第十九話:日本人は人斬りに逢いやすい。

 翌日、登校初日にヤイバたちは堂々と校門まで歩いていた。

「うう、二日続けて叱られました。」

「まぁ、俺たち側がやってないだけでお咎めなしなのはよかったが。」

我が盟友ソウルメイト、あの悪徳息子、城ヶ咲江実はまた襲って来るだろうか?」

「親父から聞いたが、あいつも家からこっ酷く叱られ、謹慎を受けているはずだ。今日から暫くは大丈夫だろ。」

「いや、分かりませんよ。あの執念深さは一度や二度だけじゃないのはあの頃の僕たち五人が分かっているから。」

「助手くんたちと城南中の中学校と戦争した時だね。あの時は大変だったね。まぁ、私は実験相手が多く得られたからよかったけど。」

 それを聞いたカタナは深く悩み、昨日の戦いに思う所があったことを恨めしく思った。

「皆さんは見た所、相当な場数を踏んでいます。昨日の戦いの未熟さと言い、私だけが弱くて、仲間外れです。」

「ふっ、アメリカに忍者どころか、侍が居ねえからな。実戦経験が少ないのは妥当だ。」

「うう、こんなことなら痩せ狂った男スレンダーマン殺人兎男バニーマンと戦えば…」

「ちょっと待て!? 誰がそんなオカルト染みた心霊体験を話せと言った!?」

「そう言えば、カタナの母親、大和桜は怖いものや不気味なものが好きで、口裂け女や人面犬十匹を飼い慣らしてるってお袋から聞いたことがある。」

「流石、助手くんの母君の妹だ。色々、興味深いけどまた今度話してよ。」

 アメリカならではの肝試しとカタナの母親の秘密により脱線したが、自分の弱さを嘆く

「まぁ、そんなことしなくても、今日の授業で剣術指南が始まるから、そこで剣戟のいろはを学べばいいんだよ。」

「そうなんですか! よし、今度こそ、あのボンボンを撫斬りにしてやります!」

 元気を取り戻し、意気込むカタナを他所にヤイバ、歳光、総太、炎慈は密やかに話し合う。

(おい、芋侍、気付いているか? 校門の壁の向こうにある尋常じゃない殺気…)

(あぁ、また、あのが待ち構えてるのかよ、相変わらず…)

(ヤイバ先輩が二年生になっても続けるつもりだよ。)

(流石、新撰組きっての無敵と呼ばれる斎藤一の子孫…)

 議題は彼女が感じてないであろうその殺気の持ち主が誰かを知っている四人。ちなみに、春花は武術を習ってない為か気を読むことは慣れておらず、気付いていない。

(忍者の俺より、侍である芋侍や新撰組のテメェらが行けよ。)

(嫌ですよ。彼女、本気で殺しかかってますから。この前もひったくり犯の腕を切ったとかで、謹慎処分を受けたっていますから。)

(おいおい、だから、この前の新幹線ハイジャック事件には来なかったのかよ。)

(我ら新撰組においても、大和四天王においても、裏の懐刀うらボスであるからな。

こういう時はリーダーであるが我が盟友ソウルメイトが、って…大変だぞ! 大和プリンセス(カタナ)がもう校門の前まで!)

「何!? おい、カタナ! ちょっと待てって!」

「早く来ないと遅刻してしまいます! そうしないと、剣術修行に支障が!」

 勢いよく校門前まで走るカタナ。その時、校門の前に咄嗟に現れた浅葱色のボブショートヘアーと銀色の瞳を持つ女子高生が刀を振り下ろす。

「斬る」

「ほ、Whaaaaaats!?」

 振り下ろされた刀を運良く真剣白刃取りしたカタナ。

「何なんですか、貴方!? また、殺人兎男バニーマンが襲ってきたのかと思いましたよ!?」

「流石、ヤイバ様の許嫁。私のを即座に破るとは。」

 女子高生は刀を納め、カタナを静かに注視し、淡々と自己紹介する。

「私は斎藤一美ひとみ。現新撰組三番隊隊長。そして、人斬りだ。」

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