使い
▶HP:10 MP:60
▶攻撃力:1 >付与:無し
▶防御力:3 >耐性:無し
▶筋肉:E-
▶敏捷:E
▶魔力:C
▶精神:D-
▶信頼関係:パーティメンバー
▶状態異常:無し
ギルスのレベルは4だな。
MPはあるけど、ナセルもギルスも結構打たれ弱そうだな?
HPが俺より低……いや、戦士の俺が仮にも魔法使いにHPで負けてたら需要ないもんなあ。
そう考えると…アーキタイプ:魔法使いはHPが増えないのか。
いや、単純に女子が強過ぎんのかね?
魔法使いギルス◀スキル
〔魔法使い〕Lv4 〔土〕Lv2
〔家庭料理〕Lv2 〔 - 〕
〔 - 〕 〔 - 〕
んん…やっぱりMP増加量はHPとは別で〔魔法使い〕とか〔神官〕とかのスキルレベルに依存するのかもしれんなあ。
そんで、アベル嬢は〔炎〕でギルスは〔土〕か。
…ん? じゃあ、ナセルは何の属性の魔法が使えんだろ?
まあ、それもいざ実戦となれば嫌でも判るか…。
以上が四人のステータスだ。
装備までは判らんが、アベル嬢は腰に小剣…レイピアっぽい剣を佩いている。
ナセルはメイスで、ギルスはイギリス紳士かとツッコミたくなるステッキを持ってるが…彼の武器は魔法だろう。
「ん? オッサン、私の
「コホン。…ガーデニア、サンチョさんが気にされてるのはあなたの胸ではありませんよ?」
「わかってるってばぁ…コッチでしょ」
いつものようにふざけていた彼女がむくれて見せてくれたのは彼女の得物だ。
…しまった。鑑定結果が気になってちょっと見過ぎたかな?
「おぉう…結構間近で見るとデカイな? このクロスボウ」
「(ピクリ)……ッ」
アレ? 何だこの反応は…。
「クロス…ボウ? サンチョ。ガーデニアが持つ変わり弓は確か
「そうですね。扱いも決して見た目ほど簡単でなく、流通量も少ないと私も聞いています。もしかして他国ではそのような名称なのやもしれませんね」
「あ~と…多分それのことですね。その、私も実物を見るのは初めてでして…つい目がいってしまいました…」
「左様か。まあ、
何とかその場は誤魔化して目的地であるノースカインの村に到着する。
馬車から降りたが、御者台の人(強そう…)はあくまでも馬車で待機している、というスタンスらしい。
俺達五人は馬車から離れて村の入り口へと向かう。
ふうむ。ラウルフの村よりも数倍は大きい規模のようだ。
だが、あの村よりも壁は低いな。
ま。槍とか剣を持った強そうな女達が一定間隔で村の外を見張ってるみたいだから問題ないのか?
「あ。お聞きしたかったのですが、一応…お嬢様の御付きとして無作法があってはと思いまして。何か気を付けるべきことはありますでしょうか?」
「うん? 別にミルファの外ではお前は単に私の近くに……い、いや、オレの側に侍らせているサンチョが侮られるのもな…どうせ帰ってきたアドリア辺りがまた村々を回るし、そんな話を耳に挟めばまた小言が煩いしな…」
何やら火の玉ヘアーのロリ主人がブツブツと唸る姿に他の三人は苦笑いだ。
多分、俺もだろう。
「うむ! まあ、オレの従者として慣らすのも良いだろう。…そうだな。ノースカインは子爵家と所縁深い故、最も立場の高い者。次に騎士。次に従者、そして身分が低い同行者、新参者が続く。仮に、初めて訪れる場所や安全でないと思われる場所ならば騎士が先行する」
「左様で」
俺は教えて貰った通りの
「……? まあいい。此処はそこまで変に気を遣う必要もないと思うが。 …うん? どうしたガーデニア。さっさと村に入るぞ」
「…………。…はぁ~い」
何やらまたガーデニアから数秒間ジッと見られていた気がすんぜ。
だが、そんなこと気にする暇なく村の奥からバタバタと誰か走ってきやがったが。
「これはこれはアデルカイン様!? これまた急な御訪問ですな!」
「久しいな、ノースカイン準男爵」
「二年振りですかな? しかし…準男爵はお止め下さい。私はしがない村長ですよ?」
