第十五話:日本人の中には発明家が多い。
「てめぇら! 今更、怖気付くんじゃねえ! 大和の侍、それも総理の御子息に手を出したからには覚悟を決めろよ! 俺たちにはもう後がねえ!」
【草薙】という不可視の脅威に怖気付く不良たちに対し、江実は発破の恐喝を掛ける。
実際に国を担う者の息子に対して、リンチを仕掛けるというのは、社会的地位や評価を減退させる行為だと今になって知らされた彼らの中に文句を言う者も少なからずいた。
「ふざけんな、あんたが勝てるって言うから乗ったんだよ!」
「俺たちはただハーレム野郎に一矢報いるだけって聞いたのによ!」
「そうだ! 勝つなんて考えてねぇ…一矢報いるだけだろ! 襲うのはあの御子息じゃねぇ、その
「なっ、てめぇ! まさか…」
「ああ、そのまさかだ! 見れば、この女は相手の隙と死角を俊速で狙うタイプだが、剣の打ち合いや多対一の闘いには慣れてねぇはずだ! この女を囲い込んで人質にしろ!」
カタナは彼の指摘に焦りを感じ、口元を歪ませる。まるで、図星だと言わんばかりに。
(ヤバいです…私のせいでヤイバさんに迷惑を)
カタナの表情で察したヤイバは彼女を背に置き、懸命に守ろうとする。
「くっ! 江実! てめぇ、こんな事していいのか!? 兄貴だってこんな事しねぇぞ!」
「兄の腰巾着である俺とお前だからこそだ! 兄の為に弟が泥を被らなきゃいけねぇだろうが!」
「あぁ、そうだ! 俺たちはこうするしか生き残る道はねぇ!」
「たとえ、退学しようとも、モテ男イケメン侍も道連れだ!」
「そうだ、やるぞ! 覚悟しろ、この無自覚ハーレム主人公!」
調子付き息巻く不良たちの前にあわや万事窮すであろうその時、校門の塀の上から二人の少女が現れる。
「そこまでだ! 我が
一人は現新撰組の隊員兼武蔵古武道学園二年生である土方歳光。
「私の助手くんとその親戚を襲うとは不届き千万なのです! とぉ!」
「誰だテメェ!?」
校門の塀の上から飛び降りたのは桜髪のツインテールと桜の瞳を持つ華奢で童顔な少女で、狩衣の上に白衣を羽織っている。
その少女らは高らかに名乗りを上げる。
「私こそは八歳で陰陽寮へ首席で入り、陰陽機道の神童と讃えられし、新たな伝説の陰陽少女! 土御門… 」
「我こそは黒き
「テメェは陰陽寮を勝手な実験で壊滅させて、出禁になった発明下手の
「それにこっちは千代田区の全中学校の全不良生徒を滅多刺しにした挙句、そいつらを無理矢理に手下にして、城南中の中学校の不良に特攻させた厨二馬鹿残念美少女、土方歳光じゃねぇか!?」
「ヤベェぞ! こいつら馬鹿な癖に滅法強いから始末に追えない馬鹿女どもじゃねぇか!」
「ていうか、あいつの周りには馬鹿で可愛くて、ガキっぽい女が多すぎだろう! ある意味レアで羨まし過ぎる!」
「よし、こいつらは三馬鹿ガキ娘か、三馬鹿ガキ官女って名付けよう!」
完全に子供扱いにされ、馬鹿にされた三人娘はすぐさま、不良たちに特攻するも、ヤイバによって止めを入る。
「離してよ、助手くん! このど失礼の男共を私の発明の餌食にするんだ!」
「離せ、我が
「この人たちはいつまで私を馬鹿にしやがって、馬鹿って言った方が馬鹿なんですよー! うわぁーーーん!」
「落ち着け、後できつく言うからぁ! テメェら、寄ってたかって虐めやがって! こいつらは確かに子供っぽいが…」
「子供っぽい、言うなぁ!」
「ふごぉ!?」
三人娘にどつき回されたヤイバを見る江実はとうとう痺れを切らし、彼らに襲い掛かる!
「畜生! 馬鹿にするのもいい加減にしやがれ! どいつもこいつもさっさと攻めやがれぇ!」
その一歩を踏み出した瞬間、足元から蛇の如く太長い煙が昇り、江実は呑まれるように巻き付かれる。
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