第二話:日本人は新しくも刺激的な出会いが好き

時は遡ること数時間前の羽田空港に戻る。日本を観光しに来た外国人と外国を観光しに行く日本人が行き交う人混みの中、銅剣位の大きさの両刃刀を鞘で携帯した学生服の男子高校生がしょうがないと嫌々ながら、待っていた。

 黒髪のショートヘア―と翡翠の瞳を持つこの若人、名を『大和やまと弥威刃やいば』、16歳。

 そんな彼は溜息をついた。今朝、突然にアメリカへ放浪し、音信不通だった母親からの電話である人を迎えに来て欲しいと急に頼まれ、その準備と直行に疲れが出たのである。

「まったく、お袋はなんでこう毎回毎回めんどくさいこと運ぶんだよ。この前なんていきなりアマゾンに旅行行くって無理矢理俺と兄貴を連れて行った挙句に謎の軍隊と変な遺跡で変な水晶髑髏を獲り合ったし、さらに前は中国に連れられて、変な中国拳法を使う中華マフィアと戦って、街一つ壊すことになるし、大体、兄貴も兄貴で断れない性格だしよ…」

 彼の家族構成はこの日ノ本の政治を担う父と寡黙だが、天然で弟想いの兄、そして、世界を放浪する自由奔放な母と行方不明で内気な叔母となっている。

 両親と兄はどちらかと言えば世界的有名人で、特に母親は世界を股にかけるくらいの自由人であり、よく、危険な場所で危険な目に遭わさせることが多々ある。そういう事情故に一般家庭には程遠い。「たくっ、今度は親戚の子を預かって欲しいって言われたけど。俺らの家系と同じく翡翠の瞳って言っても、もう少し…特徴とか言ってくれ・・・」

 弥威刃は人混みの中で振り返ったことに後悔した。己が母親らしい悪戯に満ちた目印を親戚の子に託したと分かった。彼が目にしたのは金髪のツインテールと翡翠の瞳を持つ少女であった。問題は彼女の姿にあった。

 某非公式の梨の妖精の着ぐるみの上に某セー○ー戦士の女子高生戦闘服を着て、背中には某チーターゲーマーが持っていたとされる黒と水色の二つの剣、某鬼殺しの若き侍が鬼と化した妹がいるとされる木製の箱を背負い、頭には某海賊王を目指す若者の麦わら帽子と某アクションゲームの配管工おじさんのMマークの赤いキャップを重ね被り、口に少女漫画あるあるのトーストを咥え、空港の中をでうろついていた。

 いつの間にか人混みは彼女の姿をスマホにかざして、写真を撮り、それをインターネットに流していた。弥威刃は自身のスマホを見ると、TubutterツブッターやWNS(ワールド・ネットワーク・サービス)というコミュニティサイトでは、”羽田空港にサブカルチャーファッションモンスター現る!”、”日本オタク文化が顔負けするくらいの外国美少女降臨。”と囁かれている。

 弥威刃は騒ぎの火種が芽吹くのを防ぐために敢えて見ないふりをし、彼女に背を向けようとするが、時すでに遅く、彼女は彼の瞳の色を見つけ、咥えたトーストを落とし、満面な笑みを浮かべ、呼び声を上げる。

「いました! Mr.ヤイバ、見つけました! へ―――イ! ナイストゥミートゥ! アイアム、マリアヴェル・ヤマト・華侘那カタナ! あなたのニース! 姪デース! 大和弥威刃! ヤマトタケルの血を引くご当主…」

「まずはその服を着替えろーーーーー!」

 身内である待ち人のおしゃれに対し、余りの恥ずかしさに大声を張り裂ける。


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