第四話:日本人は侍と忍者と陰陽師が好きだ。
少年少女二人がテロリストGUNMARに捕まった数分後、牛弁屋の前で侍と忍者が睨み合いを続ける。
テーブル左側の侍たちはかつて幕末の京や江戸の治安を担った無経歴剣客集団【新撰組】。明治にて二代目局長の斎藤一が警察総監となり、日本全体の警察機関として昇華させた成り上がりの最強ごろつき軍団。現代でも警察と言えば新撰組と呼ばれるようになる。
テーブル右側の忍者たちはかつて江戸初期に設立された日本発の本格諜報機関【御庭番衆】。時代が変わるごとに活動範囲を日本から世界を伸ばし、世界情勢を手中に収めるほどの情報力だけでなく、秘密裏に密売人やテロリストなどの犯罪者を粛正する活動を行っている。現代では御庭番衆とは別に公安と呼ばれるようになる
この日本では侍が防衛と治安を、忍びが隠密と諜報を担っていた。しかし、職業柄の性格上、この二大勢力の諍いは多々ある。忍びは侍を刀だけが取り柄の脳筋と蔑み、侍は忍びを狡猾で、嘘が好きな卑怯者として毛嫌いする。
その二大勢力の渦中であるにも関わらず、ましてやあのGUNMARが新幹線の乗客を人質に立て籠っているのにも関わらず、争ってばかりであり、呑気にすき焼き弁当を喰っている一団もあった。
「で、何で? 俺たちは駅弁屋さんの前で会議してんだ? 駅弁喰ってる場合じゃねぇだろ。まぁ、駅弁は美味しいけど。」
赤いラインと桜家紋で刺繍された黒い忍び装束を着た、赤髪のショートヘアーと赤眼の青年『
「近藤姐さ…局長が気になる駅弁屋だったので、誠に勝手ながら、作戦会議室を張りました。僕も食べたかったですし。」
侍スーツ姿の上に浅葱色のだんだら模様と背中にある白き誠の字が目立つ羽織を着た、茶髪のショートヘアーと茶色の瞳を持つ少年『
彼はかの沖田総司の子孫であり、16歳の若さで侍の一人となる実力を持つが、礼儀正しい外見とは裏腹にやんちゃで、自由人である。
「はふ! うぉ、静ふぁれ! もぐ!
総太と同じ服装を着た、黒髪のロングヘアーと金色の瞳という美しい少女だが、左眼に桜家紋入りの眼帯をし、怪我もしてない右腕に包帯を巻くという奇抜な姿である『
「ほら、歳姐さん。頬張り過ぎるから、喉を詰まっているじゃないですか。」
「歳光さん、お茶を。」
「んん! ごきゅっ! ごくごく! ぷはぁ! かたじけない。霧雨殿。」
「いいえ、お気になさらないで。歳光ちゃ…さん。」
青いラインと桜家紋で刺繍された黒い忍び装束を着た、青髪のポニーテールと青い瞳を持つ色白の女性『
「で、いいのかよ。親父と近藤局長が来ない間にもテロリストの奴ら、ますます調子乗ってやがるぜ。」
「仕方がありませんよ。相手の出方が分からない以上、陰陽師たちの調査結果を待つしかないですよ。」
「それで、二人はその連絡係と。」
陰陽師。かつては吉凶を占い、禍を払い、祈祷で清める呪術の使い手であったが、今では呪力を研究し、新たな術式・道具の開発を行ったり、気の流れや残滓を鑑識し、操作することに長けている。
「く、このままでは乗客たちが危ない。それに我が器に封印されている
「そうですね、僕もそろそろ退屈してきたし。」
「しかし、今、突撃すれば…」
その言い争いの中、見るも麗しき美女といかつい大男が割って入った。
「突入許可は下りたわ。」
「左様。陰陽師殿の話では七つの客車にそれぞれ二名、運転席近くの客車に三名の計十七名だそうだ。」
「しかも、爆弾は完全なブラフで、陰陽術の探知でもそんなものは引っ掛からなかったのよ。」
スーツと羽織を着た、ベージュ色のロングヘアーと黒い瞳、左目の下にある泣き黒子を持つ巨乳の美女『
銀色のラインと桜家紋で刺繍された黒い忍び装束を着て、顔を覆うほどの忍び覆面を被った筋骨隆々の大男『
新撰組と御庭番衆。侍と忍びのトップ組織である二大勢力を統べる二人が帰還した。
「「局長」」
「「頭領」」
「みんな、ごめんなさいね。心配かけて。」
「これより、作戦を告げる。まず、我ら忍びが突入し、テロリストに対し、攪乱を。その間に侍たちの方で迎撃を頼む。」
「「了解」」
GUNMARから新幹線の乗客たちを救う決死の作戦がようやく始まった…
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