第二十話:日本の偉人は女体化しやすい。

 新撰組三番隊隊長斎藤一。新撰組の内部粛清を噂され、その強さは同輩の永倉新八に"沖田総司は猛者の剣、斎藤一は無敵の剣"と並び称され、戊辰戦争による東北の独立を機に新撰組局長二代目に就いた。

 そして、現代の彼女こそ、無敵の剣を継ぐに相応しい剣客の少女である。

 そんな彼女に息を呑み込んだカタナは

「すみません、今何と言いましたか。自己紹介の前に」

「流石、ヤイバ様の…」

「ありがとうございます! 聞きましたか、歳光! 私はヤイバのと呼ばれましたよ! たとえ、幼馴染である貴方も、私はヒロインレースの勝者である私を…うぎゃあ!」

「何、変なこと言ってるんだよ。たくっ…」

「ううっ、少しは丁寧に扱って下さいよぉ。」

 妄言走るカタナに軽くチョップをするヤイバはそれに続き、一美に軽くチョップをするも、彼女は即座に鞘で防御をした。

「お前も、何が何でも人を斬るなよ。」

「ヤイバ様の半身になる者がどのくらい有用な強さを持つのか、試しただけ。」

「周りが勘違いするようなこと言ってんじゃねぇよ。ていうか、本当は謹慎の後の初斬りでうずうずしただけじゃないよな…。」

「…失礼、私は人斬りだが、問題児じゃない…」

「だったら何で、目を背くんだよ?」

 寡黙の内に図星を隠した一美はそっぽ向いて誤魔化そうとし、忠義の主であるヤイバに呆れさせる。

「全く、相変わらず馬鹿騒ぎをしているのだな、ヤイバ一派は。」

「その声は…」

 声の方から現れたのは黒い総髪ツインテールと金色の瞳を持つ痩身の女子高生であり、背中には長短二振の刀を携える。

「御初に御目が掛かる、カタナ殿。私は宮本夢想ゆめ。先祖の名は宮本武蔵、そして、一応、二天一流の次期師範だ。」

「宮本武蔵…てっ、あのも、その経験を活かして五輪書を書いた兵法家じゃないですか!?」

「一応、僕たちもいるんだけどね。」

「おう、中々に騒いでると思って来てみれば、やっぱりおめぇらか。」

 夢想ゆめの後ろからアホ毛付きの藍色長髪と瞳を持つ女子高生と黒い尾髪ポニーテールと黒い瞳の吊り目を持つ体格ガタイが良い長身の女子高生がいた。

 前者は刀を腰に、後者は薙刀を背に携え、ヤイバ一向の前に現る。

「初めまして、私は源遮那しゃな。かの、源義経の御子孫だよ、よろしくね。」

「俺の名前は武蔵坊永慶えいけい。あの武蔵坊弁慶の子孫だぜ。よろしくな。」

「えっ、ええっ、えええっ!? 日本を代表する偉人の御子孫たちが相見えました!?」

 陰陽師、源氏の名将と猛将、戦国の忍びと剣客、新撰組、そして、大和王権の英雄。

 そんな彼らの子孫がここ、【武蔵古武道学園】の校門に集う。

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