第十三話:日本人は金持ちに良い悪いイメージを持つ
「うう、大和家の人ってこんなに恐ろしいなんて。」
「ああいうおっかない人は爺ィだけだ。まぁ、あの人の親父、つまり、俺たちの曾祖父が第二次世界大戦の裏で戦った影の英雄だからな。爺ィ自身もベトナムや朝鮮、中東の冷戦に参加したし。怖いだけじゃなく、実力もあるからな。」
「ヤイバのお義父さんも、総理大臣でしたから、凄い家系ですね!」
「まぁ、祖である大和武命が朝廷、ひいては日ノ本を対外などで守護する為に剣術と家系を生み出したって話だからな。」
二人は校門の前で話し合っていた。その他の友達三人と待ち合わせをする為に。
そんな二人を屈強な生徒たちが囲い込む、その先導には坊主頭と黒い吊り目を持つ生徒がヤイバたちを睨んでいた。
「よぉ、相変わらずぶっきらぼうが気に入らねぇヤイバじゃねえか。相変わらず、女連れか。」
「これはこれは城南四天王のリーダーの弟、
「これはよくある不良たちが美少女を取り合う
「誰がテメェみたいな馬鹿な
理想的状況を台無しにされたカタナは赤面涙目で江実に特攻しようとするが、ヤイバに止められる。
「離してください、ヤイバ! このファッキン失礼な野郎をしばかなければ、しばかなければ!」
「おい、落ち着けって! 後できつく言ってやるから、言ってやるから!」
「大体なんですか、城南四天王って? 新手の秘密結社ですか?」
江実は嘲笑うかのように、稚拙な彼女を見下しながら、語らう。
「城南は代々に大名や華族が住み、今では高級住宅街が多い神聖な地! 特にその筆頭の品川区は新宿や銀座に並ぶ経済力を持っているんだよ! テメェらのような古臭い家柄に代わって新たな日ノ本を築く偉大な使命があるんだよ!」
「権力と財力に頼る黒幕は早くに瓦解するって常識は分からないんですかね。まさに、虎の威を借る狐ですね。まさに雑魚の中の雑魚です。」
仕返しと言わんばかりのカタナの毒舌に、琴線を触れられた江実はブチ切れ、今にも彼女を殴ろうとしたが、再び、ヤイバが止めに入った。
「離せ、この野郎! あの
「すいません! 後できつく言ってやりますから、言ってやりますから!」
痴話喧嘩の中、ヤイバは気がつく。江実以外の群衆の目線ほとんどが自分だけでなく、カタナにも向けられていることを。
「いいよな、ヤイバの奴。女を侍らせやがって…大奥みてぇによ。」
「家柄が良いだけで、帰国子女と仲良くなるなんて…くそ羨ま嫉しい」
「なんだこいつら? 如何わしい動機で俺やカタナをってまさか!?」
「気がづいたか! こいつらはさっきの新幹線テロや通学の時にお前と
その数、数五十人の嫉妬の目を自覚したヤイバは歯切れ悪く、江実を睨み返す。
「てめぇ、恥ずかしくねぇのか! お前の兄だってこんな愚行をする訳がねぇだろ!」
「なら、敢えて言ってやる! 優秀な兄の為に不出来な弟はテメェのような落ちこぼれに負ける訳にはいかねぇんだよ!」
その叫びを号令とし、江実が引き連れた群衆もとい非モテ野武士同盟は刀や槍、薙刀などの武器を持ち、襲い掛かる。
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