第十七話:日本人は異世界転生が好き
「あぁぁぁぁ! あぁぁぁぁ! あぁぁぁぁ!」
これは須佐之男命に見送られた後、俺はとある病院の中で産まれた頃の記憶だ。
「全く…私が産んだにしては可愛いわね。」
「ああ、男勝りでやんちゃなお前が子供を産むなんてな。」
「何よ、立派な男の子を産んだ妻に対して、言うこと?」
「すまないな、俺とお前にに子供が出来るなんて夢にも思わなかったからな、今でも戸惑っているんだ。」
「だったら、これからで慣れればいいじゃない。あんたは総理大臣という立派な肩書きを持つこの子のお父さんだから」
俺の目の前にいたのは冷静的な父親であるスーツ姿の黒い長髪と黒瞳の男性と強気な母親である茶色い短髪と翡翠の瞳の女性だった。
その二人の傍らには二人が最初に産んだであろう黒い短髪と翡翠の瞳の少年が眼を輝かせた。
「母さん、抱っこしてもいい?」
「いいわよ、落とさないようにできる?」
「うん!」
小さい赤子だった俺はその少年、いや、兄貴に抱かれていた。兄貴は俺の産まれたばかりの体温に触れ、自身に弟が出来たことに喜びを抱く。
「よしよし、僕が護ってやるからな。」
「あっ、あう〜。」
俺は恥ずかしさの余り、頬を軽く赤く染め、鳴いた。
「さてと、これからビシバシバシバシと鍛えるわよ!」
「はっ!?」
「えっ!?」
「あう?」
すると、病室の扉から続々と人を連れた祖父が現れた。
「奥様! 頼まれました、赤子養成ギブスが出来ました! 生後、立ち始める頃には筋骨隆々になるでしょう!」
「奥様! ドーピングプロテインミルクが完成しました! これで病気を喰らい殺すほど完全体を手に入れられます!」
「撫子! ようやく、知り合いから南米のアマゾンの別荘が出来たと連絡が入った! これで思う存分、
余りにもハードな修行を課せられることを知った俺は赤子なので、ただ泣き喚くしかなかった。
「おぎゃあああああ! おぎゃあああああ! おぎゃあああああ!」
「撫子ー! 余りにも厳しくされるのを怖がって、泣いてしまったぞ!」
「大丈夫、大丈夫。ほら、獅子だって我が子を谷底に突き落として、厳しい自然を知らせる的な?」
「産まれたばかりの赤子を谷底で死なせる獅子が居てたまるか! 半蔵! 近藤局長!」
すると今度は何処からともなく、忍びやら新撰組やら続々と現れ、俺や兄貴を護るように母親や祖父の前に立ちはだかる。
「はっ! 既に逃走経路も確保してます! 潜伏先では先月生まれた我が子と交友デビューをさせてもらいます!」
「後は、我ら新撰組と御庭番衆にお任せを! 撫子ったら、相変わらずの無茶振りね!」
慌ただしくなった病室内で、産後間もないはずの母親が軽快に立ち上がり、いつの間にか刀を抜き、祖父も刀を構えていた。
「全く、母親の教育方針に待ったを掛けるとは家庭問題待ったなしね。いいわ、それでは夫婦喧嘩と行きましょうか!」
「全く、オメェは家族会議をしろと何度も言ったろうが夫婦間のコミュニケーションがなってねぇな。」
「お前の家庭内暴力で家庭崩壊してたまるか! 総員、全力で死守せよ!」
「さぁ、ご子息、こちらへ!」
「大丈夫! 僕が護ってやるからな! 僕が護ってやるからな! 現在進行形だけど!」
俺はこの時、気付いてしまった。
俺は異世界に転生したんだと。
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