「謙遜するな。母上はいつまでもお前を貴族未満にするのは惜しいと常に言っている」
「いやはや…私は…困りましたな。はて? そちらの供の方々は?」
「おっと、紹介しよう」
現れたのは、このノースカインの村長の
どうやら、五人の中で顔見知りはアベル嬢とガーデニアだけか。
ナセル・ギルス・俺の順番で簡単に自己紹介をしたが……何故か俺に向ける視線が厳しい。
こんな視線を受けるのは意外なことにこの異世界では初めてかもしらん。
…割とショック。
「まさか! お嬢様が依頼を!? なら私も共に参りましょうぞ! 村の腕の立つ者も…」
「ならんぞっ。それが容易にできぬからとの依頼であろう? 頼む…この一時だけが、オレにとって数少ない自由なのだ…」
「お嬢様……お察し致します。…ですが、このノースカイン。オツベル子爵家の生末を背負って立たれる御方で、アベルカイン様ほどその資質をお持ちの御方は後にも先にもおられぬと、心の底より思っております。そんな、お嬢様に万が一にでも何かあれば…先代様、アベリアーヌ様に私は顔向けできませぬ故。どうか、どうか御自愛下さいませ」
野良着なのにまるで騎士の儀礼の如き振る舞いで、深く頭を下げてくる。
俺ら完全に空気なんですが。
「……わかった。もう頭を上げてくれ。お前が心配しなくても日が暮れる前に引き揚げるさ」
「わかりました。……(チラリ)」
「……(コクッ)」
アベル嬢に気取られないようにアイコンタクトを交わす村長とラウルフ。
だから、なんでちょっと俺を睨むんですかね?
改めて村を出立して、村が見えなくなったくらいのタイミングで俺に並んで歩くアベル嬢がやや恥ずかしそうに口を開いた。
「気を悪くしないでやってくれ。アイツは母がオレと同じくらいの頃より我が家に仕えていた騎士でな? どうにも、私の乳母をしていたこともあってあの過保護振りなのだ」
「はあ」
どうにもアベル嬢の話では、あのノースカインってオバサンは元オツベル子爵家騎士だったそうな。
元は没落した弱小貴族の出で、若い頃はえらい苦労をしていたらしく…乞食同然であった頃を先代子爵(アベル嬢の祖母か)に拾われ、更に当主の護衛騎士となり、現在はあの村を任されている準男爵(騎士より立場は上だけど、正確にはまだ貴族じゃない?)なんだと。
そりゃあの忠誠心も頷けるってもんか。
案外、ガーデニアがあの準男爵の後釜だったりしてな?
「シッ…あそこ…岩場だよぉ」
「…?」
「やはり居たな…」
小一時間ほど歩くと木や茂みが段々と増えてきた辺りか。
先行していたガーデニアが片手で俺達を制止し、背中のホルスターに吊っていたクロスボウを音も無く取り出して無駄なく正面に構える。
すわ、ゴブリンかと思って俺は背中の剣を抜く。
恐らくガッチガチに緊張してっけど…流石に今度ばかりは
「一匹、コッチ来るよぉ」
「良し。仕留めてくれ。サンチョ、魔物との戦闘は初めてだったな? 良く、動きを見ておくんだ」
「は、はい! …って、速くね!?」
何かゴブリンって子供くらいの背丈の亜人ってイメージだったけど。
先ず、人型じゃない。
というか確かにコッチに左右に飛び跳ねるようにして何か来てるが目で追えない。
バシュコッ!
「ピギィィ!!」
ガーデニアが動じずに放ったボルトに射貫かれてさも簡単にそれは息絶えた。
……ハダカデバネズミ?
それは中型犬近くのサイズがある緑色の毛の少ないブサネズミだったよ。
これが、ゴブリン…?
新しいなあ。
「これがゴブリン?」
「いや? 違うぞ。ゴブリンラットだろう」
「ごぉぶりんらぁっとぉ?」
「何だ、ゴブリンのことも知らんのか。ああ…そう言えば、お前はかなりの箱入りだったもんな」
「けどさぁ~? アズマにだって小鬼だとかチミ・モウ・リョーとか言うのがいるんじゃないのぉ~?」
だから、アズマのことなんざ知らねっつーの。
あの太眉女侍に聞けよ…。
だが、このネズ公。
やっぱりゴブリンで間違いないらしいよ?
