第十四話:日本人は剣戟の活劇が好きである。
「カタナ、俺が時間を稼ぐ。元々はこれは俺の責任だ。囮になるくらいなら。」
「答えはノーです! このボンボンをしばき倒さなきゃ、気が済まないです!」
「おい、ちょっと待て!?」
ヤイバの制止を聞かなかったカタナは江実に向かい、縮地で間合いを一気に詰め、彼の懐に飛び、居合を放つ。
「喰らいなさい! 悪しきGUNMARの魔の手を打ち砕いた
彼女が技名を叫び切る前に江実は彼女の斬り上げを峰の横から打ち反らした。
「縮地で距離を詰めながらの抜刀なんて、迫る
江実はカタナの脇腹を蹴り上げるも、彼女は蹴りが当たる直前、直ぐに後ろへ下がる。
「なら…これです!」
尚も闘志を燃やすカタナは身体能力と縮地を多用し、江実の真後ろへと跳躍し、後ろから水平斬りで首元を狙う。
「峰打ちです! 死にはしませんよ!」
しかし、江実は刀の柄の
彼女は突かれた脇腹を抱え、鋭い痛みに晒されながら、呼吸を整えようとしても、あまりの痛さに咳き込んでしまう。
「あがっ!? ゲホッ! ゲホッ! …なんで!?」
「お前が後先考えないで
腰を崩されたカタナの前に江実は刀を振り下ろす。
しかし、その二人に割って入ったヤイバが水平に構えた刀を振るい返し、刀の柄で刃を止める。
「いい加減にしろ! たかが痴話喧嘩で斬り合いしてんじゃねぇよ!」
「【
それは刀の刃同士でぶつかり合う際の刃毀れによって剣戟の継続不可に陥いるなどの隙を克服する為に刀の鍔や柄で相手の刃を受け止める奥義にして、日本古来の物を大切にする精神にも由来する技法。
しかし、これにはもう一つの側面を持っていた。
「刃を振るうだけが、侍の戦い方じゃねぇんだよ!」
そう言ったヤイバは自身の刀の柄と江実の刀が交わる近距離を逆手に取り、【地返し】で彼の足を掬おうとするも、勘付かれ、後方に跳び、避ける。
【
しかし、その技を躱され、互いは体勢を立て直す。
その時、三人の不良が背後と左右から襲い掛かる。
「往生せいやぁ! 大和の倅がぁ!」
「あっしらの天下でやんす!」
「ぐひひひ! カタナちゃんはおいらたちのものだべ!」
ヤイバはそのことを焦らず、目を閉じることで精神を集中させ、周囲の動きを捉え、
「
目を見開き、溜めた力で刀を再び抜き、周囲一線に弧を描くように彼らの前で水平に剣筋を振り斬る。
次の瞬間、切っ先さえも触れてないはずの不良三人は右横に薙ぎ払われたかのように吹っ飛ばされ、その周囲の取り巻きたちも風圧で吹き飛ばされた。
「草薙…!」
周りの不良たちが謎の妖術だと思い、慌てて距離を取るも、カタナだけはその正体を見切っていた。
(切っ先が延びた? いや…見えない鎌風…、空気の刀身?)
素早い振り方で周囲の空気を巻き込み、切っ先から真空の刃を延ばし、斬撃範囲を広げる奥義。
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