第十一話:日本人にとって、朝起きは三文の徳だ。
ヤイバは布団から目を覚ました。畳から漂ういぐさの香りとお日様の光が心地良く感じる。
しかし、隣にいる女性、ネグリジェが着たカタナが俺の腕を枕にし、俺の脇腹に触れている。
「ふふふ、…ヤイバさん、私のネグリジュ姿で…ハレンチな気分に…ふふふ。」
思春期の高校生なら顔を赤くして、嬉し恥ずかしくなる頃だが、ヤイバはカタナの天真爛漫さや純粋さを見るに、一人の女としてよりも、一人で手が掛かる妹ぐらいにしか感じられなかった。
そう思う内に俺はカタナの額にデコピンを喰らわした。
「ぐわしっ、ヤイバさん!? 起きてたんですか!? てっきり、私のセクシーボディでハニートラップに掛かっているのかと…せいや!?」
ヤイバは妄言を吐くカタナに再度デコピンして、起き上がる。
「全く、セクシーなんたらとかハニーなんたらとかお前のような幼女顔のじゃじゃ馬娘には十年早いんだよ。」
「がーーーん!?」
「心のショック音を口に出して、あんぐりする人は初めて見るが、早く着替えて、降りるぞ。」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいましー!?」
ヤイバたちは早めに制服に着替えた。灰色のブレザーと白シャツの上に藍色のコートを着て、馬色のベルトを巻き、ヤイバは黒い長ズボンを、カタナは黒いスカートを履く。
そして、一階に降りて、二人を出迎えたのは、黒いスーツの上にピンクのエプロンを着ているツルギの姿だった。
「起きたか、二人とも。朝ご飯は出来ている。今回は豪華だ。」
「Oh、
「兄貴、そのエプロンは何なんだ?」
「これは国民的スターである男性グループの一人が着ていた女装の衣装だ。その人は陽気で個性的だから、バラエティーにも引っ張りだこらしい。母さんが言うにはしんご…」
「兄貴、あまり汚してないなら。直ぐにお台場のテレビ局に帰したほうがいいぞ。」
ヤイバはそう言いつつも、味噌汁を啜り、カタナは鮭の塩焼きを頬張る。
ヤイバ自身は早起きやら一汁三菜やらの質素で健康的な生活が身体に合い、多くの若者が好むファストフードよりお吸い物や漬物、卵かけご飯の方が舌に合っている。
と彼自身は舌鼓するも、何か必死に喰らい、必死に頬張るのような息遣いの荒さを耳にする。最初はカタナかと思いつつ、右隣を見れば、ご飯の一粒一粒を噛み締め、味噌汁に喉を鳴らす彼女の姿にはわんぱくさとは違う上品さを感じさせた。
なら、他の思い当たりを探る為、左隣を見れば、寝癖で乱れた黒髪を意にも介さず、おかずやご飯、味噌汁を手当たり次第にがっつく歳光がいた。
「はぐ! はむ! もぐ! 流石は
「ホワッツ!? アイエー!? 何で歳光さんがここに!?」
「ヤイバ先輩の家の近くに姐さん…近藤局長の家があって、僕たちはそこに住まわせてくれているんだ。まぁ、僕たち新撰組とヤイバ先輩の大和家とは古い知り合いだし、歳姉とヤイバ先輩は幼馴染だから。」
「ネイバーフッド!?」
カタナの質問に答えたのは彼女の前に座り、漬物を咀嚼する総太だった。
「ヤイバ先輩、今回もごちそうになります。」
「わざわざ、幼馴染の家と朝飯を共にするのはお互い様だ。まぁ、うちのようなご近所付き合いは珍しいかもしれないけどなって…カタナ?」
「幼馴染…ネイバーフッド…あんなことやこんなこと…ブツブツ…」
カタナは恋する相手に幼馴染がいることに危機感を抱き、不安をよぎらせ、恋の策略に思い耽っていた。
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