正確にはゴブリンと恐らくネズミとの間に生まれてしまった交雑種とのこと。
え? と思ったが、ゴブリンとかいうのはオスしかいない魔物だ。
繫殖旺盛な魔物で別の生き物にゴブリンを生ませることができちゃうんだとよ。
まあ、その辺のイメージはある。
実際にこの異世界でも某スレイヤーの別世界のように人間や獣人の女を襲ってゴブリンを孕ますことも多々あるらしい。
が、この異世界…女性が強いので意外とゴブリンも苦労しているらしい。
なので手っ取り早く非人の動物も襲うわけだ。
オスの家畜は食い殺され、メスは盗まれるかヤリ捨てされるので、農村の被害はかなりのものだと言う。
つまり、魔物自体の強さはそこまで脅威でもないが…主要な討伐対象となる魔物の槍玉に挙がる代表格だそうだ。
…で、人系以外と交わると一定確率でこの緑ネズミがゴブリンの兄弟として生まれるらしい。
「(スンスン)…この
「サンチョをなるべく早く戦闘に慣らせたい。ギルス、奴らを巣穴から追い出せるか」
「うん。できると思う」
「そうか。なら、サンチョ…幾らか仕留めてみろ」
「…マジすか?」
「案ずるな。オレの魔法で弱らせる。手に負えない場合はオレとガーデニアが仕留めるさ」
「ちょっと張り切り過ぎないでよぉ~? 加減しないと単にゴブリンラットの丸焼きが出来上がるだけだよぉ~」
「う、うるさいなっ! わかってるさ」
あのネズ公の丸焼きかあ…イマイチ食欲がそそられんなぁ~?
因みに、ゴブリン系の魔物は例外なく不味いらしいね。
まさかとは思うがオリジナルのも喰ってみたのか?
「ギルス、頼むぞ」
「わかった…――トレマー!」
ピキィイイイ…ン!
ギルスが魔法名っぽいのを言って杖で地面を突くと一瞬地面が金色に輝く。
おおっ!? 初の魔法だ!
どんな効果なんだろ。
「「ギギキギ!」」
数秒の後にゴブリンラット共が地面から噴き出してきやがった!
キモォーイ!?
「良くやった! 後は任せろっ」
と、我らがアベル嬢にバトンタッチ。
特に魔法名を言ってないが赤い髪がより輝きが増した途端、皮膚が灼ける感覚を覚える。
見えざる彼女の周囲の揺らぎが凄まじい熱波となり数匹のゴブリンラットを叩いた。
……う~ん。焼肉の匂い…じゃ済まんよなあ?
兎に角、結果として新たに出現したゴブリンラット七匹の内、最前の四匹が一瞬でミディアムレアに。
二匹が瀕死。
一匹が大火傷って感じです。
いや、むしろネズミの方に同情しちゃうよこの光景見たら。
「手加減はぁ~?」
「何度も言ってるだろう…注ぎ込む分には問題ないが、少なくするのが難しいんだよ! だが丁度良いのが一匹残ってるぞ。サンチョ、行け!」
うっわ~マジかあ。
だが、俺もこの場においては最年長の男だ。
あんま恰好悪いとこばっか見せられねえよなあ?
「うりゃあ! そりゃあ! ぬりゃあ!」
もう結構可哀想なことになってるゴブリンラットに俺からの容赦ない三連撃!
だが、外れた!
やっぱ的が小さいってのもあるが…まだ結構素早いぜ!?
「落ち着けサンチョ! 矢鱈に剣を振り回すな! 確実に狙っていけ!」
「そんなこと言ったって……ぐぼぉ!?」
生焼けネズミからの体当たりを腹に喰らって強制腹式呼吸をさせられた。
だが、吹っ飛んで身動きできなくなるほどでもない。
…数舜視界がぼやけたが、その時、急に込み上げる怒りが俺の意識をハッキリと覚醒させたのだよ。
「痛ぇーなコノヤロー!?」
「ヂュ!?」
俺は咄嗟に蹴りを入れてやる。
それで、身動きが止まったゴブリンラットに剣先を叩き込んでやった。
剣で斬ったというよりは…ブッ叩いたって感じの表現が近いかね。
そもそも、あのランハート教官から学んだが…俺が持ってるのは日本刀じゃない。
剣は斬るもんじゃない、殴るもんだ。
だってそう教えられたんだもん。
斬るなんて高等技術はもっと修行を積んでからだと…ひたすら木剣で叩きのめされてっから。
「うむ。問題無く仕留められたな。おっと、序に残りの二匹にトドメを刺しておけ」
「はい…」
俺は言われた通りにトドメを刺してやったよ。
ゴメンな?
