第六話:日本人は油断大敵を心掛ける

 新幹線内ではGUNMAR解放戦線の戦闘員が日式強襲火縄銃アサルトライフルをちらつかせ、乗客を精神的に沈黙させている。

 乗客の中には怖がる子供を必死にあやす母親、仕事に向かうのも連絡するのも出来ずに狼狽する会社員、恐怖と興奮を抑えようとする学生、そして、これからの学校生活をどうしようかと苦悩し、頭を抱えるヤイバ自身の姿もあった。

「これから、どうすんだよ…」

「あの…、すみません。私のせいで大変な誤解をさせてしまって。」

「まったくだよ、少しは落ち着けって…まぁ、悪いのは勝手な勘違いを誤報させたグンなんちゃらだけどな。これからどうするつっても、下手に刺激せず、待つしかないけどな。」

 カタナは今までの自身の行動を反省し、ヤイバに申し訳ない表情で謝る。それに対して、ヤイバはこれからのことを案じる。

「大丈夫です。日本の侍や忍者はアメリカの警察と並ぶ国家治安組織と聞いたことあります!」

 実際、戦の技と力、戦闘術に秀でた侍が機動隊のように強襲し、隠密性や情報収集能力に優れた忍者が公安のように国で起こる犯罪を事前に察知している為、検挙率と治安自治率は世界的に高い。

「それに…私たちはの使い手です。いざとなったら、私の得意な第二種神技、八尺瓊を使います。」

「…やっぱり、お前も大和武命の血に連なる者か。」

 大和神技流剣術、それは日本の神代末期に東西に存在する大和朝廷への反乱者や荒神を鎮めたとされる大和武命によって編み出された日本最古にして、最初の剣術流派。

 その剣術流派を使う者の多くは大和武命に血筋を継ぐ子孫か、現天皇を守護する者たち、天皇護家だけである。

 特にヤイバの兄と母はその剣術流派の現道場主と前道場主である。

「私たちが受け継いだ剣術さへあれば、GUNMARというテロリストは一捻り…痛!?」

 ヤイバは自信満々に鼻を鳴らすカタナの額を人差し指で突き続ける。

「いいか、剣術っていうのは見せびらかすものじゃなく、備えるものだ。俺のような侍は敵を倒す為、上へのし上げる為に、剣を磨き、勝つ為の努力をし続ける。そういった者たちが侍や武士って言われるんだよ。」

「あいた!? いた!? すみません、もう分かりましたから…」

「い〜や、分かってない。俺はともかく、お前はまだ実戦経験がない癖にテロリストを倒すだ? 逆に返り討ちされて、より窮地に陥れさせて、周りにより迷惑かけてどうすんだよ? 新幹線をジャックされたことに喜んでいるお前は周りの乗客のことを考えろ!」

「うう、ううう。」

 カタナは涙目になって、額を押さえ、蹲る。

 

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