けれども意外とノルマ自体は簡単にクリアできそう?
因みに、宝箱とか出なかったので…「何で出ないの?」って普通に聞いてみた。
理由はこのネズ公が純粋な魔物じゃあないからってことらしい。
また、皆から呆れた顔をされちまったよ。
「だが、これで決まりだ、この近くにゴブリンの巣があるな。良し捜索再開と…」
「そうだねぇ~……でもま。それは明日だよぉ~?」
「むむむ。やっと面白くなってきたのだがな…ハァ。仕方ない、か。戻ろう」
「はい」
「そうしましょうか」
「うん」
その日の探索はそれでお開きになることにあいなりました。
『ピコーン♪』
*〔戦士〕スキルのレベルが上昇しました!*
*〔従者〕スキルのレベルが上昇しました!*
*〔片手剣〕スキルのレベルが上昇しました!*
もひとつの童貞を捨てたからだろうか、急に三つのスキルレベルが上がった。
EXPのゲージも満タンになりおったわ。
手負いの魔物を倒すだけでコレか…カイドウが言ってたことも満更じゃなさそうだな?
それとさっきのゴブリンラットの攻撃でHPが3持ってかれていた。
感覚的に耐えられて…もう二発くらいだろう。
HPも半分切ったら結構ヤバイ状態かもしれん。
(‥)
ミルファに帰還した夕餉後。
俺は自分の寝床を目指して完全に日が暮れた農園の中を進む。
だが、半地下へと続く石造りの階段を降りられずにいた。
何故なら今夜は珍しく俺の背後に来客があったんでね?
「あら、こんばんわぁ~? ……
いつも俺のことをオッサンと呼ぶ彼女からこう呼ばれたのは初めてだなあ。
「ちょっと私と一緒に夜の散歩に繰り出さない?」
俺の後ろ首に冷たいものをそっと添える彼女はいつも以上に甘ったるい声だった。
だが、俺が振り返った先に立っていた彼女はいつものようにニヤケ顔どころか表情すらない…。
まるで別人のようなガーデニアが俺に向って鋭いダガーの刃先を向けていやがった。
(種)
▼勇者タネモト▼
▶レベル:2 EXP:▮▮▮▮▮▮▮▮▮▮
▶アーキタイプ:戦士
▶身分:オツベル家の召使い・ミルファの冒険者‐等級・銅の無星
▶称号:狼族の情夫、赤髪の乙女・オールドルーキー
▶HP:22 MP:0
▶所持金:1ゴールド、62シルバー
▶攻撃力:20 >付与:無し
▶防御力:5 >耐性:無し
▶筋肉:F+
▶敏捷:F
▶魔力:F-
▶精神:F
▶知識:18
▶状態異常:無し
E:ブロンズソード
E:パデッドアーマー
クロース
治癒のポーション+1
――――――――
――――――――
――――――――
――――――――
勇者タネモト◀スキル・カスタマイズ
【種男】Lv2 〔戦士〕Lv1
〔従者〕Lv1 〔片手剣〕Lv1
〔植物学〕Lv2 〔畑〕Lv1
〔家庭料理〕Lv1 〔性交渉〕Lv0
〔 - 〕 〔 - 〕
==残り予備スキル枠:10==
〔 - 〕 〔 - 〕
〔 - 〕 〔 - 〕
〔 - 〕 〔 - 〕
〔 - 〕 〔 - 〕
〔 - 〕 〔 - 〕
*種メイカー最大使用回数:3回(スキルレベル+1)
*ドロップアイテムにスキルレベルに応じた種アイテムが追加
*????
▼クエストボード▼
業務期日(3/7)
==今回のノルマ==
●モンスターを5体倒せ!
(3/5)
▶達成報酬:3ゴールド
==ペナルティ==
●達成報酬無しの上、カウントはリセット。
次回のノルマへ持ち越し。
==現在進行中のイベント==
●ミルファ近郊北部のゴブリン討伐依頼
(参加中のパーティ:赤髪の乙女)
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